今回は「なぜ米国株は上がるのか!?米国株に投資する理由【日本株との違い】」ということで、日本でも徐々に一般的になってきた米国株投資の魅力について学んでいきましょう。
日本でもリーマンショック以降、雑誌やブログなどで米国株投資がおすすめされることが非常に多くなってきました。
世界最強の経済大国である米国の企業は、世界的にも類を見ない成長を見せて株主の資産を増やし続けてきましたが、その要因はどこにあるのでしょうか。
もし、米国株の強さの源泉について理解しないで勧められるがままに米国株式に投資をしていると、5年から10年に1度はやってくる相場の暴落に耐えらずに米国株を売却してしまい、大きな損失を抱えてしまうことになりかねません。
やはり、米国株であっても他のモノであっても自分が投資する対象が長期にわたってリターンを上げ続ける理由について自分なりに府落ちする感覚を持っておくことが大事だと思います。
米国株にすでに投資をしている方、これから投資をしようと考えている方は、本記事の内容を定期的に勉強して、一時的に相場が大きく動いたときにもぶれない自分なりの相場観を養ってほしいと思います。
なぜ米国株は上がるのか!?米国株に投資する理由【日本株との違い】
まずは以下の株価チャートをご覧ください。
このチャートは2000年以降の米国と日本の主要株価指数の比較で、それぞれの色のチャートは以下のものを表しています。
赤:S&P500(配当込み)
青:S&P500(配当除く)
緑:日経平均(配当除く)
2000年以降、米国のS&P500は約2.25倍、配当を含めれば4倍近くに成長しました。
2000年に米国株に100を投資をした人は、そのまま資金を寝かせておくだけで400にも資産が増えたんですね。
その間、日本株のリターンはどうだったかというと日経平均株価はわずか80%ほどしか上昇しませんでした。
この米国株と日本株のリターンの違いはどこに理由があるのでしょうか。
この理由を紐解くことで、ここ5年ほど様々な媒体で米国株投資がオススメされる理由が理解できるようになると思います。
<米国株投資のメリット>
- 米国は先進国トップの人口増加率、GDP成長率?
- GAFAが誕生し、世界の時価総額上位を独占する米国
- 豊富な買い手が株価を押し上げる米国株
- 企業の株主還元意識が高い米国企業
- 米国人の個人資産の多くが米国株に投資されているため政治がマーケットを支援する
- 日本からでも投資がしやすくなった米国株
- 米国株投資以外への分散投資も効果が薄くなっている
<米国株投資のデメリット>
- ほとんどいつも割高なバリュエーション
米国は先進国トップの人口増加率、GDP成長率?
個人ブログや経済ニュースなどでも様々なところでおすすめされるようになった米国株。
米国株をおすすめする理由として「米国の高い人口増加率、GDP成長率」というのが出てきますが、これは果たして本当なのでしょうか。
実は主要先進国の人口増加率、GDP成長率だけを見てみると、米国は先進国の中で高い水準ではあるものの先進国トップの成長力を毎回示している国ではないことが分かります。
しかしながら、米国株はその他の様々な要因によって、高パフォーマンスを発揮する高いポテンシャルを持っていますのでその理由について順番に見ていきましょう。
<主要先進国の人口増加率>
国 | 2005-2010年 (%) | 2010-2015 年(%) | 2015-2020年 (%) |
オーストラリア | 1.78 | 1.46 | 1.30 |
カナダ | 1.13 | 1.02 | 0.90 |
スイス | 1.11 | 1.21 | 0.83 |
スウェーデン | 0.76 | 0.78 | 0.72 |
アメリカ | 0.90 | 0.72 | 0.71 |
イギリス | 0.98 | 0.65 | 0.58 |
フランス | 0.58 | 0.45 | 0.39 |
韓国 | 0.57 | 0.52 | 0.36 |
オランダ | 0.36 | 0.30 | 0.29 |
ドイツ | -0.19 | 0.20 | 0.20 |
スペイン | 1.21 | -0.17 | 0.03 |
ロシア | -0.07 | 0.04 | -0.01 |
イタリア | 0.31 | -0.08 | -0.13 |
日本 | 0.03 | -0.09 | -0.23 |
<主要先進国のGDP成長率>
出典:IMF世界経済見通し
GAFAが誕生し、世界の時価総額上位を独占する米国
