「FDE」と呼ぶAI時代の新職種が注目されている。「Forward Deployed Engineer」の頭文字を並べた名称で、「顧客の業務現場に深く入り込み、AIを活用して課題整理から設計、実装、運用、継続改善まで一気通貫で担うエンジニア職種」を指す。
特にAIエージェントを提供するITベンダーが、FDEの育成や展開に注力している。エンジニアリングに留まらず、「業務変革を推進して成果を出すまで伴走する」とビジネスやマネジメントの領域に踏み込んだ触れ込みも多い。一方で「現時点ではバズワード」「AIによるベンダーロックインの恐れあり」と見る向きもある。米国ではすでに活躍しつつあるFDEだが、果たして日本で定着するか。
最新の動きに見る「FDEが注目される理由」
米Salesforceの日本法人セールスフォース・ジャパンが先頃、FDEによって顧客企業のAIエージェントの試験導入から本番稼働への移行を支援する新たなパートナー施策「Forward Deployed Engineering Partner Network」をパートナー企業9社と国内で本格展開すると発表した。Salesforceが4月に発表した施策で、同社のAIエージェント群「Agentforce」を普及拡大させるのが狙いだ。同社によると、海外ではすでにAgentforce実装の成功事例の3分の1を同施策によるパートナー企業が担っており、その実績をもとに日本でもFDEの活動を促進していく構えだ。
この発表会見で、パートナー企業の1社であるアクセンチュアによるFDEの役割についての説明が分かりやすかったので、同社が提示した4つの図をもとに紹介したい。説明役は、同社でSalesforceビジネスグループを率いるマネジング・ディレクターの田村浩章氏である。
図1は、FDEが登場してきた背景を説いたものだ。
図1:FDEが登場してきた背景(出典:アクセンチュアの説明資料)
※クリックすると拡大画像が見られます
田村氏は、「今やAIは活用することを前提に、いかに迅速かつ継続的に事業成果へ結びつけるかが問われている」と述べ、そうした中で「コンサルティングに求められる役割も変化しつつある」と自らの足元の変化に言及した。その意味では、コンサルティングの役割の変化を示した例の1つが、FDEとも見て取れる。
また、同氏は「OpenAIやAnthropicなどのAI企業が自前のFDEを抱え、企業に対して直接AIの実装を支援するようになったのも注目すべき動きだ」とも述べた。
図1の右側には、従来の客先常駐エンジニアが「顧客の要件を実現する作業実行者」なのに対し、FDEは「顧客の成果にコミットするパートナー」と記されている。この成果物について、前者が「作業の完了」なのに対し、後者は「ビジネス効果・価値創出」であることが目を引く点だ。
図2は、日本企業がAIを事業成果に変えるのに不足している「3つの力」を挙げたものだ。
図2:日本企業においてAIを事業成果に変えるのに不足している「3つの力」(出典:アクセンチュアの説明資料)
※クリックすると拡大画像が見られます
田村氏は、「AIの可能性を感じながらも『試す』から『使い倒す』への移行に、多くの日本企業は苦しんでいる。何が足りないのか。それはAIの性能そのものではない」と述べ、業務現場の理解に基づく運用まで考慮した「実装力」、アジャイル開発による環境変化への「迅速な対応力」、進化するAIから最適な技術を選んで活用する「柔軟性」の3つを挙げた。
図3は、図2で挙げた3つの力を支援するためのアクセンチュアの取り組みを示したものだ。
図3:図2で挙げた3つの力を支援するためのアクセンチュアの取り組み(出典:アクセンチュアの説明資料)
※クリックすると拡大画像が見られます
同社はこの4月にグローバルで大規模な組織改編を実施し、戦略・業務改革・技術の縦割りを撤廃した。その上で打ち出したのが、「Reinvention Deployed Engineering(RDE)」という新たな取り組みだ。FDEと似た概念のようだが、田村氏によると「顧客起点で『AI活用を前提とした企業変革』を推進する取り組みで、AIを業務に定着させ、迅速かつ継続的に事業成果へ結びつけることを命題としている」とのことだ。具体的には、図3の右側に描かれた段階を進んでいく形である。

