鈴木 ケンイチ | すずき けんいち

モータージャーナリスト。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。最近は新技術や環境関係に注目。年間3～4回の海外モーターショー取材を実施。レース経験あり。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会（AJAJ）会員　自動車技術会会員　環境社会検定試験（ECO検定）

■初代 ワゴンR
1993年9月に初代モデルが誕生。そのスタイルは、背が高く、前後の長いボディに右1枚、左2枚という変則的なドア。まるで商用バンのような恰好でしたが、ワゴンRが狙ったのは便利な乗用車でした。ところが、このコンセプトが大いに受けることに。小さな軽自動車であっても、室内空間が広く大人が4人が乗れるほかデザインが可愛らしい。発売3年ほどで、類型販売台数50万台を超えるヒット作となったのです。また、ワゴンRのヒットを見て、ダイハツ・ムーヴを筆頭に、ライバルからも同じコンセプトのクルマが数多く世に送り出されることになります。軽ハイトワゴン、軽トールワゴンなどと呼ばれる新ジャンルが確立したのです。また、人気の高さに応え、5ドアモデルなどもモデル・ライフ中に追加されています。さらにボディを拡大した1リッター・エンジン搭載の登録車の「ワゴンRワイド」という派生モデルも用意されました。

■2代目 ワゴンR
ワゴンRの第二世代の誕生は1998年10月のこと。実は、このタイミングで軽自動車の規格が現在と同じものに改定され、ボディが拡大しています。ちなみに、エンジン排気量は1990年1月の改定時と同じ660㏄のまま。ボディが拡大するということで、このタイミングで多くの軽自動車がフルモデルチェンジを行いました。スズキでも、ワゴンRだけでなく、アルト、ジムニー、Keiが新型になっています。また、第2世代のワゴンRでしたが、初代がモデル末期まで人気を維持していたこともあり、当然のようにキープコンセプト。ボディ拡大にあわせて質感のアップや、さらなる実用性の向上が図られました。また、スポーティなワゴンR「RR（ダブルアール）」が追加されたのも、第二世代の特徴です。

■3代目 ワゴンR
ワゴンRの第3世代の誕生は2003年9月。ワゴンRは、初代誕生から、第2世代の終わりとなる約10年で累計194万台以上も売れ、スズキという一社だけでなく軽自動車を代表するモデルに成長していました。そんな3代目のコンセプトは、「万能型ワゴン」。様々なユーザーの様々なシーンに対応するのが狙いです。背の高い角型ボディという基本コンセプトをそのままに、より実用性と快適性、安全性、走行性能を向上。つまり全方位的な進化を狙ったのが3代目です。販売は順調に伸びており、発売から約2年で40万台以上の売り上げを記録します。デビュー2年目の2005年9月にデザインとエンジンの一部改良を実施。2007年2月にはドレスアップ・バージョンとなる「ワゴンRスティングレー」を追加しました。2008年6月には、5年連続軽自動車の売り上げナンバー1と累計生産台数300万台を記念する特別仕様車を発売。第3世代となってもワゴンRの人気は、あいかわらず非常に高いものであったのです。

■4代目 ワゴンR
2008年9月に第4世代となるワゴンRと、その派生モデルとなるワゴンRスティングレーが発売されました。このモデルのコンセプトは「快適・スタイリッシュ・ワゴンR」というもの。利便性の高さという基本は伝統を踏襲しつつも、よりスタイリッシュなデザインが採用されました。ただし、スポーティグレードとなるRRは廃止。そして、燃費性能に優れるCVTの採用を拡大。新型の副変速機付きCVTやアイドリングストップ機能を追加するなど、燃費性能をジワジワと高めていきます。販売は順調に伸びて、2010年11月には累計生産台数350万台を突破し、それを記念する特別仕様車が発売されます。ところが、軽自動車ナンバー1を維持したのはここまで。2011年に登場したスーパーハイトワゴンのホンダN-BOXに、2012年よりナンバー１の座を奪われることになったのです。