現在、世界では米国を中心とする大手テクノロジー企業が私たちの生活様式を一変させるようなイノベーションを起こしていて、その最たるものがGAFAと呼ばれる米国のテクノロジー企業群です。
GAFAとはご存じの通り、Google、Apple、Facebook、Amazonの4社の頭文字を取った言葉で、これらの企業はビジネスを通じて収集した膨大な顧客データ(ビッグデータ)の活用などを通じて革新的なサービスを提供しています。
歴史の長いコカ・コーラやP&Gなどの世界的企業はもちろんですが、比較的歴史の浅いGAFAのような急成長企業の多くが米国で誕生しているという事実は米国株の潜在能力を証明していますね。
ベンチャーキャピタルが発達する米国
米国でGAFAのような企業が誕生する理由の一つが、ベンチャーキャピタルと呼ばれるビジネスの存在です。
ベンチャーキャピタルは、創業間もない優れたビジネスアイデアを持った企業に投資・資金提供をして、その企業が成長することによって利益を稼ぐビジネスのことですね。
ベンチャーキャピタルは、これから急成長する企業を見抜くために投資先企業を厳しく選別するのはもちろんですが、投資した企業に専門的なアドバイスや人的ネットワークを提供することによってスタートアップ企業の成長をサポートしています。
伝統的には企業の資金調達を支援する役割は銀行が担ってきましたが、銀行という組織は一般にリスクを嫌うため、事業が軌道に乗るかわからないスタートアップ企業にはなかなか支援を行いません。
しかし、米国ではベンチャーキャピタルが発達しているため、将来性のあるスタートアップ企業であればベンチャーキャピタルから資金面やビジネス面のサポートを受けることができます。
こうしたベンチャーキャピタルの存在が米国で世界的な企業が次々に誕生する要因の一つになっています。
世界の時価総額トップ20社のうち13社が米国企業。
米国にはこうしたビジネスに適した社会風土が存在している結果、現在では世界企業の時価総額トップ20社のうち実に13社が米国企業という状態です。
バブル末期の平成元年には、世界企業の時価総額トップ5社を日本企業が独占(NTT、日本興業銀行、住友銀行、富士銀行、第一勧業銀行の5社)していましたが、その後の世界における日本企業のプレゼンスの低下は皆さんご存じの通りです。
<世界の時価総額トップ20社>
順位 | 名称 | 時価総額 | 業種 | 国名 |
1 | アップル | 2兆149億USD | IT・通信 | アメリカ |
2 | サウジアラムコ | 1兆8,437億USD | エネルギー | サウジアラビア |
3 | マイクロソフト | 1兆6,922億USD | IT・通信 | アメリカ |
4 | アマゾン・ドット・コム | 1兆6,623億USD | サービス | アメリカ |
5 | アルファベット | 1兆1,926億USD | IT・通信 | アメリカ |
6 | フェイスブック | 8,362億USD | サービス | アメリカ |
7 | アリババ・グループ・ホールディング | 7,816億USD | IT・通信 | 中国 |
8 | テンセント・ホールディングス | 7,572億USD | IT・通信 | 中国 |
9 | P&G | 5,742億USD | 一般消費財 | アメリカ |
10 | バークシャー・ハサウェイ | 4,929億USD | 金融 | アメリカ |
11 | ウォルマート | 4,131億USD | サービス | アメリカ |
12 | 台湾積体電路製造 | 4,103億USD | 半導体 | 台湾 |
13 | テスラ | 4,075億USD | 一般消費財 | アメリカ |
14 | ビザ | 3,921億USD | 工業 | アメリカ |
15 | ジョンソン&ジョンソン | 3,744億USD | 医療関連 | アメリカ |
16 | サムスン・エレクトロニクス | 3,637億USD | IT・通信 | 韓国 |
17 | エヌビディア | 3,593億USD | IT・通信 | アメリカ |
18 | ネスレ | 3,378億USD | 一般消費財 | スイス |
19 | ユナイテッドヘルス・グループ | 3,297億USD | 金融 | アメリカ |
20 | 貴州茅台酒 | 3,233億USD | 一般消費財 | 中国 |
ー | トヨタ自動車 | 1,862億USD | 一般消費財 | 日本 |
※2020年11月時点
このように伝統的な企業が継続的に利益を稼ぎ続ける一方で、創業間もない企業も短期間のうちに世界的企業に成長するビジネス環境が、米国株の強さの要因の一つですね。
