斎藤 聡 | さいとう さとし

モータージャーナリスト。車両のインプレッションはもちろん、タイヤやサスペンションについて造詣が深く、業界内でも頼りにされている存在。多数の自動車雑誌やWEBマガジンで活躍中。某メーカーのドライビングインストラクターを務めるなど、わかりやすい解説も人気のヒミツ。日本自動車ジャーナリスト協会会員、日本カーオブザイヤー選考委員。

■初代 タント
2003年11月、初代のタントが誕生します。そのコンセプトは「しあわせ家族空間」というもの。具体的に言えば、それまでにない広く、そして家族で使いやすい室内空間を狙ったものでした。驚くべきは、当時の軽自動車として最大となる長いホイールベース、そして1700㎜を超える全高でした。前後に長く、そして上下に高いのです。また後席の前後スライドもたっぷりととられ、まさに移動する部屋といった内容となっていたのです。それまでにないコンセプトは、徐々に受け入れられるようになり、モデル・ライフ末期となる2007年には、車名別での軽自動車販売ランキングで上位3位につくほどとなったのです。これにより、軽自動車に「軽スーパーハイトワゴン」という新ジャンルが定着。これがタントの大きな功績です。ちなみに2005年6月には、エアロパーツを装着したスポーティグレード「タントカスタム」も追加されています。男性ユーザーや、ちょっと格好いい系が好みであれば、「タントカスタム」がおすすめです。

■2代目 タント
第2世代のタントの誕生は、2007年12月のこと。先代のヒットもあり、長いホイールベースと高い全高による広大な室内空間と、それを利用した抜群の実用性というコンセプトは継承され、さらに進化を果たしました。目玉となったのが、ボディ左に採用した「ミラクルオープンドア」でした。これはセンターピラーを内蔵したスライドドアです。これによりドアを開けたときにセンターピラーがなくなり、驚くほどの広い開口部が実現し、クルマの乗り降りが非常に楽になります。また、当初からスポーティなタントカスタムをラインナップしたのも、この世代の特徴です。ちなみに、2008年にはスズキ・パレットというライバルが登場。また、2011年にはホンダN-BOXがデビュー。軽スーパーハイトワゴンの激しい争いがスタートします。ただし、ミラクルオープンドアという利便性は、タント独自のものでしょう。

■3代目 タント
2013年10月にタントは、第三世代へ代替わりします。背が高く、広々とした室内空間という基本コンセプトは継承され、さらに進化。「ダントツの使い勝手」と低燃費性能が磨かれました。使い勝手を向上させた理由は、スライドドアをボディの右側にも採用。つまり、両側がスライドドアとなりました。ただし、ピラーレスとなるミラクルオープンドアは、ボディ左側だけとなります。また、燃費性能は最大で28㎞/lを実現。さらに衝突被害軽減自動ブレーキが用意されました。この衝突軽減自動ブレーキのシステムは、何度かの改良により、徐々に性能を高めていきます。中古車で選ぶときは、2013年11月の改良で採用された、最も進化したスマートアシスト3がおすすめとなります。

■4代目 タント
2019年7月に登場したのが第4世代であり、現行型のタントです。基本的な内容は先代を踏襲しつつ、DNGA（ダイハツ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー）と呼ぶ新世代技術を採用。プラットフォームからパワートレインまで、すべてを刷新しています。これにより、「走る・曲がる・止まる」といったクルマとしての基本性能をステップアップさせているのが最大の特徴となります。また、後席だけでなく、運転席の前後スライド量を拡大することで、室内でのウォークスルーがより容易になりました。先進運転支援システムも進化しており、軽自動車でありながら、前走車を追従するACC機能も装備。衝突被害軽減自動ブレーキだけでなく、利便性という点でも大きく進化しています。また、ベルト駆動のCVTにギヤを追加した新開発のトランスミッションも採用。優れた燃費性能とダイレクトな加速感を両立させています。ダイハツの最新技術を満載したレベルの高い最新モデルと言えるでしょう。

鈴木 ケンイチ | すずき けんいち

モータージャーナリスト。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。最近は新技術や環境関係に注目。年間3～4回の海外モーターショー取材を実施。レース経験あり。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会（AJAJ）会員　自動車技術会会員　環境社会検定試験（ECO検定）

