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white猫さんのページ|漫画の感想・口コミも業界最大級!シーモアレビュー
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ERR_MNG
レビュー
今月(10月1日~10月31日)
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シーモア島


投稿レビュー
-
物語自体は悲惨な処は抜きにして興味深いネタバレ2025年10月1日このレビューはネタバレを含みます▼ 表紙絵が目に留まらず惹かれなかった所為で今まで読もうと思いませんでした。
偶々、作者があさのあつこ先生だということに気付いて試し読みをした処興味を持ったので読んでみました。
主人公の一人、おちえと周囲の人々との会話が面白いので、読み進めるのが楽しかったのですが、おちえが剣術の稽古を始める切っ掛けとなった凄惨な事件を知るにつけ、いささか気分が優れなくなってきました。
確かに表題が『~事件帖』となっているので、捕り物であることは理解できます。
それでも、余りにも次々に事件が起こると、話の筋書き上必要なのは納得できても少し手加減できないかと思ってしまうのです。
刃物等の危険物の取り扱いは厳重注意なのです。
歴史的に見ても、刃物の存在と発達が私達に利益だけではないものを齎してきました。
本来は料理に使われるべきものが狩猟などに転用され、果ては戦いの道具になってしまいました。
武士に二刀は当然のものとされたのですが、持っていれば使いたくなるのは道理でしょう。
人品卑しい人までもが持つことに誤りがあるのでしょう。
事件が一つ片が付いたのですが、後味が悪い幕切れで何とも救われない思いがしています。
こんな終わり方は誰も望んでいなかったでしょう。
やり場のない憤りをどこに持って往けばいいのか。
なんかすっきりしません。いいね
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実話に近い物語だとすれば武家社会は歪2025年9月30日表紙絵と試し読みに魅かれて読んでみました。
余りにも話が入り組んできて、迷路に入り込んだようで話が視えなくなってしまいました。
結局は、曖昧な処で話が終わってしまって、納得のいかない物語の展開になりました。
尻切れ蜻蛉のようで、肝心なところが判らないままです。
いえ、武家社会の人の命を何とも思わぬ非情さがまざまざと知れて怖くなってしまったのです。
虚しい日々を送った主人公達の数年間は一体何だったのかと思わされました。
彼らは取り敢えず、手に職は付けたものの、足元から崩れ落ちるような不如意な生き様になってしまったようでした。
この作品を読むために支払った金額と費やした時間と行き場のない空しい思いを一体どうすればいいのでしょう。
読書は娯楽の側面があるので、読者の意に添う作品作りをして貰いたいものです。
充実した読後感のある作品を読みたいと切実に思っています。もっとみる▼いいね
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笠井あゆみ先生の美少年と美青年、眼福ですネタバレ2025年9月29日このレビューはネタバレを含みます▼ 近頃、笠井あゆみ先生がイラストを描かれた作品が余り発表されていないので、思わず飛びついてしまいました。
先生がイラストを担当された作品は、漏れなく好評を博していると思われますので、この小説も多くの人に読まれたでしょう。
次巻も発行される予定のようですが、もしかすると、ヴァレリー国王の話になるのでしょうか。
もう、騎士団長のラルフとシオンの話は完成した感があるので、恐らくそうだと思います。
それにしても、シオンは、六歳からの十年間、粗食と話す相手もいない生活を続けてきたのに、よくぞ精神疾患や病気にもならずに堪えてきたと思いました。
私達がその様な目に遭わされたなら、平静ではいられずに心を病んでしまったことでしょう。
本だけが友だったようですが、本があったから心を保てたと言えるのかもしれません。
例え話すことはなくても、本を読んで色々と考えることで心が豊かになったのです。
シオンにとって、ラルフは父でもあり、母でもあり、兄でもあり、友でもあり、心から愛する人でもあります。
普通の人であれば到底耐えられなかったことを泣き言を言わずに堪えてきたから、素晴らしい人に出会えたのでしょう。
これからは失った日々を補う程に幸せな日々を送るのでしょうね。いいね
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気高さを持った野良猫に惹かれたキャリア2025年9月27日主人公の小塚利翔(こづかりしょう)を二年前に公園で見掛けた佐光匡英(さこうまさひで)でした。
恐らくその時にも利翔のことは鮮烈な印象に残ったのでしょうけれど、その後に続いた出来事によって、彼の存在は深く心に刻まれることになったのでしょう。
本文中に書かれてはいませんが、この二年間の間に、恐らく空き時間には自分自身で利翔の動向を探り、時間の余裕がない時には人を使って利翔の日常を把握していたのでしょう。
そうでなければ、どうして、利翔が困った状況に陥った処に上手く出くわすことができたのでしょう?
偶然とか縁があったとかいうものではないです。
例え利翔の生活範囲が新宿に限られていたとしても、偶然に出逢うことはほぼ考えられません。
実際に、現場で利翔が二人にやられているのを近くで視ていたのです。
そうして、利翔がどのように立ち回るか観察していたのでしょう。
その後、利翔の懐に入り込んで上手く懐くように仕向けて行ったのです。
利翔の生い立ちを見れば解りますが、彼にとって女性は利用はしても恋愛の対象には少しもなっていません。
身近に男性の手本となるような父親や教師等が居なかった為か見た目も中身も優れた男性に対する憧れを人一倍持っています。
それで、初めて出会って突然に身近な存在になった佐光に惹かれることになったのでしょう。
仕事の面では非常に習うべきことが多い佐光ですが、反面日常生活は維持管理能力が欠損しているのも愛嬌があっていいのかもしれません。
寧ろ、日常生活は利翔の方が色々と秀でています。
利翔は、これから様々なことを学んで魅力のある出来る男になっていくのでしょう。
佐光にとっても利翔は育て甲斐がある漢だと思います。
今後公私ともに離れがたい存在になっていくのだろうと思われます。もっとみる▼いいね
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摩訶不思議な設定を楽しみましょうネタバレ2025年9月26日このレビューはネタバレを含みます▼ 例によって、アオジマイコ先生の雰囲気のある表紙絵に釣られて読んでみました。
そして、蒼山先生の話の巧みさで、また泣かされてしまいました。
先生の話は男女間でも恋愛色が薄くて、会話の面白さについ惹き込まれてしまいます。
まるで友人同士の会話のようで、読むのが楽しくなるのです。
また、男同士でもはっきりとした友情を感じさせて、恋愛めいた感情を少しも感じさせません。
純粋に人と人のお互いを想い合う心が感じられるので、清々しい気持ちになります。
話の筋について言及してしまうと、読書の楽しみが半減してしまうので、内容については何も触れません。
けれども、『皇帝である圭鳳の寵愛は深く』という部分について期待してしまうと、期待外れになってしまうかと思います。
どちらかというと絵師としての存在意義の方がこの話では重要になります。
騙されたと思って読んでみてください。頁を捲る手が止まらなくなり、あっという間に物語の世界に嵌まり込んでいき、登場人物達と共に笑い泣きます。
読み終えた後も、物語の中に浸り、これで完結しているのに続きが読みたくなってしまいます。
主人公を男に替えて新しい話が始まるのもいいかもしれません。いいね
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前作で千林に抱いていたイメージが変容ネタバレ2025年9月25日このレビューはネタバレを含みます▼ 今作は『草食むイキモノ肉喰うケモノ』のスピンオフ作品です。
前作では梨とりこ先生がイラストを担当されていましたが、今作では兼守美行に替わりました。
それ故に、前作で千林に抱いていた人物像は、今作で新たな側面が視えてきてかなり変容しました。
イラストレーターが替わるということは、読み手に取って大事件です。
前作で抱いていた特定の人物に対するイメージを無理にでも変容させなければならなくなるからです。
結局のところ、最後まで千林に共感することなく読み終えてしまいました。
彼が思春期迄抱いていた死生観と人生観は病気の為と納得できますが、その後の後半生が酷過ぎませんか?