豊富な買い手が株価を押し上げる米国株
世界中から米国に集まる投資マネー
世界トップレベルの企業が勢ぞろいする米国は現在のところ世界最強の経済大国なので、世界中から投資マネーが集まってきます。
このような世界の資金が特定の国に集まる動きは、ITやFintechの進化によって海外の情報がタイムリーに得られるようになったことや、国境を越えたクロスボーダーの投資が簡単にできるようになったことなどが要因として挙げられます。
こうした世界中から集まる投資マネーは、米国株意識の継続的な買い手となって需給面から米国の株価を押し上げています。
米国人が運用する個人資産の再投資
日本人の貯金好きは皆さんご存じの通りで、個人資産の実に50%超が銀行預金に置かれています。これはバブル時代に各銀行がそろって高金利の定期預金を提供していた頃の記憶があるからかもしれませんね。
ただ実際には、当時は日本のインフレ率がかなり高かったので、銀行預金の高金利は単なるインフレの埋め合わせに過ぎなかったのですが、それに気づいている人はあまりいなかったのでしょう。
一方、米国においては現預金は僅か10%強ほどで、その他の個人資産は米国株などの投資に回されています。
<日、米、欧の家計金融資産構成>
- 上から日本、米国、欧州の家計資産構成
- 一番左が現預金、それより右が投資商品や保険
2020年3月末現在
米国ではこの資産運用に回されている莫大な個人マネーが運用益を獲得して、その運用益が米国株に再投資されることで、米国の株価を押し上げていきます。
米国人は401Kによって自動で給与の一部を投資する
米国で主力の退職年金制度の一つ、確定拠出年金(いわゆる401Kプラン※)も米国株の好需給を支える要因です。(※アメリカの内国歳入法の第401条k項に税制優遇に関する事項が定められているためこの通称でよく呼ばれています)
401Kプランを設けている企業で働く米国人労働者は、“自動”で401Kプランに加入させられ、給与の一部が天引きにより“自動”で退職年金用の積み立てに回され、その資金が“自動”で分散投資型の運用商品に投資される仕組みになっています。
<米国の401Kプランによる自動積立投資>
- 自動で制度に加入
- 自動で給与から資金を拠出
- 自動で分散投資型の運用商品に投資
この401Kプランの仕組みはデフォルトの選択肢がそのようになっているだけなので、事後的に401K非加入を選択することや、投資先を元本保証型の商品に切り替えることはできますが、大半の労働者は意志を持って能動的にデフォルトの設定を変更することはありません。
その結果、米国人労働者の多くは意識せずとも自動で「超長期の分散・積立投資」という投資の世界における最適解の一つを実践することになります。
この自動積立年金制度ともいえる401Kプランによって生み出される投資マネーは、米国株を継続的にひたすら買い続けるため米国株の需給を好転させて株価を押し上げていきます。
日本でも確定拠出年金法に基づき、2001年から「日本版401K」とも言われる確定拠出年金制度がスタートしていて、実際に制度に加入されている方も多いのではないでしょうか。
しかし、日本の確定拠出年金制度ではほとんどのケースで、デフォルトの資金拠出先が元本保証型商品(定期預金など)に設定されていることもあって給与の一部を天引きして集めた資金の大部分が運用に回っていません。
預金が大好きで、金融リテラシーの低い日本人は、なかなか自分の意志で能動的にリスク資産に資金を振りむけるのは難しいように思います。
その結果、日本人の退職準備資金は運用に回らず、日本株の買い手も増えない、といった日本株の悪需給を生む要因になっています。
実際、日本の株式市場の売買シェアの6~7割ほどは外国人が占めていて、日本の株式なのに日本人が影響力を持った買い手になれていないのが現状です。
<日本と米国の退職準備資金の資産配分比較>
- 左が日本の確定拠出年金における資産配分、右が米国の確定拠出年金における資産配分
- グラフの太枠部分が元本確保商品
- 日本の資産のほとんどが元本確保商品である一方、米国の資産のほとんどが運用に回る
企業の株主還元意識が高い米国企業
日本では「企業は社長・経営者のモノ」という風に考えている人も多いですが、米国では「企業は株主のモノ」という考え方が浸透していて、より多くの利益を稼いで株主に還元する、企業を成長させて株価上昇によって株主に利益をもたらす、という意識が徹底されています。