■初代 タント
商用車をベースとした、エンジンを運転席下にレイアウトするキャブオーバータイプのワゴンモデルが主流の軽自動車で、エンジンをフロントにレイアウトし、軽自動車最長のホイールベースによる広い室内空感を実現したのが、2003年11月に登場した初代ダイハツタントです。「親子にピッタント」のキャッチフレーズどおり、取り回しの良さと広い室内空間が特徴のタントは子育て世代のママに大人気となり、ママワゴンとも呼ばれました。この初代タントが現在のスーパーハイトワゴンブームのルーツと言えます。初代タントはリアドアはヒンジ式で、搭載するエンジンは直3DOHCとターボの2種類を用意しています。そして2005年6月にはエアロパーツを装着し、存在感抜群のタントカスタムを追加し、こちらも大ヒットしています。2007年の生産終了からすでに13年も経過しているにも関わらず、初代タントの中古車は1000台以上と非常に豊富。加えて、その中古車のほとんどが50 x 10,000 yen以下の低価格となっています。クルマ世界遺産的な価値は認めますが、10年落ち以上の軽自動車を積極的にオススメ理由が見当たりません。

■2代目 タント
ママワゴンとして大ヒットしたダイハツタントは、2007年12月にフルモデルチェンジを行い、2代目モデルへと進化します。まずは当時軽自動車最大の室内空間「ミラクルスペース」の確保。そして、軽初となる助手席型センターピラーレス＆スライドドアの採用によって圧倒的な開放感と抜群の乗降性を実現しました。この、ミラクルオープンドアは、タントのアイコンとなっています。さらに280mmスライドする助手席や様々な収納スペースなど使い勝手の良さも向上しています。モデル体系は先代モデル同様に、標準車のタントとタントカスタムを設定し、エンジンは3気筒自然吸気とターボの2種類。組み合わされるミッションは4速ATとCVTでしたが、2010年のマイナーチェンジで全車CVTへと変更されています。2013年に生産終了となった2代目タントの中古車はまだ4000台も流通していて非常に豊富です。そのうち3000台は50 x 10,000 yen以下で購入可能です。運転支援システムは装備されていませんが、ミラクルオープンドアの高い利便性は全く色あせていません。小さなお子さんがいるファミリーやペットを飼っているファミリーが一緒に出掛けるクルマとしてオススメです。

■3代目 タント
ミラクルオープンドアを核としたユーティリティの高さをさらに追求した3代目タントは2013年10月に登場しました。このモデルからリアに両側スライドドアを採用し、狭い場所や駐車場でとなりのクルマにドアをぶつける心配がなくなりました。さらに、助手席のスライド幅を拡大し38cmのロングスライドを実現。さらに、後席の出っ張り部分を無くすことで、A型ベビーカーを畳まず収納できるようになったのが特徴です。そしてこのモデルから運転支援システムの「スマートアシスト」を全モデルに採用し安全性を向上させています。さらに2015年の一部改良でスマートアシストIIに進化し信頼性が向上、そして2016年にはステレオカメラ方式を採用し機能が充実したスマートアシストIIIを搭載しました。価格重視で選ぶのならば、年式の進んだスマートアシスト付きのクルマですが、運転支援システムの性能や機能性を考えると2015年のスマートアシストII以降を狙いたいところです。これらを搭載しているモデルならば、これから中古車で購入しても長く付き合うことができますし、安心して運転することができます。

■4代目 タント
４代目となる現行モデルのタントは、2019年7月に登場しました。「新時代のライフパートナー」をキーワードに開発され、ダイハツの新世代のクルマづくりである「DNGA」を導入した記念すべき第一号です。タントのアイコンである「ミラクルオープンドア」を最大限に活かすために、運転席を最大540mmスライド可能とすることで、ピラーインドアから運転席へのアクセスが可能となったのが特徴です。また、軽自動車初となる助手席イージークローザーやタッチ＆ゴー機能などを搭載し、利便性に磨きを掛けています。エンジンは直3自然吸気とターボで先代と大きな変更はありませんが、運転支援システムは進化した予防安全機能「次世代スマートアシスト」を採用。高速道路などで追従走行を可能とした全車速追従機能付きACCなど15の運転支援機能を搭載しています。まだ、登場から1年しか経過していませんが、すでに中古車は3000台以上と大量に流通しています。そのほとんどが走行距離の短い未使用中古車と言われるものなので、車検期間は短くなりますが、価格は割安になります。したがって現行型のタントを少しでも安く手に入れたいという人にはこのような未使用中古車はオススメです。