折角付き合った恋人を大切にしてあげなかったばかりに後々彼に酷い目に遭わされそうになるのですから、自業自得です。
そして、自分を護ろうとしてくれた想い人を怪我させてしまうのです。
一歩間違えば想い人を失ってしまうところでした。
少しも共感できなかったので、二度三度読んで深読みするのは諦めました。
もし、梨とりこ先生がイラストを担当されていたらどの様な作品になっていたのかと少し心残りです。
できたら、スピンオフ作品は前作と同じイラストレーターにして欲しいものです。いいね
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みおやおみ先生、回文好きですねネタバレ2025年8月16日このレビューはネタバレを含みます▼ アオジマイコ先生の表紙絵を見た瞬間に読みたくなって、無料立ち読みを読んで、書店で購入しました。
既に何度か読み返していますが、その度に泣かされています。
終章の最後に【完】と明記しているので、続編は無いのでしょう。
何時か、数え切れないほどの読者から乞われて続編を書いてくださることを夢見ています。
ゲームをしたことがないのですが、ゲームをしたことがある人は続きを読みたくなる筈だと思います。
主人公を替えて、全く新しい話が始まるのを読んでみたいものです。
この本は、本だけが友だった主人公の俊耿(しゅんこう)が、久々に話した子どもの暁華(ぎょうか)から心に燈火のようなものを貰ったことから話は始まります。 -
アオジマイコ先生の表紙絵で心臓を鷲掴みにネタバレ2025年7月10日このレビューはネタバレを含みます▼ 壱から捌迄のどの表紙絵も妖艶で奇怪で、恐いもの見たさで頁を捲ってみたくなって困ります。
西條皓(しろし)と紅子(べにこ)は罪を犯したことが未だない人かもしれませんが、登場人物の誰もが大なり小なり何らかの罪を犯しています。
遠野青児(とおのせいじ)も何か罪を犯しているようですが、彼は罪を犯した人が其の罪に相応しい化け物の姿となって見えます。
已むに已まれぬ罪というのはあるのかもしれませんが、此の小説に出てくる罪人たちはそうではありません。犯さなくて済んだはずなのに、態々罪を犯してしまっているように見受けられます。
現実の世でも、他の道を選択することができた筈なのに、最も最悪な選択をする人が如何に多いことかと誰しもが感じています。
人というものは斯様に愚かなものでしょうか?一生を掛けて己の精神性を高め人間性を高めるのが本来の人としての生き方です。
愚か者の為したことを反面教師とすればいいのでしょうか?人はともすれば楽な道を歩もうとします。楽な道は善き道かということを常々考えるべきなのでしょう。
西條皓と遠野青児が共に歩んだ道は如何なる道か、怖いもの見たさで寄ってらっしゃい見てらっしゃい。 -
カズキヨネ先生の美麗な表紙絵に惹かれてネタバレ2025年7月10日このレビューはネタバレを含みます▼ 漫画も小説も、表紙はとても大事なものです。読者は、表紙を一瞬のうちに見て取り、読むか読まないかを決めます。偶に漫画の表紙と中身の絵が違って感じることがありますが、取り敢えず、手に取って貰えたらこっちのものというのが出版関係者の偽ざる処でしょう。されば、中身以上に表の顔である表紙には力を注ぐ必要があります。そういう訳で、この小説は、中身が面白いので、表紙にはカズキヨネ先生を起用したのでしょう。今のところ、レビューしている人はいませんが、それなりに売れた本だと考えられます。
さて、表題の〖牡丹と獅子〗は、見ての通り主人公の道士の丁洛宝(ていらくほう)と便利屋の劉英傑(りゅうえいけつ)を表わしています。女かと見紛うばかりな美男子の洛宝と美丈夫な英傑を対で売り出すための謳い文句が〖牡丹と獅子〗という訳です。英傑の雇い主である蔡紅倫(さいこうりん)がこれ以上はないというぐらいに最適な字(あざな)を当てました。
論より証拠なので、無料立ち読みを読んで興味を惹かれたら読んでみてください。
主人公達がお互いを得難い終生の友と思うようになるいきさつを見事に描いてくれています。いいね
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表紙絵に惹かれたのは六七質先生の絵だからネタバレ2025年7月9日このレビューはネタバレを含みます▼ どうにもこうにも表紙絵が気になって、無料立ち読みを読んで購入して読んでみました。
読み終わった後で、表紙絵を描かれたのが六七質先生だと知りました。道理で読みたくなってしまう筈です。最近、先生の表紙絵にお目に掛かってないので、漸く会えたという思いです。
さて、結城かおる先生の小説自体も心惹かれるものでしたが、矢張り幾ら面白い本であっても、読者が興味を持ってくれなければ読んで貰うまでに至りません。そういう意味では、表紙絵は読書の切っ掛けになるとても大事なものです。書店の店頭で、或いは電子書籍で、この本の表紙を見て購入を決めた人が多かったと思われます。
私はゲームをしたことが無いのですが、ゲームをしている人にはこの小説の設定や話の流れは心躍るものだと思います。
王子の身分を剝奪された従神者のルスランが、神獣である竜のアルダーヴァルと共に諸国を放浪して、数多の困難を乗り越えて心身共に成長していく物語です。
百聞は一見に如かずなので、ルスランとアルダーヴァルの物語の続きを知りたければ、どうぞ手にして物語の世界観を堪能してください。物語の後半には、とても深い内容が詰め込まれています。いいね
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梨とりこ先生の表紙絵に一目惚れネタバレ2025年7月7日このレビューはネタバレを含みます▼ 表紙では、主人公の一人、牧野幸弥と、もう一人の主人公、関目将之の人物像を梨とりこ先生が的確に表現しています。性格からお互いを思いやる心までもが表情やしぐさに見事に表されています。彼らの後ろにいる千林は、二人の気持ちに気付いているので、陰になり日向になり二人の関係がうまく進んでいくように援助してくれます。
二人の初めての出会いは、入社式ですが、困っていた牧野を関目がかばって助けてくれます。この時に、牧野の心の片隅にひっそりと関目への思いが燈ったのかもしれません。
そして、五年もの長い月日を経て、その思いが心の中でゆっくりと育ってきたのでしょう。言葉で表せないほどの思いを何と名付けてよいのか牧野はわかりません。唯の信頼できる先輩というだけではないのですが、彼の存在のお蔭で牧野の日々は多少の不快な出来事をも相殺できる程になっています。
牧野を不快にさせた上司ですが、彼の存在の所為で牧野と関目が親密になることになったので、二度と思い出したくない人ではあるのでしょうけれど、関目にとっては牧野との関係性が変わる切っ掛けを作ってくれた人物ではあるのです。
十五歳の時、一度に家族を失って、誰とも親密な関係を築くことができなかった牧野にとって、関目との日々は何にも代えがたい大切なものだったでしょう。心が通じ合ってしまえば、彼に対する溢れる程の思いは身も心も蕩けさすほどのものになります。
唯一つ残念なのが、牧野が自分を指す一人称が「俺」であることです。彼の人物像に相応しい一人称は、私的には「僕」で、公的には「私」です。ボーイズラブ小説では、「俺」を当然のように使いますが、それぞれの人物によって使い分けて欲しいものです。終始違和感を感じながら読み進めました。それさえなければ、この小説は完璧でした。 -
湖水きよ先生の衝撃的な表紙絵に一目で虜にネタバレ2025年6月24日このレビューはネタバレを含みます▼ 十年近く前に読んで気に入ったこの小説の内容を忘れてしまっていたので、もう一度読んでみました。
高速道路の工事現場で作業員が事故に遭う話は時たま耳にします。けれども、結果は重大なことが多いのに、今作の鮫島は左手の骨折だけで済みます。強運の持ち主というか、咄嗟の時の危機回避能力が高すぎるというか、鮫島という姓に相応しい男です。
肉体労働をしている人は喫煙率と飲酒率が高いように思います。喫煙と飲酒以外は話の内容が面白くて楽しめました。
主人公の秋山がいささか雰囲気に流されやすいところは否めませんが、鮫島に対しては以前から男として憧れるような思いを持っていたので、すんなりと親密な関係に嵌って行ったのでしょう。
全ては唇から始まりますから、そこを赦してしまった時点でもう全てを赦しているも同然なのに、それに気が付いていない秋山が可愛いです。
鮫島は不意を突いて急襲して、じわじわと秋山の懐に入り込んでいく策士です。男から突然好意を告げられるという、あり得ないことがあり得て戸惑う秋山は、青天の霹靂のように恋に落ちてしまったようです。
何度読み返しても楽しい話なので、愛読書になりそうです。 -
性別を問わず魅了する装身具、宝石然りネタバレ2025年6月23日このレビューはネタバレを含みます▼ アオジマイコ先生の表紙絵を見た瞬間に物語を読んでみたくなりました。
やはり国に皇帝という存在があり、皇子が複数人存在すると、跡目争いは起きるものです。
後宮にも、無駄に数多くの妃が存在しています。血筋を重要視するとそういう選択になるのでしょう。
衣服は私達の身を守り彩るものです。自分がどういう人間であるかを端的に表すものです。それと共に装身具によっても自分の付加価値を高めることができます。
古より、権力者や裕福な者はその身を美しい稀少な宝石で飾り立てました。
私達は、高価な宝石類には手が届かなくても手頃な価格の宝石を手にすることができる時代に生きています。
この物語に出てくる晶華が苛酷な幼少期を生き抜いてきた人生訓には驚かされるのですが、晧月との間に芽生える友情も楽しんで読み進めることができます。 -
炎王とは[紅火岩山]の灯氏の嵐静改め静羽ネタバレ2025年6月23日このレビューはネタバレを含みます▼ 嵐静は、ただ一人命の危険を冒してまでも、自分を匿い生きながらえさせてくれた翔啓に命の危機が迫った時に、自分の身を呈してまでも彼を守ろうとします。けれども、その行為も虚しく、自分の身を貫いた剣が翔啓をも傷つけてしまったことを知ります。
そして、生命の理に反して意志の力によって生死を危ぶむほどの大怪我を生き抜いた嵐静は、自分たちを害した者の言葉に従うことを誓い、翔啓を生かしてくれるように頼みこみます。その誓いは受け入れられ、嵐静は、静羽と名を変え悠永城の後宮で「皇后の剣」として、その後の十年余りを生き抜きます。
嵐静と翔啓の友情の物語ではあるのですが、嵐静を忘れてしまったはずの翔啓が否応もなく静羽に惹かれていく様が痛々しくもうれしく悲しいです。
世にも非道なことを行った者は、因果応報の理によって報いを受けます。
物語は複雑に錯綜しますが、嵐静が守り抜いた心根の優しい翔啓によって静羽は助け出されるのです。
どうぞ、二人の友情の物語を楽しんでください。 -
強くなければ生き残れない、守れないネタバレ2025年5月31日このレビューはネタバレを含みます▼ 太平の眠りを覚まさんと、列強が手を変え品を変え虎視眈々と狙っていた江戸時代末期。
明治、大正、昭和、平成、令和と続いてきた日本ではあるのですが、望む形ではないことを憂う人は多いのでしょう。
現代は、職業で認められた人だけが武器を持つことを赦されています。それでも、銃の類であって刀ではないでしょう。
また、刀を扱える人は稀でしょう。
江戸時代は、武士のみが刀を扱うことを赦されていました。実際に使うことはなくなっていても、いざという時の為に道場などで鍛錬をしていました。そして、身を守ったり誰かを助ける為に、誰よりも強く優れた技能を持たなければなりませんでした。
刀の重さと命の重さを身を以て感じることが剣の鍛錬の道の一歩目です。日頃は、刀と同じ重さの木刀で鍛錬しますが、その重さをもはや感じなくなった時が二歩目なのかもしれません。相手の動きを読むことを考えるより先に身体が動くようになると漸く三歩目。剣の道の奥義に達するには永い道程と持って生まれた天性の才が必要なのでしょう。