日本ではプロパー社員として長く務めた社員が出世して経営者になるケースが多いですが、米国の大企業には企業経営のプロが配置される方が一般的です。
米国企業のトップにつく企業経営のプロは「企業を成長させること」「事業で稼いだ利益を株主に還元すること」を唯一・最大の使命として働いていて、結果が出せれば多額の報酬を受け取る一方で、結果が出せない経営者は株主によって簡単にクビにされてしまいます。
この経営者の意識の違いが日本株と米国株のリターンに少なくない影響を与えています。
連続増配企業が多い米国株
株主還元意識の強い米国株を証明する結果として、米国の連続増配企業の多さが挙げられます。
連続増配企業とは文字通り、毎年株主への配当金の支払いを増額してきた企業のことを言います。
日本で最長の連続増配年数を持つ企業は日用品大手の花王で、31年にわたって連続増配を行っています。
一見これはすごいことのように思えるかもしれませんが、米国では50年以上にわたって連続増配している企業がたくさんあり、日米の株主還元意識の違いと企業の層の厚さの格差がよくわかります。
<米国の連続増配企業>
ティッカー | 銘柄名 | セクター | 連続増配年数 | |
1 | AWR | アメリカン・ステイツ・ウォーター | 公益事業 | 65 |
2 | DOV | ドーバー | 資本財 | 64 |
3 | NWN | ノースウェスト・ナチュラル・ガス | 公益事業 | 64 |
4 | GPC | ジェニュイン・パーツ | 一般消費税 | 64 |
5 | PG | プロクター・アンド・ギャンブル | 生活必需品 | 63 |
6 | EMR | エマソン・エレクトリック | 資本財 | 63 |
7 | PH | パーカー・ハネフィン | 資本財 | 63 |
8 | MMM | スリーエム | 資本財 | 62 |
9 | CINF | シンシナティ・ファイナンシャル | 金融 | 60 |
10 | KO | コカ・コーラ | 生活必需品 | 58 |
11 | LOW | ロウズ | 一般消費税 | 57 |
12 | LANC | ランカスター・コロニー | 生活必需品 | 57 |
13 | JNJ | ジョンソン&ジョンソン | ヘルスケア | 57 |
14 | CL | コルゲート・パルモリーブ | 生活必需品 | 56 |
15 | NDSN | ノードソン | 資本財 | 56 |
– | 4452 | 花王 | 化学 | 31 |
積極的な自社株買いを行う米国企業
株主還元意識の高い米国企業はここ10年ほどは、自社株買いによる株主還元を増やしてきました。
それ以前は伝統的な株主還元策として配当が非常に重視されていましたが、最近では自社株買いによる株主還元の方がメリットが大きい施策として注目されています。
<ここ10年間の米国株の自社株買いの金額>
下図オレンジ棒が自社株買いの金額でここ10年ほど増加してきたことがわかる
出典:CNBC
自社株買いを行うと市場に流通している株数が減少して、既存株主の保有株式の一株当たりの価値が上昇し、その結果として株価が上昇しやすくなります。
<自社株買いが実施されると一株の価値が上昇するイメージ>
- 総株数1000株の企業Aの1株を保有している(総株数の0.1%を保有)
- 企業Aが200株の自社株買いを実施
- 総株数800株のうちの1株を保有することになった(総株数の0.125%を保有)
- その株主の株数は増えていないのにその企業に対する保有比率が上昇(0.1%→0.125%)
伝統的な株主還元策である配当金の支払いでは、支払時に課税をされるデメリットがありましたが、自社株買いに起因する株価上昇による株主還元では、株を売却しない限り課税をされないため、自社株買いは株主にとっても利益が大きい施策としてますます規模が拡大してきています。
米国の調査によるとここ10年の米国企業の自社株買いによって、S&P500は5%上昇したとも言われています。
<自社株買いによる米国株価の上昇>
出典:Ed Clissold(Chief U.S. Strategist for Ned Davis Research Group)
また、自社株買い行って流通している株数が減少すると、企業としては配当金の支払い負担が減ります。(例:今まで1000株に配当を支払っていて200株の自社株買いをしたとすると、配当金の支払い対象が800株に減少する)
そうすると既存株主への増配余力が生まれるため、株主は更に恩恵を受けることになります。
経営者に対する業績連動報酬、株式報酬の普及
