ホンダ フリード 2008年モデルレビュー・評価

小型ミニバンのフリードが2010年10月にマイナーチェンジを受けるとともに、ハイブリッド車を追加設定した。今回はハイブリッドのジャストセレクション6人乗りに試乗した。

今回のマイナーチェンジでフリードは8人乗りと5人乗り(FLEX)が廃止され、2列目シートが2人掛けか3人掛けかによって、6人乗りと7人乗りの設定になった。窮屈な感じのあった8人乗りの3列目を2人掛けにしてゆったりした空間にするとともに、5人乗りはスパイクに任せた形である。

マイナーチェンジなので外観デザインは小幅な修正を加えた程度だが、ハイブリッド車はフロントグリルや前後のランプ回りにメッキ調やクリアレンズを採用するなど、専用の外観が与えられている。

また内装も専用の配色を施したほか、走行状態に応じて色の変わるアンビエントメーターを採用するなど、ハイブリッド専用のインテリアが用意された。

ハイブリッド車に必要な電池や制御系は3列目シートの床下に配置され、これによって床面が65mmほど高くなったが、乗員の居住空間には影響が出ていない。シンプルなメカニズムのIMA方式ハイブリッドの良さが表れた部分だ。

フリードハイブリッド用のIMAは1.5Lエンジンに電気モーターを組み合わせたもの。システムとしてはCR-Zなどに搭載されたものと同じだが、ミニバンのフリードに適した仕設定として、パワーを抑えてトルクを重視する仕様とされている。

LEA型エンジンの動力性能は65kW/132N・mとやや控えめな印象だが、これに10kW/72N・mの電気モーターを組み合わせることで、1.8L車並みの動力性能を発揮する。ミニバンとして多人数乗車にも耐える動力性能だ。

電気モーターはアクセルを踏み込んだ瞬間にすぐにトルクが立ち上がるので、この特性がフリードの走りをスムーズで力強いものにしている。インパネ内に設けられたECONボタンを押して燃費走行を心がければ、静かで滑らかなハイブリッド車らしい走りが可能。燃費もJC08モードで21.0km/Lを達成した。

信号待ちなどで停車としたときにはアイドリングストップ機構がすぐに働いてエンジンが停止する。再始動時の振動や騒音は多少は気になるが、まあ許容できる範囲内だ。

今回からアイドリングストップ機構はクルマが完全に停止する直前に働くようになった。状況によっては、エンジンが止まってすぐにクルマが停止する前に再び加速するシーンもあるが、そのようなときにも違和感を感じさせることなく加速できた。

ハイブリッド車の価格はガソリン車に比べるとざっと30万円ほど高くなる。燃費が良くなるとといってもこの価格差は燃費で取り戻せるものではないが、内外装の違いや走りの違い、さらにはエコカー減税で取り戻せる部分もあるので、まずまず納得できる価格差だろう。というか、今どきのクルマ選びはハイブリッドのほうが基本である。

フロントグリルはハイブリッド専用デザイン	アルミホイールはセットオプション	上下2段式のインパネは従来どおり
写真のシート表皮はオプション	3列目部分の床が少し高くなった	1.5Lエンジンにモーターを装着

10月のマイナーチェンジと同時に追加されたフリード・ハイブリッドのうち、装備を充実させたハイブリッド・ジャストセレクションの6人乗り、Lパッケージ装着車に、東京・台場で行われた試乗会で乗りました。

エクステリアデザインは、フロントグリルやバンパー、リアのナンバープレート周辺が変更され、リアコンビランプはクリアレンズになりました。さらにハイブリッドではグリルとヘッドランプがクロームメッキ＋クリアブルーの仕上げになっています。いずれもリファインというレベルであり、全体的な雰囲気は旧型と大差ない印象でした。

インテリアデザインも従来どおりです。上下2段のインパネは見やすく使いやすいグッドデザインだと思っていたので、造形が継承されたのは朗報でした。そのうえでメーターは、速度計をデジタルに変えることで、ブルーからグリーンに変化するホンダ独自のエコアシストインジケーターなどをうまく組み込んでいて、巧妙なデザインに感心しました。

フリードは今回のマイナーチェンジで8人乗りが消滅し、5人乗りはフリードスパイクに統合したため、6人乗りと7人乗りに整理されたことも特徴です。メーカーによれば乗員に余裕をもたらした結果とのことですが、すべての席にヘッドレストと3点式シートベルトを装備したという安全面のメリットのほうが大きいのではないかと思いました。

ハイブリッドシステム用バッテリーは3列目シートの床下に置かれています。そのためフロアは少しだけ高くなっているそうですが、言われなければ気がつかないレベルです。シンプルで場所をとらないホンダのハイブリッドシステムだからこそ、5ナンバーミニバンのハイブリッド化が実現できたのだと教えられました。

フリードのハイブリッドシステムは、1.5Lエンジンとモーターの組み合わせです。しかし同じ排気量のCR-Zのそれとは別物で、エンジンの最高出力は88psと1.3Lのフィットハイブリッドと同じであり、13.5kgmの最大トルクはフィットとCR-Zの中間です。14ps／8kgmのモーター性能はフィットやCR-Zなどと共通です。

ハイブリッド仕様の車両重量は1390kgと、ガソリン仕様より80kg重くなっています。しかし超低回転で最大トルクを発生するモーターの威力で、1名乗車での加速は余裕さえ感じます。アイドリングストップと加速時のモーターアシスト、減速時のエネルギー回生を行うという内容は他のホンダ製ハイブリッドカーと同じですが、発進時のエンジン始動は、良くできたアイドリングストップと比べると、やや遅いと感じました。

乗り心地は路面の荒れたところでは少しゴツゴツしますが、一般的な舗装路では揺れが少なく、快適に過ごすことができます。ハンドリングは、ボディサイズを穏やかな反応ですが、ロールはうまく抑えられていて、コーナーでも背の高さは気になりません。これらの印象はガソリン仕様とさほど変わらないものでした。

都内の一般道を1時間ほど走っての燃費は約15km／Lでした。郊外に出ればもう少し数字が伸びそうですが、ガソリン仕様のJC08モードに近い数字が実燃費で出てしまうのですから、やはりハイブリッドの威力は絶大だと思い知らされました。ただ他のホンダ製ハイブリッドカーよりもガソリン車との差額が大きい（約45万円）点は、悩みどころになるかもしれません。