Cisco Systemsは米国時間6月2日、AI時代における新しいインフラ運用モデル「AgenticOps(エージェント型運用)」と、それを支える多様な新テクノロジーおよび製品群を発表した。
人間とエージェントの協調を支える「Cisco Cloud Control」
AgenticOpsのための統合プラットフォーム「Cisco Cloud Control」は、重要ITインフラの管理、監視、防御を人間とAIエージェントが協働で行うために構築された。
同プラットフォームは、1回のログインでCiscoのネットワーキング、セキュリティ、コンピューティング、オブザーバビリティ、コラボレーションの各環境を単一の環境で統合的に可視化できる。人間とエージェントは同一のデータレイヤー上で作業を行い、同じ運用コンテキストとアクションシステムを共有できるようになっている。
同プラットフォームには「Cisco AI Canvas」が搭載され、自然言語を用いてAIエージェントと協働し、問題を対話的に解決できる。また、MerakiやIntersight、Splunk、Webexといった個別のCisco製品へダッシュボードを切り替えることなく、シングルログインのみで一元的にアクセスできる点も大きな特徴となる。
加えて、自社環境に応じた専用エージェントを構築できる「Agent Builder」や、OpenAIの「Codex」をコード実行環境として組み込み、カスタムアプリやワークフローを構築できる「App Builder」を含む開発環境「Cloud Control Studio」も内包する。これにより、オープンなエコシステムを安全かつコンプライアンスに準拠した状態で実行できる安全な制御機構としての強力な役割も果たす。

Cloud Control Studioに内包されるAgent BuilderとApp Builder
また、サードパーティー製のアプリやエージェント、インテグレーションをシンプルな操作でCisco Cloud Controlに統合できる「Cloud Control Marketplace」も提供され、マルチベンダー環境の複雑性を解消する。

Studioで構築されたアセットおよびCiscoエコシステムのアプリやエージェントもCloud Control Marketplaceを通じて公開できる
Cisco Cloud Controlが開発された背景には、企業内における「AIチャットボットから、同僚として業務に深く織り込まれるAIエージェントへの移行」という大きなパラダイムシフトが存在する。エージェントが自律的にツールを呼び出して業務を実行するようになると、どのタスクをどのモデルやアクションにマッピングすべきかというルーティングの課題が本質的に発生する。
それと同時に、人間の代わりに実行されるタスクに対して信頼できる委任を行い、適切なガードレールのもとでエージェントを適切に統治する仕組みが不可欠となった。また、エージェントの活動によってネットワークトラフィックが急増するという「インフラストラクチャーの制約」をはじめ、市場における「信頼の欠如」、AIが生成する膨大なデータを処理しきれない「データギャップ」という3つの重大な課題を解決する必要があった。
Cisco Cloud Controlは、これらの制約やギャップを体系的に解消し、エージェントが負荷の掛かる作業を担当しながらも、人間が常に重要な部分の主導権を握り続ける新しい協調的な運用モデルを実現するためのものだという。
Cisco Cloud ControlおよびAI Canvasは、米国において限定提供を開始している。Cloud Control Studioは2026年後半に提供される予定だ。
AI対応セキュアネットワークに向けた新製品
キャンパスおよびブランチ(拠点)向けの次世代ネットワーク「AI対応セキュアネットワーク」に関する最新テクノロジーも発表している。
Cisco Cloud Control上で稼働するドメイン特化型エージェントは、ネットワークのトラブルを検知し、根本原因を分析する。そして、物理的なネットワーク環境を仮想空間上に完全に再現する「デジタルツイン」を用いて修正内容を安全にテスト・検証した上で、本番環境へ自動適用する。この「Agentic Actions for networking(ネットワーク向け自律修復機能)」は、6月にベータ版として提供が開始される。なお、このデジタルツイン機能は7月にアルファ版が導入される予定だ。
また、リアルタイムで通信品質を可視化する「Experience Metrics」には、従来のワイヤレスドメインに加えて、有線のテレメトリーが統合され、6月にベータ版が提供される。
さらに、Amazon Web Services(AWS)、Google Cloud、Microsoft Azureといった複数のパブリッククラウド間や各拠点、データセンター間の複雑な接続を、Cisco Cloud Controlから1ボタンで数分で安全に構成できる「Cisco Multicloud Fabric」が発表され、6月にベータ版の提供を開始する。

Cisco Multicloud Fabricの概要
Cisco製品のデジタル免疫システムとして機能する「Live Protect」は、サポート対象プラットフォームで、優先順位の高い脆弱性から実行時にシステムを保護する。システムの再起動やメンテナンスウィンドウを待つことなく、稼働中のシステムをピンポイントで脆弱性から保護できる。
また、SD-WANにおける「Harvest Now, Decrypt Later(即時収集し、後で解読する)」(HNDL攻撃)の脅威に対抗するため、耐量子計算機暗号(PQC)への対応を行う。さらに、エッジルーター向けに高度なファイアウォール機能を提供する「Cisco Firewall on Secure Routers」も8月に一般提供が開始される。
これらの先進テクノロジーに対応するため、Ciscoは多種多様な次世代のネットワークデバイス群を発表した。各製品の注文開始時期は以下の通り。
- 新型スマートスイッチ「C9550 Core」および拡張版「C9350 mGig&Fiber」: 5月注文開始
- プレミアム屋外向けWi-Fi 7アクセスポイント「CW9177I/E/D」: 6月注文開始
- 産業用コンパクト・セキュアルーター「Cisco IR1000 Rugged Series Secure Router」: 6月注文開始
- 新セキュアルーター系列「Cisco 8100/8200/8300/8600 Secure Routers」: 9月注文開始

次世代ネットワークデバイス