日本と米国の企業経営者に対する報酬体系の違いも、日本と米国の株式のリターンに影響を及ぼす要因です。
2019年に公表された世界的調査企業であるウイリス・タワーズワトソンによる「日米欧CEO報酬比較」、「日米欧Aftermarket取締役報酬比較」によると、日本企業の経営者の報酬に占める業績連動報酬が43%であるのに対し、米国企業の経営者の報酬に占める業績連動報酬は91%にものぼります。
業績連動報酬とは文字通り、経営成績を上げれば上げるほど高い報酬が得られ、業績が悪ければ報酬が出ないという仕組みのことです。
米国では業績連動報酬が非常に普及していることから、米国企業は日本企業に比べて圧倒的に業績向上にフォーカスした企業経営を行っていて、業績を向上させることができない経営者は即刻退場させられることを意味しています。
一方の日本企業は、業績が良くても悪くても報酬に与える影響が大きくないので、米国企業ほど業績向上に集中しない可能性が高くなります。
<主要5か国の経営者の報酬体系の比較>
- 主要先進5か国の大企業経営者の報酬額と内容の比較
- 横棒→黄緑:固定報酬、濃緑:短期インセンティブ、水色:中長期インセンティブ
- 米国企業の報酬額が圧倒的であると同時に、業績連動報酬(短期インセンティブ、長期インセンティブ)が大半を占めていることがわかる
出典:デロイトトーマツ
また、更にデータを見てみると米国のAftermarket取締役はほとんどすべての企業で株式報酬を実施していることがわかります。
米国の株式報酬の実施率は、日本はもちろんヨーロッパ各国と比べても圧倒的な水準です。
<Aftermarket取締役に足して株式報酬を支給する企業の割合>
株式報酬あり | 株式報酬なし | |
米国 | 99% | 1% |
英国 | 20% | 80% |
ドイツ | 4% | 96% |
フランス | 0% | 100% |
日本 | 10% | 90% |
出典:2019年ウイリス・タワーズワトソン「日米欧Aftermarket取締役報酬比較」
株式報酬とは役員や従業員に対して、報酬・給与の一部を株式で支給したり、将来株価を一定の価格で買える権利(ストックオプション)を付与することをいいます。
従って、株式報酬をもらった役員や従業員の報酬額は、企業の株価に完全に依存します。
すると株式報酬を受け取ったAftermarket取締役は、企業の株価が上がれば上がるほど自身の報酬が大きくなるので、企業の株価向上のための必死で仕事をするようになるんですね。
一方で、日本のように経営者の報酬水準と株価が連動していない場合は、経営者は株価の上昇を企業経営の究極的な目標とは考えないですよね。
米国株の株主還元=米国人の資産増加 のため株主還元意識が高まりやすい
ここまで見てきたような米国企業の株主還元意識の高さは、米国株のリターンを押し上げる要因となっていますが、その根底にあるのは米国株のリターン向上がそのままアメリカ人の個人資産の増大、生活水準の向上に繋がるという事実だと思います。
前述の通り、米国人は資産の多くを米国株で保有しているため、米国株の株価が上昇したり配当が増えたりすれば、米国人の家計が潤います。
こうした事実が、米国企業の経営者を株主還元の施策に向かわせているのでしょう。
このように考えると米国企業は「米国人による」「米国人のための」「個人資産、年金運用マシーン」とみることもできますね。
そのおこぼれを日本人でももらえるようになったのが今のグローバル時代です。ありがたいですね。
米国人の個人資産の多くが米国株に投資されているため政治がマーケットを支援する
個人資産の多くが米国株で運用している米国では、政治においてもマーケットを意識せざるを得ません。
トランプ大統領が2020年の選挙の時に自身の大統領任期の実績として「任期中に株価が70%上昇した」と言っていたのも象徴的ですね。(実際には60%ではないか、と指摘されていましたが。。)
トランプ大統領は大規模な減税と公共事業投資、アメリカファーストの経済政策などで景気を押し上げ、株価の上昇をサポートしました。
その結果、米国人の個人資産は増え、一部の間ではトランプ大統領に対する熱狂的な信者が生まれることになりました。しかし、株価上昇によって資産が増えたのは資産運用をする余裕がある中間層以上の人たちで、貧困層との格差が広がりアメリカの分断を大きくしたという負の面があったのも事実です。
また、2020年3月に新型コロナウイルスの影響で世界的に株価が暴落した際には、FRBが様々な施策を打って米国経済と米国株式相場を支えました。