■5代目 ワゴンR
第5世代となる先代のワゴンRが誕生したのは、2012年9月。軽ハイトワゴンという基本はそのままに、「軽ワゴン低燃費ナンバー１新世代エコカー」というコンセプトで開発されました。低燃費を実現するために採用されたのが「エネチャージ」でした。エネチャージはリチウムイオン二次電池を使って減速エネルギーを回生する、いわゆるマイルドハイブリッドです。その結果、最高28.8㎞/l（JC08モード）もの燃費性能を実現しています。また、2013年7月の一部改良により、燃費性能をさらにアップ。なんと最大33㎞/lまで燃費性能を伸ばします。さらに衝突被害軽減自動ブレーキを含む先進運転支援システムも採用。今、購入しようというのであれば、2013年の一部改良以降がねらい目ではないでしょうか。

■6代目 ワゴンR
最新型のワゴンRとなるのが2017年2月に登場した第6世代です。軽量で強固な新型プラットフォーム「HARTECT（ハーテクト）」に発進時にモーターだけも走れるマイルドハイブリッドシステムを搭載。燃費性能はさらに高まり、最高33.4㎞/lにもなりました。プリウスのようなフルハイブリッドに匹敵する燃費性能の高さは、驚くばかりです。また、衝突軽減自動ブレーキを含む先進運転支援システムも機能を拡大。ハイビームを自動で切り替えるハイビームアシストも備わっています。2019年12月にはNA車に新型エンジンを採用。新型CVTも採用されています。最新モデルということもあり、先進運転支援システムの充実が最大の魅力。中古車を購入するときは、そうした先進運転支援システムを搭載するクルマを選ぶのがおすすめです。

萩原 文博 | はぎはら ふみひろ

1970年生まれ。10代後半で走り屋デビューし、大学在学中に中古車情報誌の編集部にアルバイトとして加入。1995年より編集部員として編集作業に本格的に携わる。中古車の流通、販売店に精通し、「中古車相場師」として活動。2006年からフリーランスの編集者となり、中古車だけでなく、現在は日本で最も多くの広報車両を借り出して取材を行い、新車でもユーザー視点のバイヤーズガイドを中心に、人気車種の動向や流行りの装備の価値評価などを加味した、総合的に買いのクルマ・グレードの紹介をモットーとしている。

■初代 ワゴンR
バブル景気崩壊によって日本に沈滞ムードが漂う、1993年9月に初代スズキワゴンRは登場しました。ボディサイズやエンジンの排気量に制限のある軽自動車で、全高を高くしたトールボーイスタイルというデザインを採用し、軽自動車ながら広い室内空間を実現した革命児です。その後このワゴンRを中心としたハイトワゴンが軽自動車のコアモデルとなったことを考えても、このモデルの登場が、どれくらい画期的だったのかを表しています。エンジンは当初直3SOHCのみでしたが、後にターボエンジンが追加され、コラムシフトや4速ATを設定。またリアは片側しかドアがありませんでしたが。左右両方にリアドアを採用した5ドアモデルが追加されるなどバリエーションが豊富です。1998年に生産終了となりすでに20年以上経過していますので、中古車の流通台数はわずかで、ネオクラシックカーとなっており、趣味で購入するならば構いませんが、一般的な使用目的ではオススメできません。

■2代目 ワゴンR
2代目ワゴンRは軽自動車の規格変更が行われた1998年10月のフルモデルチェンジで登場しました。国内の新安全基準に対応した「軽量衝撃吸収ボディ」を採用し、安全性と車体の軽量化を両立するとともに、全長100mm、全幅80mmボディサイズが拡大していますが、先代モデルより最小回転半径が小さくなり取り回ししやすくなっているのが特徴です。標準車に加えて、スポーティモデルのRRを設定しました。エンジンは直3自然吸気とターボを設定し、1999年の一部改良で自然吸気エンジンは直3SOHCから直3DOHC VVTエンジンに変更されています。中古車はまだ100台以上あり、すべて50 x 10,000 yen以下の低価格となっていますが、オススメする強調材料はありません。