伊織と琴乃は、何度も危うい目に遭いながらも生き抜いていきます。そして、長い別離の時を経て、初めてのやすらぎの時を迎えます。 -
情緒のある美麗表紙に簡潔な題目ネタバレ2025年5月31日このレビューはネタバレを含みます▼ アオジマイコ先生のイラストで、和気樹雨(わけのきう)医官、安倍晴明(あべはるあきら)学生、丹波康頼医官などの容貌を知りたかったのですが、表紙絵も購入代金に含まれていないようです。
日頃、西洋の薬よりも漢方薬の方が身体に良いと考えて吞むことが多いのですが、使い方を間違えると漢方薬も危険だということが解ります。
主人公の安瑞蓮(あんすいれん)は、安倍晴明に治療する上での気付きを貰っています。それが気持の余裕を生み治療の功を奏しています。
また、丹波医官からも様々なことを学ぶ事ができているので、自分のできることで恩返しをしています。
そして、自分よりも四歳も若い医官の樹雨の人柄や志の高潔さに惹かれています。
後宮という特殊な閉鎖空間故に起こるできごとと病は一筋縄ではいかない難しさがあります。
後宮関連の一連の病の治療の区切りも付き、筑前に帰る伝手もできたので一先ずこの物語は終わるのでしょう。
引き続き、筑前の薬師という題目で活躍する瑞蓮を見たいものです。 -
天と地と夜と昼、事象から法則を読む2025年5月31日私達は自分が何も生みださなくても、多くの人々が生みだしてくれた物によって生かされています。
学校などで教えられたり、自習して学んで知った多くのことを自分の知識として蓄えて、日々の糧にしています。
それらの恩恵を当たり前のように享受していますが、どれもが誰かの手によって発明又は発見され形づくられたものです。
今日という一日、今月という一月、今年という一年は、連綿と続いて往くものとしてそこにあります。
カレンダーや手帳やパソコンやスマートフォンの中に確実に存在しています。
私達が日々を送る指針となる大事なものです。
それは、江戸時代に改変されて現在に至っているということを物語として興味深く書いてくれたのが本作品です。
この物語の中に登場する人物は、大層心惹かれる人ばかりなので、読んでいて楽しいです。
上下巻に分かれる程長い物語ですが、苦にならずに読めます。もっとみる▼ -
おもて表紙には女人、うら表紙には男童ネタバレ2025年5月31日このレビューはネタバレを含みます▼ 『三つ子の魂百まで』という諺があります。
この物語の冒頭に出てくる信太の好物は、蕎麦、あられ、天ぷらなどと、美味しそうな食べ物が次から次へと書かれています。
恐らく迷子になって物乞いをするようになってからは食べたことがないはずのそれらの味を彼は覚えているのです。
三つまでは、そういうものが食べられるところにいたのでしょうけれど、火事の後に焼け出されて彷徨って恐い目に遭ったことで、自分の名前や諸々のことを忘れてしまったのでしょう。
けれども、えにし屋のお初に出逢うことで道が拓けてきます。
真っ当な人生を歩む人と人の道を踏み外す人の違いは何なのでしょう。
私達は、物語の中でも現実の世界でも、日々出会い見掛ける人から色々なことを学びます。
それらを自分の糧にしたいものです。 -
人も本も見た目が大事、何事も一瞬で決まる2025年5月31日二年前に発行されたこの本は高額でしたが、表紙絵の豪華さが功を奏して順調に売れたと思われます。
今後文庫本になるとすればもっと売れるでしょうけれど、装丁が些か変更されるかもしれません。
警察小説で、二作目にしてこの力の入れようは、出版社として相当のものです。
表紙絵の装画を描かれた風海氏の発想力と力量は、この本の出版に関わった人達を唸らせたでしょう。
さて、本の中身について触れると読む楽しさが半減してしまうので、何も言いません。
私達も経験してきたことですが、どこの組織にも真に尊敬すべき人と全く尊敬には値しない人がいるということです。
そして、得てして、尊敬に値しない人が地位と権力を持っていたりして、関わった人達は苦労させられるのです。
如何にしてあることが行われ、如何なる理由で、誰が行ったか。それを観察力と発想力と勘で筋道を立てて見出していく。
警察という組織で実際に活躍している多くの人々に感謝の念を捧げます。もっとみる▼ -
夏珂先生の表紙絵は、猫も人も素的過ぎるネタバレ2025年4月27日このレビューはネタバレを含みます▼ 何年も前に、夏珂先生のイラストに惹かれて此の小説を読んだことがあります。主人公の一人である早川雪舟は魅力的な人物なのですが、煙草を吸うという其の一点が赦せなくて、表紙絵が気に入っていたにも拘らず紙本を手放してしまいました。
今回、半額になっていたのもあり、話の筋を忘れていた此の小説を読んでみました。
矢張り咥え煙草をする雪舟が何度も登場する度に、害でしかない煙草をどうして吸うのか、著者の設定の誤りだと感じつつも読みました。雪舟という人物は煙草を吸う人には到底思えないのに、著者の頭の中には煙草を吸う人は恰好いいという考えがこびり付いているのだろうと感じました。
また、雪舟の離婚した女性について、美しくて聡明な風に書かれていますが、夫の友人と関係する時点で人間的に信用できない人だと感じました。川井伊紗は彼女について、猫のハイジに似て素的な人だと思っていますが、今現在がどうであれ、過去の行いは決して消えないし、無かったことには到底できないのです。
早川雪舟と川井伊紗が末永く幸せに暮らせるようでいいのですが、雪舟は伊紗と猫たちと自分自身の為に煙草を吸うのを永久的に止めるべきでしょう。
猫が余りにも沢山出てきたので、名前と姿が一致しないまま読み終わりました。其れだけが残念です。いいね
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目には見えなくても声で判ることが多いネタバレ2025年3月28日このレビューはネタバレを含みます▼ ラジオを聞くのはどんな人なのでしょう。昼間は車に乗って仕事をしている人達でしょうか。夜間は勉強をしている学生達でしょうか。何方も、声を聞いてはいますが、聴いてはいないでしょう。他に集中すべきことが在るからです。何方かというと聞き流している感じでしょうか。それでも、番組を製作する人達は誰もが聞きやすい分かり易いものを作ろうと日々努力しています。
映像も語られた言葉も儚く消えてしまうものですが、誰かの心に響いたり残ったりすれば、制作者冥利に尽きるのでしょう。
此の小説では、其のようにして電波の世界で偶然に出逢った一人の高校生とアナウンサーが、必然の様に再び現実世界で出会う話です。
若槻湊人も、麻生和成も、自分の人生と仕事に前向きに努力と研鑽を重ねることができる人です。
ですから、実質的な再会を果たして、お互いを高め合える恋人関係になれたのでしょう。
一箇所不自然だったのは、放送中に湊人が発熱していることに、アキが声ではなく見た目で気付いたという処です。人の体調不良は先ず声に現れます。普段電話をしていて相手の声が何時もと違うことに気付くことがあります。高熱を発しているのに声が少しも変わらない訳がありません。放送中だということで幾ら気を張っていても、必ず声に変化があります。
ラジオ番組のアナウンサーの主人公達の話を興味深く読めたので、次作も現実世界で真面目に働く主人公達の物語を読んでみたいものです。 -
別式女の万里村巴の胸の空くような剣士ぶりネタバレ2025年3月28日このレビューはネタバレを含みます▼ 表紙に描かれているように、雨城藩別式女筆頭の万里村巴は剣の才もあり、人品も優れています。料理の才はなくとも、其れを補って余りあるものを持っています。
しかし、彼女の夫の音次郎は料理の才はあれども、他に優れた処を探すのが難しい人物です。
雨城藩の賄い方に助として勤めていますが、自分の得た禄を家に入れずに全て高級料亭通いのお金に当てています。更に其れでも足りずに毎月何両ものお金を巴から貰っています。そして、何度も金の無心をする音次郎に業を煮やした巴が無心を断ると、事もあろうに息子の誠之助の財布からお金を盗んでいます。
物語の冒頭の巴は惚れ惚れする様な別式女ぶりだったのに、婿の音次郎の人物設定が余りにも酷過ぎて読むのが嫌になってきました。彼にとっては舅である源蔵との言葉の応酬にも嫌気がさしてきました。寝煙草をするに至っては、江戸が如何に火事が多かったか知らないはずはなかろうにと思ってしまいました。また、料理人は自分の舌と味覚を大事にするので、煙草を吸うことなどもっての外なのです。煙管の掃除をする際に指先にも脂が付いてしまうはずです。
試し読みをした時点で気付くべきでした。二巻目を購入しないで良かったとつくづく思っています。いいね
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早川司寿乃先生の表紙絵に惹かれましたネタバレ2025年3月28日このレビューはネタバレを含みます▼ 〖たそがれ堂〗という稲荷神社の守護を受けたコンビニエンスストアの話です。
此の物語の中では、少年にも少女にも女性にも猫にも奇蹟が起こりますが、現実世界では、奇蹟はおこりません。
辛いことや臆病な自分から逃げていないで、立ち向かう勇気が必要なのです。
誰かに助けて貰うのではなく、神様にお願いをして救って貰うのではなく、自分が自分を助けなくてはなりません。
強い意志と信念を持って生きる必要がある時が誰にも必ず来るのです。
誰かに慰めて貰ったり気休めを言って貰って満足していてはいけないのです。
其のようにして、身命を尽くしたときにこそ奇蹟はおこります。
自分自身の自分だけの人生を自分らしく生きて往きましょう。いいね
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獅子原、一色、浦川ら、豪華準主役勢揃いネタバレ2025年3月20日このレビューはネタバレを含みます▼ 主人公の久遠航太は勿論魅力的な青年ですが、何しろ彼の脇を固める獅子原烈、一色時宗、浦川そうび、等、目を瞠るような美男美女の活躍も驚異的で驚きの連続です。
あっという間に一巻、二巻を読み終わり、三巻目の発行が待ち遠しいです。
実は、私はホラー、刑事物、探偵物等を自分の精神衛生の為に好んで読むことをしません。
この小説の始まりは余り気持ちのいいものではなかったのですが、火事場に現れた才色兼備の男性に思わず惹かれてしまって、うっかり読む羽目になりました。
犯人のことを考えると気分が悪くなるので、航太の驚異的な生命力や航太を支えてくれる獅子原、一色、浦川達の大活躍を楽しんで読むことにしています。
未だ暫くはこの一連の物語を楽しめそうです。いいね
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愛という言葉を付けても贄とばれる虚しさ2025年3月14日『偽りの皇子はみだらに啼いて』を最近読んで表題と物語が合致していないと感じました。それでも、能く練られた話で興味深く読めました。
そして、此の小説の試し読みをしてみて、レヴューも参考にして読んでみましたが、同じ作者の作品かと思うくらい全てにおいて心惹かれませんでした。濡れ場も普通の場面も殆ど読み飛ばしてしまいましたが、もう一度読み直す気にはなれません。
表紙絵とイラストも主人公達を少しも魅力的に描いていない様に思われます。
過去作品も何作か読んだことがありますが、心に残るものがなかったのに、今回期待したのが間違っていたと思うのが残念でなりません。もっとみる▼いいね
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好印象の登場人物達が要注意人物達に吞まれネタバレ2025年3月8日このレビューはネタバレを含みます▼ 試し読みをして、他の方のレヴューを読んで、期待して読み始めました。