※FRB(The Federal Reserve Board:連邦準備理事会)とは、日本でいうところの日銀に当たる組織で、アメリカの中央銀行制度における最高意思決定機関です。米国の金融政策等を決定して、物価の安定や景気・雇用の安定を推進しています。
<コロナショックに対するFRBの施策例>
- 政策金利の利下げ: 2020年3月に2回、計1.5%の利下げを実施
- 量的緩和: 2020年3月に量的緩和により、国債などを大量購入し、長期金利の上昇を抑制
- プライマリー・マーケット・コーポレート・クレジット・ファシリティー: 高格付け企業の社債を買い入れて、事業資金を企業に供給
今後も定期的に市場の大きな暴落は起きるかもしれませんが、米国の政治家とFRBは株式市場を安定成長させることに心血を注いでいます。
米国の政治家とFRBが米国株式相場をうまくコントロールする限り、一時的な株価ショックが起きても米国株は成長を続けるのではないでしょうか。
日本からでも投資がしやすくなった米国株
ここまで見てきたように様々な要因で高パフォーマンスを上げ続ける米国株ですが、投資したくても投資できる商品がなくては意味がありません。
日本では2015年頃からネット証券を中心に手数料の値下げ合戦が起きて、その中で米国株に非常に安価な手数料で投資できる商品がいくつも生まれました。
<日本から米国株に低コストで投資できる商品も増えた>
種類 | 銘柄 | 買付手数料 | 信託報酬 |
米国ETF | VOO・バンガードS&P500ETF | 無料 | 0.03%程度 |
米国ETF | VTI・バンガード・トータル・ストック・マーケットETF | 無料 | 0.03%程度 |
東証ETF | 2558・Maxis米国株式(S&P500)上場投信 | 無料 | 0.078%程度 |
東証ETF | 2631・NASDAQ100指数(換算ベース) | 無料 | 0.20%程度 |
投資信託 | eMAXISSlim米国株式(S&P500) | 無料 | 0.0968% |
投資信託 | 楽天・全米株式インデックス・ファンド | 無料 | 0.1620% |
投資信託 | SBI・バンガード・S&P500 | 無料 | 0.0938%程度 |
以前は外国株に投資する投資信託と言えば1~3%程度の信託報酬を取られるのは当たり前で、そのような状態では以下に米国株にメリットを感じていても、手数料による資産の目減りが気になって投資をためらう個人投資家も多かったと思います。
世界最強の株価指数ともいわれるS&P500指数や、ハイテク企業を中心にした急成長企業が上場するNASDAQ100指数に投資する商品が0.20%以下の経費率で投資できるようになったことは、日本の個人投資家に世界標準の投資の門戸が開かれたことを意味しますね。
これらの商品を使って米国株に投資をすれば、「手数料はほとんど誤差」というレベルなので、手数料によるぼったくりを気にせず安心して米国株に投資することができます。
米国株投資以外への分散投資も効果が薄くなっている
ここまで米国株の強さの秘密について解説してきましたが、投資について勉強してきた人の中には「米国株にだけ投資をすればいいの?」「リスク回避のため分散投資した方がいいのでは?」と思う方もいるかと思います。
米国株以外への分散投資が必要かどうかについては正解はないので、最終的には個々人の判断ということになります。しかしながら、今現在の私の意見としてはほとんどの方にとって米国株への集中投資が資産運用の最適解になると考えています。
理由としては以下の通りです。
<米国株以外への集中投資が最適解であると考える理由>
- 世界の株式市場に占める米国株のウェートが大きい
- 米国企業は米国国内にとどまらず、世界中でビジネス展開をしている
- 世界の情報がタイムリーに伝わるようになって現代では、世界最大の株式市場である米国株の動きに他国の株式市場も連動してしまう
①世界の株式市場に占める米国株のウェートが大きい
米国の株式市場は圧倒的に世界最大の時価総額となっていて、世界株式の時価総額に占める米国企業の割合は50%超、主要先進国の株式市場の中では約70%のシェアを占めています。
これは何を意味するかというと、米国以外の株式に分散投資をするために、世界株式に分散投資する商品を買ったとしてもその中身の50%強が結局米国株になるということ、また、先進国の株式に分散投資する商品を買ったとしてもその中身の70%近くが米国株への投資になるというです。
もはや、意図するしないに関わらず、外国株式に投資するということは米国株に投資するということにきわめて近い状態になってしまっているんですね。
