2028年までに少なくとも80%の政府機関がAIエージェントを導入し、日常的な意思決定の自動化で効率化とサービス提供を向上させる見込み――。ガートナー ジャパンが3月24日に発表した。
政府機関でのAIの価値実現への最も根強い障壁の1つは「断片化」だ。Gartnerが2025年7~9月に世界各国の政府組織で実施した調査では、デジタルソリューション導入時の主要課題として、138人の回答者のうち41%が戦略のサイロ化を、31%がレガシーシステムを挙げた。「テクノロジーの導入だけではこれらの課題は解消されない」と同社は指摘する。
こうした課題への対応として注目されるのが「意思決定インテリジェンス(Decision Intelligence:DI)」である。
従来のAIガバナンスはモデルやデータ、アルゴリズムの管理を中心としてきたが、DIは意思決定そのもののガバナンスに焦点を転換する。透明性と公平性を基盤とする政府機関で特に重要な意味を持ち、DIは意思決定プロセスを明示、監査可能にすることで市民の信頼を運用に落とし込む構造的基盤を提供する。
同社は2029年までに政府機関の70%において、行政サービスに影響を及ぼす、すべての自動化された意思決定に「説明可能なAI(eXplainable AI:XAI)」とAIの処理プロセスに人間が介在するアプローチ(Human-in-the-Loop:HITL)が義務付けられると予測している。これにより意思決定ロジックの検証や異議申し立てが可能になるとともに、人間が例外対応や高リスク案件への権限と説明責任を維持できる。
効果的な行政サービスに対する市民の信頼は、政府機関がDXを推進する主要な原動力になりつつある。回答者の50%が「市民体験(Citizen Experience:CX)」の改善を最優先事項の上位3つに挙げており、DIによって能動的かつ個別最適化された市民対応への移行が期待される。遅延の削減や公平性の認知向上といった効果も見込まれ、職員との直接的なやりとりが減少する中でも有効な手段となりうるという。
今回の見解を踏まえ、ガートナー ジャパンのディスティングイッシュト バイス プレジデント アドバイザリの松本良之氏は「日本の公共セクターは、一般的な生成AIの活用は進む半面、自律的なエージェント型AIの導入では世界水準から明らかな後れを取っている。深刻なリソース不足の中、この遅れは将来の行政サービスの維持において致命的な格差を生みかねない。中央省庁や自治体のITリーダーは、レガシーシステムを言い訳にせず、残された期間を転換点と捉えるべき」と国内向けに補足している。