途中で読みにくいと感じつつも、彼方此方読み飛ばしながら要点だけを捉えて読み進みました。
主人公の猫沢二胡が勤務していた出版社の編集室を辞める切っ掛けになった編集長の話のくだりに至っては、非常に不快感を覚えました。現実に斯様な人がいるのは承知していても、文章と活字で読む衝撃がかなりのものでした。
二胡の甥、明澄に好感を持っていましたが、彼の母親と其の再婚相手の間の事情を知って、更に衝撃が増しました。
知り合った女子高生の洞ヶ瀬詩さんと母親、そして、先輩編集者の長田さん等、野良猫の世話をする知識を持たない二胡の為に尽力してくれた好意が霞んでしまって相殺されてしまう程、一度覚えてしまった不快感は消せないのです。
二度読み処かもう、続巻を読む気には到底なれません。
胸の奥が重く塞がった感じで息をするのも苦しい程になっています。
表紙から想像していた内容とは全く違っていました。
どうやって立ち直ろうかと思案中です。 -
猫助けから始まり猫仕舞いできりよく終わるネタバレ2025年3月7日このレビューはネタバレを含みます▼ 『福猫屋』は、三巻まで発行されています。
一巻目だけ読んでも此の物語の面白さが充分判ります。ですが、できれば二巻目、三巻目と引き続いて読んで戴きたいのです。
実際の江戸時代の飼い猫や野良猫事情は、此の物語程心温まるものではなかったと思われますが、悲しい話を幾ら書き連ねても誰も幸せにはなりません。善人ばかりで話が良い方に向かっていく小気味いい物語を次から次へと聴かせて貰って心が和みました。
自分も人には優しくしようと猫には優しくしようと思わせてくれる作者の筆遣いに感服いたしました。
暫くの間愛読書になるかと思います。猫と共に暮らせない賃貸マンションに住んでいるので、表紙も愉しく眺めています。
素的なお江戸福猫屋物語を聴かせてくださって有難うございました。
念の為に申し添えておきます。猫仕舞いは、『福猫屋』をやめるとか店をたたむということではなく、高齢になって一緒に暮らしていた猫の為に早目に猫を手放そうとした人と猫をもう一人の人も交えて幸せに暮していく為の算段を付けたというお話です。 -
猫による猫の為の猫助け、時々人助け在りネタバレ2025年3月2日このレビューはネタバレを含みます▼ 表紙絵の通茂は、横向きな為か些か筋骨隆々に見えなくもありません。実際は細身で麗人なのに、袴を身に付けている所為もあって、武人観がかなり感じられます。
百年前の化け猫騒動の曰くが有る妖刀に紅蓮と名付けた大猫を軽々と載せているので、武芸の達人であることもあり、見る人が見れば判るのでしょう。
通茂は、身近にいる祖母の貞樹院や家臣の小森新右衛門や使用人の辰吉と八重とお泉以外の人には関心がないのです。
自分の屋敷にいる月影、紅蓮、牡丹の他屋敷に出入りする猫達や自分を頼ってくる猫達等が安寧であることが彼の唯一の望みなのは間違いないでしょう。
人は性根が真っすぐではなく、無駄な欲望を持ちすぎているので、もう、金輪際付き合いたくないのです。
正直で噓がない真の心を持った猫だけが彼の唯一の縁(よすが)足り得るのかもしれません。いいね
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古の中華国物語に在る豪胆さ華麗さを想うネタバレ2025年2月15日このレビューはネタバレを含みます▼ 皇太子慧秀の身代わりを務める彰湖は、其の出自と持って生まれた潔癖さと高潔さにより、初期の段階で大星と栄順には既に影武者と見破られていました。自分が汚してしまった敷布や衣服を洗濯する皇太子は何処にも存在しないでしょう。
彰湖の聡明さは身近にいる者には直ぐに知られてきます。勤勉さと知識量の豊富さと考えの柔軟性と的確さに驚く大星です。
又、彰湖の心と体を知れば知るほどに愛おしくなっていく大星ですが、何度も助けられる内に、彰湖も大星への自分の気持を自覚するのです。そして、大星の為に自分の命さえも惜しくないと思うようになります。究極、自分の身を挺して大星を銃弾から守ろうとする彰湖ですが、お約束の様に最後は幸せな結末を迎えます。いいね
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人も野生動物も魅了する秀瑛の無垢なる魂ネタバレ2025年2月14日このレビューはネタバレを含みます▼ 人は、唯美しいだけの人に対する興味を直ぐに失うものです。高潔なる精神性や不屈の根性等、其の人が併せ持っている特質に惹かれて、より内面や人となりについて知りたくなるのでしょう。
教育というものの重要性を此の物語は如実に伝えてくれています。優れた頭脳を持って生まれた秀瑛でさえ、誤謬の多い知識を与えられて育つと、如何に歪な人になり果てるかが分かってしまって恐ろしいのですが、彼の聡明さに気付いた瑞龍によって真実の知識を得ることができました。秀瑛の十八歳までの半生は、辛く厳しいものでしたが、其のお蔭で奴隷としての辛い労働や粗食にも耐えることができました。見る人が見れば、王族として育てられた者としては不可思議すぎる言動が多いのですが、其れに気付いた瑞龍に助け出されます。
純粋に野生である筈のマヌルネコに慕われ懐かれてしまう秀瑛ですが、野生動物は野生の勘で秀瑛が信頼するに足る人だと判っていたのでしょう。動物には人の魂の色や形が見えるのかもしれません。
瑞龍は後半生を共にする得難い伴侶を得ることができて佳かったと思います。それは、秀瑛についても言えることでしょう。いいね
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奈良千春先生の美麗表紙に魅了されましたネタバレ2025年2月13日このレビューはネタバレを含みます▼ 奈良千春先生のイラストが描かれた小説を今迄余り読んだことがありません。以前見かけたイラストとは雰囲気が可成違っているので、最初は気が付きませんでした。しかし、主人公達の容貌と衣装の華麗さに思わず見惚れてしまいました。
悲劇的な処を少し喜劇的な要素を入れることで読み手の衝撃を和らげています。ワン・ルイ(王睿)は絶世の美人なのに自覚がない処は、彼の生まれ持った資質によるものなので、それと知らず多くの人を惹き付けてしまっても彼ならば仕方がないと笑って済ませられる様な感じでしょうか。
そして、サーシェン(颯伸)も又、知らず知らずのうちにというか初めて出逢った時から、そうしたルイ(睿)の虜になってしまっていたのでしょう。
恐ろしい山場もなく、幸せな展開と結末は予想がつきながらも、愉しんで読み進めることができました。
大熊猫の子パンダ、スー(思)と三人で家族になることが暗黙の了解の様に決まりますが、誰にとっても最良の選択でしょう。それにつけても、三歳は思ったよりも色々なことができる年頃なので、大人は子どもだと侮ってはいけません。一人の人として認めて意思を尊重しましょう。 -
『婿どの』と呼ばれるようになった鈴之助2025年2月8日本作の主人公鈴之助の生家は、竹や杉や柳等で作られた楊枝を商う楊枝屋です。人の身体の中でも一番に大事にするべき口や歯の品物を扱う商いは、医者にも匹敵する程のものでしょう。
そして、温和な両親と兄達に慈しまれて育ってきた鈴之助は、人の良さを絵に描いたような人物に違いありません。自分が人品共に優れているとは少しも思っておらず、謙虚で心根が優しいのです。これは持って生まれた性格だけではなく、日々の親兄弟との生活の中で培われたものだったと思われます。
窮地に陥っても、色々と思い巡らし最適解に近い解決方法を見出せる能力は誰でもが持っているものではありません。当事者にとって何が一番大切なものかを見極める思慮深さと直感力を持っています。相手の懐に入っていく人懐こさもやんわりと持っていて、子どものような無垢な心情に誰もが惹かれてしまいます。
江戸時代の仕出し料理の仕組みの見事さと献立は垂涎物でした。現代の仕出し弁当とは比べようもない、かの時代が生んだ贅沢だったのでしょう。再現して、味わってみたいものです。もっとみる▼いいね
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刀を己の力と思う武士や犯罪者の愚かしさ2025年2月6日試し読みをして、先が気になるので購入しましたが、結末が気になるので途中を読み飛ばしながら最後まで目を通しました。
葉室麟先生の小説は初めて読みましたが、もう、二度と読むことはないと思います。読む最中も読んだ後も少しも気分が上向かなかったからです。武家というもの、武士というもの、そして、これに類する事が過去に行なわれていたということを思うことさえ心身に非常な痛みを覚えるからです。
人間の愚かしさをこれでもかと見せつけられて、それでも唯の歴史小説だと割り切るのは、余りにも無理があります。
この様な小説を読む意義とは何なのでしょう?娯楽では在り得ません。
唯の作り話だと笑って済ませられる内容ではないからです。
まるで、自分が斬られたような痛みを覚えてしまう辛い物語でした。日本史が嫌いになってしまいそうです。もっとみる▼いいね
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血筋に拘る者は大局を誤り情を尊ぶ者は残るネタバレ2025年1月27日このレビューはネタバレを含みます▼ 表紙絵では、夕暮れの中に背を見せている主人公の岡安久弥と養い子青馬(そうま)です。岡安久弥は美丈夫で青馬は美童ですが、ここでは二人の容貌は言葉によって語られるだけなので、私達が自分の思い通りに二人を想像しながら読み進めて往けばいいのでしょう。読み進むにつれて現れてくる柳橋芸者の真澄も大層美しい女性ですが、彼女についても自分が思う美しい顔と所作を思い描きます。
表紙絵は和む雰囲気ではありますが、この物語は確かに心が洗われるような場面もありますが、様々な喜怒哀楽が主人公達に次々に降り掛かってきて、読み進む手が止まりません。彼らの心情を思い遣ってはもらい泣きする読み手になって往きます。
幸せな結末を迎えるに至っては更に喜びの涙を流しました。
笹目いく子先生の物語を初めて読みましたが、今迄こんなにも泣かされる物語を書かれた先生はいませんでした。他の作品も読んでみたいものです。
しかし、つくづく考えてみれば、久弥の父、小槇藩主山辺伊豆守彰久が支藩からの養子である宗靖を正式に跡取りとせずに実子の彰則を推した為に跡目争いを起こしたのであって、更に正妻の三味線の師匠岡安志摩緒に無理やりに産ませた久弥までもが何度も刺客に狙われ挙句には久弥の母の志摩緒をむざむざと死なせてしまう羽目になったのでした。
ところが、久弥は人を見る目と先を見通す力があるので、小槇藩主に相応しいのは宗靖だと断じて父と義母を策を弄して説得することに成功します。
父も久弥と彼の養子となった青馬との絆の深さに感じ入ることとなり、漸く藩主として摂るべき道が判ったのでしょう。
武家の男は幼少期より成人するまで、誰かと親密に関わって人としての親愛の情を育むことをしないので、人として歪な人間になるのだと考えられます。
現代でも、男女共に忙しすぎて、子を持ったとしても本当の子どもを育てる悦びを知ることもできないまま無為に月日を過ごしている気がします。 -
陰陽師が妖怪になってどうする?安倍晴明よネタバレ2025年1月24日このレビューはネタバレを含みます▼ 安倍晴明が隠岐の島で現れるまでは、それなりに楽しんで読んでいました。急すぎるボーイズラブ展開にも、御占千晴の心情がそれまでに少しも書かれていなかったことに、些か不信感があり手落ちだろうと思っていましたが、隠岐の島で安倍晴明が現れるに至って、完全に読む気力を奪われてしまいました。
私達人間は、死後現世での姿と記憶を全て還して、幾ばくかの後に再び現世に生まれる際は、全く新しい体と真っ新な頭脳と心を持って生まれます。