米国株式を避けて、例えばヨーロッパや中国、インドなどの新興国に投資するという選択肢もありますが、今のところこれらの投資先はマイナーで、信託報酬などの手数料が十分に低い商品がないことや、取引ボリュームが少なく流動性に懸念のある商品がほとんどです。
これらの懸念の乗り越えてまで米国株以外に投資をしたい方だけが、米国株以外への分散投資をすれば良いのではないでしょうか。
②米国企業は米国国内にとどまらず、世界中でビジネス展開をしている
米国企業に投資をするというと米国の景気ばかりを気にする方もいらっしゃいますが、実際には米国の企業は世界中でビジネス展開を行っているため、米国企業の業績は米国の景気というよりは世界の景気に左右されます。
例えば、日本経済の成長に掛けようと思ったとしても、日本経済の中には当然多くの米国企業のビジネスが入ってきていますし、ヨーロッパなど世界各国の経済にも米国企業のビジネスが浸透しています。
そのため、米国企業に投資をするということは結果として世界経済の拡大に対して投資をするということになり、結果として米国企業以外に投資をすることに積極的な意味合いが小さくなっています。
③世界の情報がタイムリーに伝わるようになって現代では、世界最大の株式市場である米国株の動きに他国の株式市場も連動してしまう
インターネットが発達する以前は、世界の情報伝達にはタイムラグがあったため、世界の株式の動きは今ほどは連動していませんでした。
しかし、現在では世界のどこで起きた情報も瞬時にインターネットで伝わりますし、世界株式に投資をするインデックス投資も残高を増やしてきたため、世界の株式市場が同じような動きをするようになってきました。
その結果、世界最大の株式市場である米国株が下がれば他国の株も下がる、米国株が上がれば他国も追随してあがるという状況が多くなっています。
そのため、米国株以外の株式への分散投資が以前ほど大きな意味をなさなくなってきています。
米国株のデメリット)ほとんどいつも割高なバリュエーション
ここまで米国株が投資先として優れている理由について見てきましたが、世界中で投資先として高い人気を持つ米国株は常に株価が割高の状態が続いています。
株式投資では、投資をするときの株価水準は極めて重要で、少しでも割安な時に株式を仕入れたいところですが、米国株投資では株を割安で購入するチャンスがほとんどないのがデメリットです。
<S&P500のPER推移>
過去100年以上のS&P500のPER水準に比べ、ここ20年ほどは高いPERが続く
過去100年平均と比べると今の米国株はたいていの場面で割高な株価(PER基準)をつけていますが、それは過去とは時代が変わったからなのか、一時的なバブルなのかはわかりません。
しかし、以下に優れた投資対象であっても購入時の株価が割高ではなかなか高いリターンを上げることは難しいでしょうね。
まとめ:なぜ米国株は上がるのか!?米国株に投資する理由【日本株との違い】
今回の記事では、日本でもおすすめされることが多くなった米国株投資について、なぜ投資対象として米国株式が優れているのかという点についてまとめました。
あらためて復習すると以下のようなポイントがありました。
<米国株投資のメリット>
- 米国は先進国トップの人口増加率、GDP成長率?
- GAFAが誕生し、世界の時価総額上位を独占する米国
- 豊富な買い手が株価を押し上げる米国株
- 企業の株主還元意識が高い米国企業
- 米国人の個人資産の多くが米国株に投資されているため政治がマーケットを支援する
- 日本からでも投資がしやすくなった米国株
- 米国株投資以外への分散投資も効果が薄くなっている
<米国株投資のデメリット>
- ほとんどいつも割高なバリュエーション
これらの要因がある限り、今後も米国企業は世界経済の中心で高い成長を続けるだろうと私は思っています。
米国株の魅力に共感して米国株投資を始めようという方は、定期的に記事の内容を復習して、なぜ自分が米国株に投資をしているのかをしっかり府落ちさせてください。
株式は10年20年という長い期間保有をしていると必ず暴落に遭遇するものです。
個人投資家として成功するかは、相場の暴落時の保有株を売却せずにホールドし続けられるかにかかっていますが、これができるかどうかは、自分が米国株の今後の成長を信じられるか、米国株の優位性に対する府落ち感だと思っています。
本記事を参考に、世界最強の米国株を利用して資産形成をされる方が増えればうれしい限りです。
<投資講座の記事>


