ホンダ N-BOX カスタム 2011年モデルレビュー・評価

N BOXはホンダが本腰を入れて開発した新しい軽自動車で、標準タイプのほかにカスタムが設定されている。

N BOXカスタムは、標準タイプとは異なるスポーティな外観を持つ。大きなメッキパーツを装着した専用フロントグリルは迫力十分だし、大型のエアロバンパーが踏ん張りの効いたデザインを作っている。

インテリアは標準タイプが明るい色調でまとめられているのに対し、ブラックで統一されてスポーティさを表現している。クロームメッキのインナードアハンドルやピアノブラック調のパネルなどもカスタムに専用の仕様だ。

搭載エンジンも標準タイプが自然吸気エンジンのみの設定であるのに対し、カスタムにはターボ仕様のエンジンも搭載される。タイヤも標準タイプは13インチのみだが、カスタムはグレードに応じて13インチ、14インチ、15インチ(ターボ)の3種類が設定されている。さらにカスタムは全車にフロントスタビライザーが装着されるのが標準タイプとの相違点だ。

自然吸気エンジンの動力性能は標準タイプと同じ。アイドリングストップ機構も装着されている。違うのはスタビライザーの装着による足回りの安定感で、ステアリングを操作した瞬間の挙動がより落ち着いた感じになるほか、コーナーでのロールも抑えられている。試乗したのは14インチタイヤを履いたG・Lパッケージだったが、とても好感の持てる足回りだった。

ターボ仕様のエンジンは47kW(64ps)/104N・mの実力。軽自動車のパワーは上限が決まっているので、ほかの車種と横並びだが、トルクはたっぷり100N・m以上を発生している。それも2600回転という低めの回転数で最大トルクを発生するので、低速域から力強い走りが可能になる。なお、ターボ車にはアイドリングストップ機構はつかない。

ターボ車には15インチタイヤが組み合わされるので、足回りの安定感はさらに高まる。乗り心地はちょっと硬めの印象だが、これくらいがちょうど良いように思う。

床下に燃料タンクを配置する新プラットホームの採用と高めの全高によって軽自動車で最大の室内空間を作ったほか、新開発エンジンとホンダの軽自動車として初のCVTの採用など、N BOXは何から何まで新しい。

価格帯はタントなどを意識しつつ、軽自動車としてはやや高めのものとなるが、横滑り防止装置のVSAが軽自動車で唯一全車に標準装備されるのを始め、スマートキー＆プッシュスタートシステムなど、充実した装備を備えている。商品的な魅力に関しては軽自動車トップまたはそれに近いレベルのクルマに仕上げられたといえる。

※N BOXの標準タイプで何でも一番を目指したクルマであることなどを詳述しています。合わせてご覧ください。

カスタムのサイドウインカーはドアミラー内蔵	リアスポイラーはかなり大きめ	メーターは黒地にブルーのイルミネーション
シートはブラックのファブリック	使いやすいシートアレンジはN BOXと共通	スポーティかつフレキシブルなターボエンジン

N BOXのドレスアップバージョンであるカスタムには、ベースモデルGの他に、装備を充実させたG・Lパッケージ、ターボエンジンのGターボパッケージがあります。横浜で開催された試乗会では、ターボパッケージに乗りました。自然吸気エンジンの走りについては、N BOXのレビューも参考にしてください。

スクエアなN BOXをベースにしたエクステリアデザインは、全面クロームメッキと言えるほど派手なフロントマスクが目立ちます。ドアハンドルやリアゲート中央の帯のクロームが地味に感じてしまうほどです。開発者に聞くと、ホンダらしさを出すよりも、先発のライバルに勝つために、可能な限り「盛った」そうです。6連ヘッドランプ、ブルーのアクセントランプも効いています。

インテリアは黒一色で、こちらはクロームメッキはほとんど使わず、ピアノブラックやシルバーでクールに仕立ててあります。軽自動車ではトップレベルのクオリティの高さとともに、大人っぽさを感じます。広さはN BOXと同じで、前席では立ち気味のウインドスクリーンのおかげで顔まわりの開放感が抜群。後席は身長170cmの人間が乗ると、足が前に伸ばせるほどの広さを誇ります。

助手席側のピラー根元には2枚のミラーが装着してあり、車体左側の死角が確認できます。ルームミラーには、リアウインドー直前に付いた曲面ミラーを介して、車体直後が映し出されます。ドアミラーは広角タイプなので、左右後輪付近の路面をチェック可能です。「ピタ駐ミラー」と呼ばれるこれらのミラーによる車両確認のしやすさは抜群で、他車にも付けてほしいと思うほどでした。

N BOX同様、後席はライバルとは異なりスライドしません。燃料タンクを前席下に置くという、フィットと同じパッケージングを生かすべく、畳んだときの低さと、座面を跳ね上げるチップアップを実現したためです。どちらもシートアレンジはワンタッチで、荷室のフロアの低さとともに好感が持てました。

新開発のターボエンジンの最高出力は64psでライバルのタントカスタム、パレットSWと同一ですが、10.6kgmの最大トルクは上で、しかも2600rpmという低回転で発生します。そのとおり、ターボは3000rpm以下からなだらかに効き始め、その後は心地良いサウンドとリニアなレスポンスを味わわせながら、高回転までスムーズに回ります。乗りやすさとスポーティさを両立した、完成度の高いエンジンでした。

ターボパッケージはホイール／タイヤがGの13、G・Lパッケージの14に対し15インチになりますが、乗り心地に固さはなく、むしろしなやかです。ボディ剛性の高さとしっかり動く足回りを実感します。適度な重さのステアリングの反応は素直で、ロールが適度に抑えられるおかげもあって、ハンドリングは安定しています。軽自動車としては珍しくVSA（横滑り防止装置）を全車標準装備としたことも安心材料と言えます。

見た目はライバル車と似た部分もあるN BOXカスタムですが、インテリアの上質感や使いやすさ、そして走りのレベルは競合車よりワンランク上ではないかと思いました。N BOX同様、ホンダのこのクルマに賭ける意気込みが伝わってきました。価格は高めですが、それだけの価値があると感じる人は多いのではないでしょうか。