ところが、安倍晴明は其れを嫌って、神をも閻魔をも欺き、陰陽師としての技を遣って此の世と彼の世の狭間で自分が新しく乗り移る依り代として相応しい人間を探します。
御占千晴の体を狙う安倍晴明に、門蔵龍明は御占千晴の替わりに自分を推します。
そこは、何方も依り代になるつもりはないので、諦めて欲しいと言うべきところなのですが、何故か思考回路が閉ざされてしまったのか、妖怪安倍晴明のいいなりになっています。陰陽師であるのなら、安倍晴明の言い分が可笑しいことに気付いて然るべきなのに、誰もが流されてしまって、黒猫の雲母(きらら)が身代わりを申し出てくれます。
もう、何故この様な展開になるのかさっぱりわかりません。
妖怪安倍晴明が散々引っ搔き回して物語が終わってしまいました。
笠井あゆみ先生のイラストに釣られた自分が何だか悲し過ぎます。いいね
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人が一番幸せを感じるのは食事の時間ネタバレ2025年1月19日このレビューはネタバレを含みます▼ 花凛は、子どもの頃に引っ込み禿(かむろ)だった経験から、温かい食事を食べることが何よりの幸せということを知っていました。
それで、花魁になるのを止めて、料理を習い自分の店を持ち、花魁たちに温かい美味しい料理を食べてもらおうと、借金をしてまでその夢を叶えようとしました。
その夢に乗ってくれた神楽と共に、多くの人が認めてくれる料理人になっていきます。表紙絵では、花魁道中の恰好をした花魁が包丁を持っていますが、それが花凛の料理人としての正装になりました。
花凛と神楽が作る料理はどれも美味しそうなので、現代でも其の品書きで店を出すと流行りそうです。
次なる巻でも、花凛と神楽は人が思いもつかないような料理を作って、私達を驚かせてくれるのでしょう。
早く次巻が出ないのか待っているのですが、未だのようなので催促しましょうか。いいね
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『負うた子に教えられた』神なる菅原道真ネタバレ2025年1月18日このレビューはネタバレを含みます▼ 今も昔も男の人が育児に関わることはほぼないと言っていいでしょう。
菅原道真は、人として生きてきた時は全く関わることのなかった育児を、死後神となって初めて経験します。人と鬼の半妖である行夜は人間の子とはまた違った育て方の難しさがあったでしょう。そして、自分が赤子の時から十六歳になるまで成長を見守った行夜の可愛さは、実の子以上だったはずです。そういう訳で、朝から晩まで始終行夜に付き纏って大変迷惑がられているのです。
読み進むにつれて、神である筈の菅原道真でさえ判断を誤ってしまい、行夜に正しい道を教えられます。真に、この時に子が親を超えたのです。
行夜は、自分の本当の両親が誰かを知っています。けれども、何もわからない赤ん坊の自分を大変な思いをして育ててくれた養い親の菅原道真を誰よりも慕っているのです。
昔の人はよく恨みつらみでおん霊になったように言われていますが、現代の人がそうなった話はあまり聞きません。昔と今と何が違うのでしょう?いいね
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救い人日奈の命を引き換えにできない異花王ネタバレ2025年1月17日このレビューはネタバレを含みます▼ 宇天那の郷の異花王は、鳥の性を持つ日奈が現れて身を喰う虫を退治してくれるまで、拾四年もの永きに渡って毎夜虫に喰われて翌朝に再生するという壮絶な年月を送ってきました。自分よりも九歳も年下の少女が其の身を挺して自分を守ろうと毎夜虫達と闘ってくれたのです。異花王にとって、日奈は救世主でもあり、彼女の自分に対する忠誠心を痛いほどに感じていたと思われますが、まさか、自分の為に其の命を投げ出して助けてくれる迄とは信じていなかったのでしょう。日奈がいない世界で生きていくことを思えば、自分が此の世から去った方がいいのに違いないと究極の選択をします。暫くの間は、天から日奈の行く末を見守ってくれるのでしょう。
朱鷺王は贅沢な暮らしの中で我儘ばかりを言っている人間なので、本当は貧乏暮らしを味わってみた方がいいと思うのですが、既に黒金国の王になってしまったので、相応の苦労をして国を治めて往けばいいでしょう。
日奈とは何年か出会うことなく、寂しい思いをするのもありでしょう。いいね
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本編の影の立て役者は北町奉行榊原主計ネタバレ2025年1月15日このレビューはネタバレを含みます▼ たまが言うには、「人間の女は平次のような悪意の無い善人には惹かれない。悪い男の方が好かれる」と。少し悪いのはいいかもしれないけれども、大抵の場合は、段々と悪くなって歯止めが効かなくなるものです。
平次の表裏の無い無垢な心映えに、妖怪の老若男女は次々と嵌ってしまいます。ある者は人間の悪人の手から助け出され、ある者は積年の悲しみ苦しみを取り除いてもらい、と人間らしからぬ平次の無尽蔵の生命力に、仕舞には江戸中の妖怪が頼れる岡っ引きになりそうです。
多分、心に苦がない平次は可成り長生きすると思います。
また機会がありましたら、平次やたまや雪女や双葉たちの物語を聞かせて欲しいものです。いいね
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表紙に描かれた花は〖春蘭〗でしょうか2025年1月14日サマミヤアカザ先生の美麗な表紙絵と人物紹介のイラストを思い描きながら、読了しました。
中華国の歴史的な衣装は、独特で華美華麗な設えが目を瞠る程に心躍るものです。
日本の古い時代の衣装に似通った処もありますが、現代の衣装と比べると装飾なども可成手が込んだものが多かったように思われます。
さて、此の小説の主人公二人の名と姓名は、〖白玲〗と、【潤冬惺】ですが、『名は体を表す』という言葉通りの、神に近しい存在と、霊力を持つ人よりも一種神に近い存在の人間です。
親は子に、希望を込めて名前を付けますが、どの国の言語にも其々の字に意味があるように、中国と日本は漢字自体に幾通りもの意味があるので、親から子に贈る最初の重要な贈り物です。一説には、子が自分の付けて欲しいを親に伝えて、親はそれと知らずに自分達が選んだものと思って子に名前を付けるとも言われているそうです。
【張霖雨】、〖白碧〗、〖凛々〗、〖宵胡〗等、姓名や名から、また話し言葉や仕草から其々の姿形を想像するのも愉しい一時でした。
続編がある筈なので、何度か読み返しながら待つことにします。もっとみる▼いいね
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心の中で溢れるたった二文字の言葉ネタバレ2025年1月7日このレビューはネタバレを含みます▼ 五十年近く前までは、男女共に結婚して子孫を残すことは義務であると言われていました。周囲の殆どの人が、身近な人や仲人によって次々と従っていた時代でした。
そういった意味では、此の小説の和久井柊一の父母や祖父母も意に染まぬ結婚をしたのかもしれません。かと言って、それを理由に子どもと関わらなかったことは許されるものではないでしょう。和久井柊一は、誰にも甘えることも心の内を曝け出すこともなく思春期を迎えようとしていました。そして、唯一自分と関わってくれた叔父を慕うのですが、未成年者を相手にした叔父は拒絶するしかなかったのは尤もなことでした。
けれども、未だ若かった叔父を不慮の事故で失った和久井柊一の心には底知れぬ悲しみと絶望が襲ったことでしょう。
しかし、大学で蓮見徹(てつ)と出会い、彼から細々と食事の世話をされることで、幼い頃から澱のように心に積もった報われなかった哀しい想いがゆっくりと癒されていくのを感じるのです。誰にも甘えることができなかった辛く淋しい気持ちが温かく柔らかく解けて往くのを感じて幸せだったのでしょう。和久井柊一にとって、蓮見徹は母でもあり、友でもあるとても大事な存在になりました。
和久井柊一は、人の心の機微には敏いのに、自分の心については全くと言っていい程に掘り下げてみようとしません。期待して後で落胆するのを恐れているのでしょう。それは、幼い頃からの習性だと考えられます。
誰が見ても、和久井柊一から蓮見徹への恋心は感じ取れるのに、本人だけが頑なに否定しています。人知れず彼は其の思いを言葉に綴ります。
そうして、膨大な量の恋文が果てしなく綴られていたのでした。 -
誠吾と冲有はお互いが救い人、得難い友垣ネタバレ2024年12月31日このレビューはネタバレを含みます▼ 犬飼誠吾は、父母から優れた気質を受け継ぎ、愛情をもって育てられた人です。
そのお蔭で、天真爛漫で物事の真偽を見抜く正しい目と心根を持っていましたので、窮地に留め置かれていた根古屋冲有に対して、偏見どころか称賛を示したので、冲有は青天の霹靂のような想いを懐いたのでしょう。
そして、誠吾は冲有が酷い境遇から抜け出すための手助けをしてくれたのです。
次に、冲有を助け名前を付けてくれて生きるための生業を惜しみなく与えてくれたのは、蘭方医の根古屋道三でした。
彼のお蔭で、自分を苦界から救ってくれた誠吾を失わずにすみました。
人は相見互いと言われますが、誠吾と冲有の身近にいる人達は真にそうなのでしょう。
愚かな人達が次々に現れますが、人の弱さを見せられ、誰しも一歩間違えればそのようになるのだと思い知らされました。
江戸時代の刑罰は真っ当で胸の空くようなものなので、現代の刑罰が如何に生ぬるいものかよく分かります。
『目には目を歯には歯を』という刑罰は古い時代のものですが、今こそ必要なのではと思います。
冲有とお鈴と誠吾と三匹の猫たちが醸し出す雰囲気が、事件や人の恐さを和らげてくれます。
これで完結していると思うのですが、もう少し誠吾と冲有の活躍を見てみたい気もします。いいね
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全ての人が和服を着ていた最後の時代ネタバレ2024年12月23日このレビューはネタバレを含みます▼ 現代では、お宮参りや七五三祝いの際に、一部の人が子どもに着せたり母親も一緒に着てみたりする着物です。
また、成人式には、振り袖着物姿の二十歳の女性に混ざって、男性も紋付羽織袴で正装したりもします。
そして、夏祭りの時季には、若い人々の浴衣姿もそこかしこで見受けられたりもします。
後は、茶道のお茶会には、男女共に着物姿で客を迎えます。
ですが、お正月の初詣で着物姿の人を見掛けるのは稀です。
もう、日常で身の回りに着物を着ている人を見掛けることはほぼありません。
観て美しい着物姿ですが、日常生活に於いては動作や所作に工夫が必要となります。
また、素材や縫製によって左右されますが、着物を着る為に上から下まで揃えるとなると相当の費用が掛かります。
そういう訳で、この小説を古き良き時代と懐かしみながら読みました。
それぞれの土地に名前が残っている【紺屋町】他、着物に関する名称も色名も初めて耳にするものもあり大変興味を覚えました。
彩と右近の胸の空くような快挙をもっと読みたいのですが、まだ、暫く続くのでしょうか。
明治、大正、昭和から現代に至るまでの永い年月、貴重な日本文化の数々をを失ってしまった私達です。
西洋文化は西洋人の為の文化です。憧れはしても私達に馴染むのは矢張り些か無理があります。
城や城下町や武家屋敷等の多くがいとも簡単に打ち壊されました。一度失ったものを取り返すのは無理なのです。
私達日本人は五里霧中の中に未だにいるように思えてなりません。
着物文化が象徴する日本の問題を考えるいい切っ掛けになった今作でした。 -