■3代目 ワゴンR
3代目のワゴンRは2003年9月に登場しました。クルマの基礎部分であるプラットフォームから一新され、新開発のサスペンションなどとの相乗効果で乗り心地の良さや高い静粛性を実現しています。外観デザインも初代に戻って四角いデザインを採用。ルーフラインを長くすることによって室内空間の広さを強調しています。標準モデルに加えて、スポーティモデルのRRも設定。そのRRシリーズの最上級モデルであるRR-DIには軽自動車のターボエンジン初となる直噴（DI）方式を採用しているのが特徴です。その他にもＳターボ、Mターボなど3種類のターボエンジンを設定していました。2007年2月には精悍でスタイリッシュな外観デザインを採用したスティングレーを追加しました。生産終了から10年以上経過しているにも関わらず、中古車の流通台数は非常に豊富です。そのほとんどが50 x 10,000 yen以下となっていますので、低価格の軽自動車購入を考えている人には探しやすくてオススメです。

■4代目 ワゴンR
「快適 スタイリッシュ ワゴンR」を開発コンセプトとした4代目ワゴンRは2008年9月に登場しました。ロングホイールベース化した新プラットフォームを採用し、室内長、前後乗員間距離を拡大して快適な室内空間を実現しました。また、新開発サスペンションにより、操縦安定性能と乗り心地を向上。同時に走行時の騒音を全域で低減した静かな室内を実現しています。先代モデルで追加設定されたスティングレーと標準車という2モデル体系は継承されています。エンジンは直3DOHCとターボの2種類で、ミッションはCVTを中心に自然吸気エンジンに4速ATも用意されています。新車が発売されている現行モデルを除いた歴代ワゴンRの中で最も中古車の流通台数が多いのがこの4代目モデルで、3000台以上となっています。そのほとんどが50 x 10,000 yen以下で購入可能なので、初めてクルマを購入する人や生活の足としてクルマが必要な人にオススメです。

■5代目 ワゴンR
5代目となるワゴンRは2012年９月に登場しました。「新世代エコカー」をコンセプトに開発され、「ENE-CHARGE（エネチャージ）」、「新アイドリングストップシステム」、「ECO-COOL（エコクール）」などの低燃費化技術や軽量化技術が導入されています。モデル体系は従来同様、標準車のワゴンRとクールでスタイリッシュな外観デザインのワゴンRスティングレーの2種類となっています。ロングホイールベース化した軽量の新プラットフォームを採用し、室内長、前後乗員間距離を拡大して広々とした室内空間を実現。さらに、簡単で多彩なシートアレンジを継承。収納スペースは収納力と使いやすさを追求しています。2014年にはモーター機能付発電機のISGとリチウムイオンバッテリーを組み合わせたSエネチャージを採用したグレードを設定し、当時、軽自動車No.1の燃費性能を達成しています。生産終了からまだ3年が経過したばかりで中古車の流通台数は約2500台と非常に豊富。しかも早くも50 x 10,000 yenを下回る低価格車が大量に発生しています。当時はまだレーダーブレーキサポートがオプション設定だったので、運転支援システムは脆弱ですが、低価格の軽自動車を探している人や初心者にはピッタリのクルマです。

■6代目 ワゴンR
6代目となる現行型ワゴンRは2017年2月に登場しました。従来モデルは標準車とスティングレーの2モデル体系でしたが、現行型ワゴンRでは標準車がFX、FZで異なる外観デザインを採用し、3種類のフロントマスクを用意しています。軽量化と高剛性を両立させた新プラットフォーム「HEARTECT（ハーテクト）」の採用に加えて、発進時にモーターのみで走行可能なマイルドハイブリッドシステムを採用し、当時軽ハイトワゴンNo.1の燃費性能を実現しています。また運転支援システムでは、単眼カメラと赤外線レーザーレーダーで前方の歩行者や車を検知して衝突の被害を軽減するシステム「デュアルセンサーブレーキサポート（DSBS）」や周囲の状況に合わせて自動でハイビームとロービームを切り替えるハイビームアシスト機能を搭載するなど最新鋭の支援システムを採用。さらに、運転席前方のダッシュボードに車速やデュアルセンサーブレーキサポートの警告などを表示する「ヘッドアップディスプレイ」を軽自動車で初めて採用するなど充実した安全装備をほこります。すでに中古車は4500台以上流通しており、諸費用込み100 x 10,000 yen以下で購入できる中古車も発生しています。安全装備も充実していますので、免許取り立てのビギナーから高齢者ドライバーまでどんな人にもマッチする実力の高いクルマです。