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『スライドドアを得ても、ムーヴは“走れる軽”でいられたのか』 ダイハツ ムーヴ 2025年モデル 高山正寛さんのレビュー・評価
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プロフィールプロフェッショナルレビューを担当させていただきます高山正寛(たかやませいかん)です。リクルートで自動車専門誌(カーセンサー、カーセンサーEDGE)の創刊直後から20年以上に新車試乗とカーAV記事を担当しフリーランスへ。途中5年間エンターテ…続きを読む
2026年5月31日 23:14 [2023434-1]
| 満足度 | 4 |
|---|
| エクステリア | 4 |
|---|---|
| インテリア | 3 |
| エンジン性能 | 3 |
| 走行性能 | 4 |
| 乗り心地 | 3 |
| 燃費 | 4 |
| 価格 | 3 |
※プロフェッショナルレビューは「投票平均」(「満足度」含む)および「カテゴリ平均」の集計には含まれません。
ダイハツの軽ハイトワゴン「ムーヴ」が、7代目へとフルモデルチェンジしました。最大のトピックは、歴代ムーヴとして初めて後席両側スライドドアを採用したことです(注:ムーヴシリーズの派生車であるキャンバスは除く)。軽自動車市場ではスーパーハイトワゴンが主役になってことは多くの人が理解していると思いますが「そこまで背の高いクルマは必要ない。でもスライドドアの便利さは欲しい」という人は少なくありません。新型ムーヴは、まさにその隙間を狙った一台です。
今回メインで試乗したのは、ターボエンジンを搭載する最上級グレードの「RS」です。価格だけを見ると、軽自動車としては決して安いとは言えません。2WDで189万7500円。ディスプレイオーディオやナビなどを加えれば支払総額はさらに上がります。ただし、RSにはターボエンジン、15インチタイヤ、両側パワースライドドア、全車速追従機能付きACCなどの先進運転支援システムが備わります。単なる上級仕様というより、新型ムーヴの実力をもっとも分かりやすく味わえるグレードと言っていいでしょう。
外観は、従来のムーヴにあった「カスタム」を廃止しながらも、どこかカスタム的な凛々しさを残しています。大きなメッキグリルで押し出すタイプではなく、ヘッドランプとグリルを水平基調でつなげたすっきりした顔つきです。派手さはありませんが、軽ハイトワゴンとしては十分に存在感があります。若々しさよりも、日常に長くなじむ落ち着きを選んだデザインです。
インテリアも同じ方向性です。先進感で驚かせるというより、誰が乗ってもすぐに使えることを優先しています。メーターやスイッチ類の配置は分かりやすく、前方視界も良好です。RSはシルバーステッチ入りのシート表皮や加飾によって少し上質に見せていますが、全体としてはかなり堅実。ここに高級感を求めると物足りなさはあります。一方で、毎日使う道具として見れば、気負わず扱える安心感があります。
走り出してまず感じるのは、ターボの余裕です。軽自動車のターボは、単に速さのためではなく、疲れにくさのためにあると改めて感じます。街中では発進がスムーズで、流れに乗るのが楽です。上り坂や合流でもアクセルを深く踏み込む必要が少なく、エンジン音がむやみに高まらないのも好印象でした。CVTは自然な変速感を持たせる制御で、加速時の間延び感も抑えられています。
高速道路では、RSを選ぶ意味がさらに明確になります。軽ハイトワゴンとしては直進安定性が高く、車線変更や緩いコーナーでもボディ上部が大きく揺さぶられる印象は少なめです。スライドドア化による重量増を心配する人もいるはずですが、実際の走りではそのネガはかなり抑え込まれています。
欲を言えば、もう少しステアリングを通じた剛性感が高まると、直進時の据わりや車線変更時の一体感はさらに増すはずです。ただ、それでも背の高いスーパーハイトワゴンに比べると、走りの軽快さ、姿勢変化の少なさ、運転している感覚の自然さで優位があります。
乗り心地も悪くありません。RSは15インチタイヤを履くため、荒れた路面ではやや硬さを感じる場面もありますが、不快な突き上げではなく、しっかり感として受け取れる範囲です。むしろ、ステアリングを切ったときの応答や車体の収まりを考えると、RSらしいバランスに仕上がっています。近所の買い物だけでなく、週末に少し遠くまで走りたくなる軽、という開発側の狙いは十分に伝わってきます。
一方、自然吸気エンジンの「X」は、街乗り中心なら十分に魅力的です。価格はRSより大きく抑えられ、左側パワースライドドアや日常装備も備わります。低速域では素直で扱いやすく、買い物や送迎、近距離移動が中心なら不足は少ないでしょう。ただし、高速道路の合流や長い上り坂では、どうしてもエンジンを回す場面が増えます。高速利用が多い人、家族や荷物を載せて遠出する人には、やはりRSを薦めたくなります。
気になったのは、先進運転支援システムの完成度です。RSにはACCとLKCが標準装備され、長距離移動時の安心感は確かに高まっています。ただ、高速道路のコーナーでLKCを使うと、速度域やカーブの曲率によっては車線中央を保つ力がやや弱く、ドライバー側の修正を早めに求められる場面がありました。同クラスの他社モデルと比べると、レーンキープの頼もしさは一歩譲る印象です。あくまで運転支援であり、自動運転ではないとはいえ、RSの価格帯を考えると、ここは今後の進化に期待したい部分です。
とはいえ、新型ムーヴ全体の評価を大きく下げるほどの弱点ではありません。このクルマの本質は、スライドドアの便利さと、ハイトワゴンらしい走りの軽さを両立させたことにあります。タントほどの室内高は不要、でも使い勝手は妥協したくない。N-BOXやスペーシアのようなスーパーハイト系までは要らない。そう考える人にとって、新型ムーヴはかなり現実的な選択肢になります。
結論として、ベストバイは用途で分かれます。日常の足としてコストを重視するならXで十分です。しかし、走りの余裕、安全装備、両側電動スライドドアまで含めて長く使うことを考えるなら、RSの満足度は高いと思います。新型ムーヴRSは、派手に感動させるクルマではありません。けれど、乗るほどに「これでいい」ではなく、「これがいい」と思わせる実力があります。軽自動車の王道を、いまの生活に合わせて作り直した一台です。
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参考になった24人
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高山正寛 さん
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