もう一度だけおまえの絵を見せてくれないか2024年12月18日この小説の表題が『天才画家になりそこなった友へ』となっているので、読む前から既に、その言葉を発しただろう益田麻人に対して先入観を持ってしまいます。
作者や担当者が工夫して選んだ題だろうと思うのですが、何故、読者が主人公達を見誤ってしまうような題を付けるのかといささか不信感が募ってしまって、小説の世界に入り込めません。レビューを書くために三度目に読み始めて挫折してしまいました。
新人作家の方ですが、現役の作家の方々に匹敵するぐらい文章力が優れていると思いました。
今作は、イラストレーターの笠井あゆみ先生が担当してくださったので、多くの人が手に取って読んでくれたのだと思っています。
けれども、やはり表題の件が尾を引いて、心から物語を楽しめない人が多かったのだろうと推察されます。レビューしている人の人数からも見て取れます。
次回作には、一番相応しい題を付けるようにして欲しいと思っています。もっとみる▼ -
黄昏屋になることにした葉桜菊菜と平次の恋ネタバレ2024年12月15日このレビューはネタバレを含みます▼ 七代目銭形平次になるだろう平次は心根もよく気働きもできて有能です。
しかし、恋に関してはうぶなのか、頭に血が上ってしまって、大勢の人の前で求婚してしまいます。
ところが、それが功を即して、町の人々の注目の的になった菊菜の気持ちが自ずと変化をみせます。
平次は人を見る目があるので、菊菜がただ美しいばかりだけではなく、度胸と頭の回転の速さなども兼ね備えていることにも気付いているようです。
平次に手柄を立てさせるべく、綾乃や泥棒を副業にしている者たちに手助けを乞いますが、菊菜の心意気に惚れ込んだ者たちによって、ある事件が解決します。
ところが、それでは都合が良くない面々によって、平次の手柄はなかったことにされてしまいます。
そういう訳で、仕方がないと気を取り直して、前向きにやって往こうとする平次と菊菜です。
続編が読みたいのですが、たぶん出るでしょう。
気を長くして待っています。 -
ホームドラマとサスペンスドラマが交錯ネタバレ2024年12月15日このレビューはネタバレを含みます▼ 八千草毅(つよし)は、将来に対しての漠然とした予感があったのだと思われます。
努力を重ねて医者になり、治安の良くない街の外れの個人病院で日々危険な人物たちと渡り合ってきたので、真々田明美(あきよし)の身に忍び寄ってきている危険な気配に気付けたのでしょう。それで、咄嗟に彼と繋ぎを取ろうとして、話しかけて名刺を渡します。それは、一種の確信と賭けのような思いもあったのかもしれません。この美しい男の美しさを損ねてしまっている漠然とした危険な香りを取り除いて彼を助けてあげたいと切実に願ったのでしょう。その思いは真々田に届き、彼は毅の助けを求めて来てくれます。毅も自分の出来得る限りのことをして真々田を助けようとします。真々田は、毅と彼の子どもの空汰(くうた)との遣り取りと二人の廻りの暖かい空気を感じて、毅を信頼するに至ったのでしょう。そうでなければ、何を好き好んで男と性的な関係を結ぶでしょう。もう、この時には淡い恋に落ちていたのでしょうね。
それにしても、剛しいら先生の先見の明に驚かされます。2011年に先生はこの小説を書かれました。その後の世の中の流れを見ていると私達は暗澹たる思いに包まれるのです。先生は彼の世から此の世を見て悲しんでいるでしょう。
せめて、先生が残してくださった珠玉のような作品を読んで、世のため人の為に自分のできることで尽くしたいと思うのです。いいね
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江戸時代の暦、仕来り、風俗を知る愉しさ2024年11月23日主な登場人物で紹介されている柳橋芸者の菊弥と情人の北斗ですが、本文中にお互いの言葉以外には色気のある行動が何一つ出てこないのが清々しくて、そういう描写が苦手な人にとっては物語そのものを愉しめる小説です。
もう一人の七尾は芸者を引退して菊弥の内箱をしていますが、彼女についても行動に少し色気を感じるものの一切色っぽい話しが出てこないところがすっきりとして気持ちがいいです。
この小説を読んで様々なことを知りましたが、そのうちの一つが遊女の名についてです。遊女の名を源氏名というのは『源氏物語』から名を取っているからということを初めて知りました。また、芸者の名は『名無しの権兵衛』から名を取っているので、男名であることも初めて知りました。
また、江戸の地名はそのまま残っていて現在に引き継がれていることも知りました。
そう言う意味では、地方では土地の名が多く今に残されていないことが悲しいです。消えてしまった名がどれ程あるでしょう。
この小説には悪人は出てきません。また、誰も死にません。それが一番うれしいのです。
続編を心待ちにしながら、何度も読み返しましょうか。もっとみる▼いいね
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小山田あみ先生の挿絵が物語を美麗に彩る2024年11月4日フランの二人の姉は勉学に優れていましたが、其々の行いを見れば、人間性に大いに問題があることが分かります。将来の女王として生まれ付いた運命を鑑みれば、唯二人の想いだけを優先するなど決してしてはならないことだと判るはずなのに、それができていないのです。人の上に立つ人間に必要な素養を学んで来ていないことが大いに問題なのです。王妃アドニラがフランや王に語る言葉からするに、アドニラ自身は優れた考えを持っているのに、子ども達に情緒的な教育を施していないようです。けれども姉達の言い分としては、父王は恋愛結婚だったのに、何故私達は許婚を有無を言わさずに決められているのかということでしょうか。既に生まれた時から決められていたようです。自分の考えや気持ちを言えばよかったのにと思うばかりです。一方、フランは元々持った性質が優れていたのもありますが、ラフェルテが彼を主に育てていたようなので、彼女から大いに影響を受けたのでしょう。
フランがフェリウスと結ばれる話の流れを創りたかったのでしょうが、些か、フランの姉達を貶め過ぎでしょう。ボーイズラブ関連の本に出て来る女性は、大抵性格か行動に問題があるように描かれています。余りにもそれが行き過ぎると興覚めになります。心から物語を愉しめなくなってしまいます。小山田あみ先生のイラストが美しかったのがせめてもの慰めでした。何時ものように先生はいい仕事をなさっています。小山田あみ先生、物語を美しく盛り立ててくださって有難うございました。もっとみる▼ -
彬虎と興央、諱を知る絆。無垢なるもの。ネタバレ2024年11月3日このレビューはネタバレを含みます▼ 榊原彦十郎彬虎は、題字が意味する通りに、翼があるもの達の寵愛を受けてしまいます。けれども、彦十郎は彼らが望むものを差し出すことはできないのです。人として己の知力を尽くして生を全うしたいと願っているからです。
そして、翼があるもの達が過去に為し得なかったことを彦十郎がする可能性を十二分に持っているので、彼等は彦十郎から目が離せないのでしょう。
斎藤幸伸の忌み名は知りませんが、己に恥じない生き方ができなかったので、早晩、累と共に冥途にて罪を償うために相当の犠牲が必要になるでしょう。
幸伸と累の行いの故に気が晴れない今作でしたが、『なあ、めし屋』のお蔭で、詰まらぬ者達のことを考えて心を穢さずに、彼らを反面教師と考えていけばいいのだと分かりました。
次作では、虎と龍がどの様な活躍を見せてくれるのでしょうか。
暫くの間、何度か読み返しつつ物語を諳んじるほどに読み込んでしまうのだろうと思っています。いいね
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光春王子と庸介王子、秘密の花園から蜜月へネタバレ2024年10月16日このレビューはネタバレを含みます▼ この小説が発行された2019年に、表紙の絵に惹かれて読みましたが、当時は然程(さほど)印象に残らずに手放してしまいました。
今回、半額に値引きされていたのもあり、読み返してみました。内容については、ほぼ記憶に残っておらず、朧気(おぼろげ)に想い出しつつ読みました。
光春の仕草と言葉や九条の行動や言葉の全てが意味深長で、メモ書きに記(しる)しながら、光春の心の移ろう様を味わい深く読みました。
また、小学校に入学してから現在までの約18年もの長きにわたって、森宮光春を守り尊重してくれた愛すべき三銃士達、瓜連、天王寺、芦原は奇跡のような存在です。彼らにとって森宮は護り崇(あが)める貴い、不可侵な皇子のような存在なのでしょう。けれども、高校一年の一年間に森宮から目を離してしまった隙に、九条と森宮は出逢い、九条は森宮の心の奥深くに仕舞い込まれたのでした。
彼等三銃士のことを九条は三羽烏と呼びますが、成程言い得て妙だと思います。彼等が森宮を恋愛対象にしなかったのか、お互いに牽制していてできなかったのか、詳しくは語られていないので判らないのですが、森宮の心を捉えるには至らなかったので致し方ありません。九条の恋敵にはなり得ないのでしょう。
それにしても、口絵のレースのブラウスを着た姿に驚愕しました。笠井あゆみ先生でなければ描けない絵です。光春の変貌ぶりに驚きました。
また、黒猫のヨウが居てくれたから、光春は一人でも淋しくなかったのでしょう。確か光春が17歳の頃にやってきたので、その頃には光春の心に庸介は棲みついていたのでしょう。いいね
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物語の上では有り得ない表紙絵だが二者択一ネタバレ2024年10月15日このレビューはネタバレを含みます▼ 寝食を共にすれば、気心も知れてお互いに相手のことがよく解ります。
命にかかわる怪我を負った黒柄戌之丞芳篤(くろえもりのじょうよしあつ)が本能的に選んだ救い人は上尾国(かみおのくに)の「めし屋」を営む睦(むつ)でした。そして、睦は思った通りの気働きを見せてくれて、不知火丸(しらぬいまる)(戌之丞)の怪我は回復します。
隣国、布佐国(ふさのくに)の狛妖(はくよう)の里への旅路の途中で滝壺に落ちてしまった睦は生死の境を彷徨いますが、睦を失いたくないと思った戌之丞は睦に思いを告げます。お互いに両思いであることを知るのですが、その思い故に相手を失うことを恐れるようになります。
けれども、胆の据わった睦は要所要所で見事な働きを見せて、戌之丞達の城主奪還計画は首尾よく進み、城主を救うことができます。
ところが、荒廃してしまった城の中を立て直すのは容易ではなく、料理人として優れている睦は何かと頼りにされます。そういうわけで、二人が晴れて共に暮らすまでにはまだまだ月日が必要となるのです。いいね
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心を隠すかのように目まで掛かる前髪の人ネタバレ2024年10月12日このレビューはネタバレを含みます▼ 『因果応報』という言葉があります。
杉嶋静秋の心を弄(もてあそ)んだ大学講師の神崎友也は、妻子を不幸にし、自分自身を不幸にし、回り回って自分を愛してくれた恋人の三好桐吾をも不幸にしてしまいました。人にも自分にも誠実でなかった彼は全てを失うことで漸(ようや)く償いをすることができたのです。何という大きな代償を払うことになったのでしょう。けれども、最後に静秋から赦されることで彼は人としてこれから生きていくための大きな指標の様なものを得たのだと言えます。
そして、静秋が神崎を赦すまでに自分の過去を昇華できたのは、やはり久野輝之の存在と仕事で出逢った多くの依頼人や関係者との係わりが大きいのだと考えられます。
雇ってくれて見守り導いてくれる遺品整理会社の社長の本山がいなかったら、静秋はこれほどまでに早く自分の人生を取り戻すことができなかったでしょう。それは、久野についても言えます。
本山は奥深いことを折に触れて言ってくれます。『見えるものがすべてじゃない』『何が故人や生きている人にとっていいのか、時にはこっちが判断してやることもある』『泣かせるのが仕事』等。
それにしても、静秋が自分のことを「俺」という度に違和感を感じます。彼は「僕」を使う方が相応しいように感じます。男性が自分を指す一人称には、「私」、「僕」、「俺」がありますが、その人の人柄や個性によって使い分けてほしいと思っています。いいね
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『夏の野の繁みに咲ける姫百合の~ネタバレ2024年10月7日このレビューはネタバレを含みます▼ 知らえぬ恋は苦しきものぞ』という万葉集の下の句から題名を選ばれたようです。
『苦しき』は、『愛(かな)しき』と変化させています。
此の小説に真に相応しい題でしょう。
明治時代について多くを知らない私達ですが、文章を読みながら自分なりに当時の様子を思い描くことができます。
由井智草(ちぐさ)は音だけを聞けば女性の名のようですが、野の花の様な清純な美しさを秘めている彼に似つかわしい名です。
対して、鮫島輝直は耀くばかりに明朗活発で率直な彼を佳く表した名です。
鮫島は初めて出逢った時から智草に好感を持ったようです。そして、会う度にその思いは深まって往ったのだと思われます。
智草も同様だったのでしょう。
出来れば、二人の間の秘め事は秘めたままにして欲しかったと思っています。
それらを省くことで余った頁数は別の話題を差し込んでも構わないのです。
何故なら、一度目に読んだ時は全ての性的描写部分を読み飛ばしてしまったからです。
二度目には全部読みましたが、無くても二人の間の親密性と絆は少しも変わらないからです。
それらは、本来ならば知られざる部分です。興味本位で知る必要性を全くと言っていい程感じません。いいね
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笠井あゆみ先生の描く美麗な鳳星羅と秦龍意ネタバレ2024年10月4日このレビューはネタバレを含みます▼ 一度目に読んだときは、大詰めに入る処から先が気になるので読み飛ばして読了しました。
二度目には、名刺大の紙に登場人物の姓名と役職名などを丁寧な字で書きつつゆっくりと一言一句読み落とさないように内容を確りと把握しながら読み進めました。
それで、一度目には色々と誤解をしたまま読んでしまっていることに気付くことができました。
これは歴史小説の類に入れてもいいぐらいです。勧善懲悪が描かれているので、読後感が爽やかです。いささか美男美女が溢れすぎている感が無きにしも非ずですが、外見も内面も美しい人を見るのは気持ちが良いものです。
恋愛小説めいた部分は最後に本の少しでしたが、主人公達の未来を予感させる終わり方が何とも楽しいです。
もっと多くの人に読んで貰いたい小説です。いいね
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『英芽』と『拾』。名は体を表すネタバレ2024年10月3日このレビューはネタバレを含みます▼ 《耀くばかりに美しい花が芽吹く》という意味を込めた名は『英芽』。
《拾い集める、取り入れる》という意味を込めた名は『拾(ひろい)』。
英芽は、桜音楽堂で歌いたいと望んで、七歳から十五歳までの九年間、ピアノ練習とドイツ語の習得に励みました。けれども、その思いは『桜音楽堂』という場所で歌うことで終結を迎えるものでした。十七歳から二十歳までの限られた時間の中で花開き、花の盛りのまま終わるという、余りにも悲しい望みでした。
拾は、頭脳明晰で器用な質な為に、全てのことが人よりも難なくこなせてしまうために、何事にも悦びを見出せない自分に気が付いていました。
英芽と拾は、商業専門学校の寮生として、運命のように同室になり四年間を共に過ごすことになります。
合唱部員として学友と共に切磋琢磨し合うことで、卒業後の進路について満足のいく判断をすることになります。
英芽と拾は、己に対しても人に対しても誠実であった為に、得難い友と愛する人を見つけることができたのです。いいね
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時代物と長髪が美麗な物語2024年10月2日以前、とあるところで、乙吉先生の作品を拝見してから、気に入って何度も読み返していました。
今回、偶然に作品群を見つけましたので、手頃なものを選び出して読んでみました。
話の筋自体は込み入ったものではありませんが、丁寧に描かれた主人公たちが美しいです。
短時間で読了できるので、息抜きに読むのにいいでしょう。
長髪で着物を着た男性が主人公の作品が他にもあるようなので探して見ます。もっとみる▼いいね
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お菓子の国の恋人未満達の表紙絵ネタバレ2024年9月18日このレビューはネタバレを含みます▼ 今作では、眼光鋭い汐月と美人な田之上の容貌を知ることができました。
しかし、池谷先生の見た目が思っていたよりもふっくらし過ぎていたので、次回はもう少し細身に描いてあげて欲しいと思いました。確か、ぽっちゃり体形だったはずですが、これは、そんな言葉で表されない見目です。彼の人柄の良さは確りと感じ取れるのですが、これでは、有能そうに見えません。よろしくお願いします。
そして、『雅叙園東京』に宿泊することはできなくても、「百段階段」なら何時か見てみたいものです。
表紙の絵の様な『お菓子の家』がどこかにあれば楽しそうです。
音喜多は毎回久嶋の窮地や望むところに絶妙の時刻に往き合わせます。愛の為せる技なのでしょう。音喜多の一日は久嶋を中心に廻っています。もう、久嶋を知らなかった頃の自分がどのような毎日を送っていたかを思いだすことさえできないでしょう。心の中に何時も想う人がいる幸せを存分に味わっている音喜多です。 -
三味線を弾いている人に手出しは無用な表紙2024年9月11日BL小説は、表紙絵に肌を出した絵が多いのですが、この小説の内容に沿っているとは言い難い表紙絵です。
浅井祐司は加々美達央の弾く津軽三味線に惚れ込んでいますし、達央自身にも惚れています。そして、尊敬してさえいるのです。
だからこそ、絶対に三味線を弾いている達央には性的な意味でふれることはあり得ないのです。
夜光花先生も担当者も何故そのことに気付かないのでしょうか?イラストレーターのDUO BURAND先生も、内容を確認したらこの様な見当違いな表紙絵を選択しなかったはずです。正しく着物と袴を着付けた加々美達央を描き、その加々美達央を見守るような浅井祐司を描いたでしょう。
また、BL小説の主人公は「俺」を一人称に使うことが多いのですが、この小説の主人公二人も「俺」を使っています。終始違和感を感じながら読み進めました。達夫は「僕」を使う人物でしょう。また、浅井も「私」を公私共に使う人物でしょう。細かいようですが、そういう設定の違和感が小説全体を陳腐なものにしてしまうのです。
津軽三味線の世界を興味深く読みましたが、せっかく設定された世界観に入り込めないまま読み終わりました。
読者の目線に立って完成した小説にほころびがないかをもう一度確かめて貰いたかったと思っています。もっとみる▼いいね
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『悲しき魔術師と愛しい人狼』ネタバレ2024年8月24日このレビューはネタバレを含みます▼ 琥珀色の魔眼を持つエルセ・イスベルトは、其の比類なき美しさ故に魔術師としての才よりも社交を望まれていますが、エルセ自身はつつがなく魔術師としての道を送りたいと思っていました。
しかし、エルセの年の離れた兄ユリス・レイウ”ィルは、絶対的な支配者の如くエルセの全ての考えと行動を自らの思い通りにしようとします。尤も、ユリスは両親から十七歳の歳迄酷い扱いを受けていたので、エルセを痛みと恐怖で支配しようとするまでに心が捻じれてしまったのでしょう。
ユリスも大層気の毒な人だったのですが、話が進んでいくにつれ、体調不良とか別用とか瞳の奥に昏い火が燻っているとか魔術師が数人行方不明とか彼に対する疑惑を読みながら覚えてしまうのです。
彼の暗さを忘れさせてくれる様に、エルセとラニの何気ない日常と心のふれあいに限りなく愛おしさを感じます。
エルセは誰かを自分自身よりも深く愛したかったのです。その為なら自分がこの世から存在しなくなっていいと思うほどに。
そして、其の想い故にエルセは魔獣などという存在に落ちてしまうことがなかったのでしょう。
至上の愛というものをエルセの中に見出して、ユリスはエルセの幸せを願って、無に還ることを選んだのだと思っています。散々酷いことをしてきたのに、エルセが自分を赦してくれていることを、変わらずに愛してくれていることを感じたのでしょう。
高尚な恋愛小説として読んでみたいので、できればラブシーンはキスシーン位で、後は二人の秘密にしておいてくれると読後感が佳くなります。 -
梨とりこ先生のイラスト+着物=至福ネタバレ2024年8月23日このレビューはネタバレを含みます▼ 梨とりこ先生のイラストの小説は殆ど読んでいます。ところが、先生は最近は余り描かれていないようなので、次の小説が出るまで、此の小説を読むのを我慢していました。けれども、何時まで待っても出版されないので、諦めて読むことにしました。
主人公の日比野進也は勤務先の会社で上司に執拗に酷い扱いを受けていました。彼は自分の出来が悪いから、上司がそう言う態度を取るのだと思っていました。根が素直なので、相手が悪いとは思っていなくて、段々と追い込まれて精神的にも身体的にも限界にきていました。
ある時、今居る処から本能的に離れようと、偶々一度も往ったことがない町を歩きます。其の時、進也の精魂尽き果てた様子を一瞬で見て取った講談師の伝井心葉に呼び込まれて、伝井青嵐の『赤穂義士伝外伝』を聴いて、自分の感情が決壊して漸く泣くことができます。其れからは、進也の素直さと人柄故に多くの人に助けられて、やっと辛い状況から抜け出ることができます。
卵から孵った雛鳥が初めて見たものを親だと思う様に、進也は青嵐を慕い追い続けます。一度号泣してからは、感情のたがが外れて感受性が豊かになったのか、青嵐限定で直ぐに涙を見せる進也です。こんなにも懐かれて、進也が気になってしょうがなくなってしまう青嵐。そんな訳でめでたく恋人関係になります。
そして、進也はあの一番辛い時に自分を救ってくれた講談界を兄弟子である青嵐や多くの講談師と共に盛り立てて往こうと決意するのでした。師匠が付けてくれた伝井青葉という名は進也に最も相応しい名だと思えるのです。いいね
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猫龍さんの表紙絵は素的でしたネタバレ2024年7月15日このレビューはネタバレを含みます▼ 私は、韓国ドラマを一度も見たことがありません。試し読みをして、面白そうだと思って読み始めましたが、主人公町屋貴洋の幼少期の年齢の食い違いや文章の接続詞に違和感を感じました。何より、ユン・ジュンギ(尹仲基)に対して、町屋貴洋が「おまえ」と終始呼ぶのが不快でした。十二歳も年上の恋しい人であるはずのユン・ジュンギには「貴方」と呼ぶのが相応しいのに、何故「おまえ」になるのでしょう。それは、彼をボディーガードとして、自分よりも身分が下だと思っているからでしょう。決して親しみを込めた呼称ではありません。父親と仕事で飛行機のビジネスクラスを利用していたように、自分が上流階級であるという様な思い込みがあるのかもしれません。在日韓国人である自分達一族も彼と同じ韓国人なのに、もしかして、自分の出自を知らないのでしょうか?韓国語を話せるように幼い頃から教育されていないというのも不思議です。一度目は読み飛ばしてしまい、今二度目をじっくりと読み始めましたが、もう、読む気力が無くなりました。ユン・ジュンギが発砲された町屋貴洋を庇って二発もの弾丸をその身に受けたのは、自分が勝手な行動をした所為なのに、色々とやらかす甘ったれの人物です。未だ、二十二歳で人間的にも未熟なのに、仕事の面で認められているという不思議な設定です。主要人物の人物設定と話の流れをもう一度練り直した方が良かったと思われます。誰もレビューをしていないのは、それなりの理由があるというのが今回よくわかりました。
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小山田あみ先生の表紙絵が夏に相応しいネタバレ2024年6月24日このレビューはネタバレを含みます▼
『ベルベットクリスマス』では、田辺が大輔の為にもみの木を買って、皐月に素的なオーナメントを送って貰って飾りつけをし、ビーフシチューを作り、クリスマスケーキを買い、プレゼントを用意して、大輔を自宅に迎えます。大輔の仕事仲間の『宮緒』さんがとんでもないプレゼントを押し付けてきます。其れが『ベルベット』の由来になりました。
『クルージングナイト』では、二人の関係性を【愛と呼ぶには軽く、恋と呼ぶには濡れた関係】と言っているのが言い得て妙です。また、大輔が超絶に恰好いい田辺を見て、『あんな奴と誰が付き合うんだ、すげぇな、俺が』と思っているのも面白いです。
『ビーチサイド・ベッドサイド』では、友人夫婦に誘われて、合コンと知らずに海に出掛けた大輔は、相手の女の子とかき氷を買いに行った先で、田辺を見つけます。偶然にしても、まさかの出会いに、大輔は大慌てで仕事を理由に直ぐに帰ることにして、田辺に連絡を取ります。二人で行ったリゾートホテルで、大輔は田辺に結婚式を挙げようと言うのです。いいね
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友達のいない有視と春秋が得難い友を得るネタバレ2024年6月17日このレビューはネタバレを含みます▼
登場人物達が生き生きと描かれていたので、貪るようにして一巻と二巻を読みました。主要人物のイラストに自分なりに人物像を肉付けして思い描いて愉しみました。身分制度があった平安時代と陰陽師を念頭に置いてじっくりと読んでみました。
有視の一度見て声を聞いたことがある人のことを覚えているという特技や弓術に優れていることや裁縫が得意であることなどは様々な場面において役に立っています。また、春秋も未だ、陰陽生ではあるものの陰陽術に優れていて、此れも生きていくうえで可成役に立っています。
有視は未だ、官位がなく働いてはいませんでしたが、此れだけの重要な働きをする者を放っておく手はないので、直ぐにも宮仕えをするでしょう。陰陽師になった春秋と共に多くの功績を残していくのだろうと思われます。
今迄に友どころか恋人と言える存在もいなかった二人ですが、終生の友として生涯を共にするのだろうと思います。生まれる前から縁があった二人が十八年の時を経て漸く出逢って離れがたい体験を共にしました。生死が危ぶまれるほどの出来事を何度も乗り越えて離れがたい存在であることをお互いに感じます。
もう、続編は無いと思いますが、何時か書いて下さらないでしょうか。その後の二人を見てみたい気もします。いいね
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試し読みとレビューに釣られたものの2024年6月16日『王と妃』、『桃殿の姫~』、『かんなり草紙』、『ひいらぎ草紙』などを読んで、期待して此の本を読んでみました。
出だしは面白かったものの、太子妃候補をもてなす宴の開催が決まった辺りから、其れ迄おくびにも出していなかった周銀花の太子殿下陸叡季に対する好意が突然のように現れてきて驚きました。銀花の叡季に対する態度から薄々察してはいたものの、急に自覚をして胸が痛んで苦しくなるというのが、余りにも話の筋を無理やりに持って往こうとしているようで白けてしまいました。
銀花は、幼少期より大人の気を引こうとして暴れていたり、自棄に成ったり、愛嬌が無かったりと大いに性格に難がある娘でした。其れが年頃になったからと言って性格が佳い娘になるとは思えませんし、何故叡季が銀花の何処を気に入って好きになるのかがわかりません。実際に、初めて会った叡委の向こう脛を思い切り蹴っています。一番痛い処を痛めつけるという性根の悪さを思い切り露呈しています。銀花に歌うことを教えてくれた乳母が少しは性格を矯正する役目を担ってくれたかもしれませんが、無理矢理に素的な娘に創り上げた感じがしています。イラストの絵は余り美しい娘には見えませんが、恐らく見目は佳い娘なのでしょう。
陸叡季が、「俺」という一人称で話すのも、太子という立場にあるものとしては異様に感じます。主人公達の人物像が不明瞭で、物語全体をつまらないものにしています。
レビューを書くために、一度目に読み飛ばしてしまった箇所を落ち着いて読もうとしましたが、物語自体に興味を失ってしまったので、途中で読むのを止めました。物語を書き上げた後、一度読者目線で読み込んで貰いたいと思っています。作者は自作ですから思い入れがあるかもしれませんが、果たして、価格に見合う価値があるかどうかを再確認して貰いたいものです。もっとみる▼いいね
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羅刹に「愛している」と言われ号泣する櫂ネタバレ2024年5月24日このレビューはネタバレを含みます▼ 氷室櫂は埼玉の山の中に住んでいたので、中学生の頃は片道一時間三十分の徒歩通学と三十分のバス通学をしていました。小学校の六年間と高校生の三年間も同様の時間を掛けて通学していた筈です。それなのに、高校を卒業してからの数年間ですっかり運動不足になってしまったようで、『ダブルデート』では、自分から吉野の山登りを持ち掛けたのに同行の三人に遅れること甚だしく、皆に呆れられています。
『あの日の君』では、もう此の世に存在しない土井伊織が中学生で登場してきます。彼はスマートフォンを持っていなくて、公衆電話から母親に電話をしています。彼の家庭事情が推察される場面です。櫂は特定の子どもと仲良くしてはいけない事情がありました。何故なら、其の子どもが物の怪に襲われてしまうからです。そして、実際に、此の時から数年後に土井伊織は物の怪に憑依されてしまうことになりました。櫂が伊織に好意を持ったこと、また、伊織も櫂に好意を持って近づきたいと願ったことによって其れは決定的になってしまいました。読んでいる時点で存在しない人のことを読むのは哀しいです。尤も、小説ですから総ての登場人物も物語も存在していないのですが、私達には実在する人達として感じられるのです。
『最高の恋人は鬼でした』では、櫂は羅刹と共に、以前よく通った新宿二丁目のゲイバーを訪れます。麗子ママ達に恋人の羅刹を紹介して自慢するためです。人間の恰好をした羅刹はいい漢なので、すっかり皆の人気者になって、人間社会に溶け込んで櫂を焦らします。いいね
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笠井絵師の麗人世界の魅力には抗えない2024年5月17日主人公や他の主要登場人物達が話す言葉遣いと其々が自分を表わす一人称はとても重要なものです。其の人物の性格や思考や立場を表すものだからです。その点で言えば、元神官の静宇が「俺」を遣い、言葉遣いが丁寧でないのは誤りだと思われます。何故なら、彼は天音の幼少期より教育係として天音を気高くたおやかにと育ててきたはずだからです。静宇は「私」を遣わなければ余りにも不自然です。読み進めるにしたがって、私達が静宇に抱く人物像が見た目の美しさだけで中身の伴わない人になってしまうからです。
其れと同じように、蒼月についても「俺」ではなく「私」が相応しいと考えられます。他にも、夜華などには「私」で話す設定にして欲しかったと思ってます。そして、天音は「俺」ではなく、「私」を遣って気高く話して欲しいのです。
以前から男色小説の主人公達は何故か「俺」を遣う設定になっていることが多かったのが気になっていました。其れで、人物像が丁寧に描かれているものを選んで読んできました。
此の小説は話の筋は興味深いものですが、個々の人物像がちぐはぐな処が不自然に感じられるのです。書き上げた後でもう一度違和感を感じる処がないかと、読者目線で読み直して貰いたかったと思っています。
続編で出てきた古き神、『鳳凰』を、この小説では『鳳』とだけ記しています。又は、『雷鳳』という良くない存在としています。
月龍国も陽華国も『龍』だけを神として認めていますし、周辺国も同様なのでしょうか。
戦いによって存続してきた男系社会と男系国の歪さに気が付いていない世界は、物語の中だけではなく現実にも存在しています。もっとみる▼いいね
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宵マチ先生の表紙絵と扉絵に敬意を評して2024年4月17日試し読みをして、梨生と心怡の心地よい絡みを読めると思って読み進めましたが、さにあらず、胸が悪くなるような話が続いて読後感が良くありません。
梨生と心怡と智頊等主要人物や陽や泉氏などの廻りの人物は魅力ある設定になっていますが、こうも悪人ばかりが登場するようでは、梨生と心怡が三年間の善行を積むのは無理の様にさえ思われます。話を練り直して欲しかったと思うばかりです。
宵マチ先生のイラストに相応しい話を書いて欲しいものです。若し、続編があるのなら、支払ったお金と費やした時間を悔やまないような話にして貰いたいものです。しかし、私は、此れに懲りてしまったので、二度と此の作者の本は読まないでしょうね。もっとみる▼いいね
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雨の國兎の冬荷と雨蓮の恋話2024年4月4日イランイラン文庫のB+LABELの小説を初めて読みました。何冊かある中で一番イラストが綺麗なので、試し読みをして読んでみました。
何故だか、ボーイズラブ関連の本は漫画も小説も性的な描写が詳しく書かれています。若し、其の部分を省いてしまうとページ数が可成削減されてしまう程に、詳しく念入りに書かれています。何故なのでしょう。其の部分を二人だけの秘め事にして飛ばして次の場面に行くことはできないのでしょうか。あまりにも微に入り細に入り書かれているとうんざりして読み飛ばすことさえあるのです。知りたくもないものを読まされる方の身にもなってほしいものです。ですから、私は、漫画は読みません。主に小説を読みます。
此の小説には、悪人は出てきますが、後には報いを受けるので読後感が爽快です。
雨蓮の働く華宵楼の人も良い人ばかりです。冬荷も文武に優れているので、見事な世渡りの首尾を見せてくれます。余りにも上手く話が進みすぎる感もありますが、甘い話は例え作り話だとしても心の燈火のようなものと考えて愉しむのが佳いでしょう。もっとみる▼いいね
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表紙の王の髪は一巻の茜色から二巻真朱色に2024年3月23日気に入った小説は何度か読み返します。此の小説については、官吏の役職名を覚えられないので、三回目に読む際に文庫本大のメモ書きに、役職名と地名と貴族名に其々読み仮名を付けて読み進めました。解らないまま読み進めるのは物忘れをしたようで落ち着かないのです。
小説の世界観が漏れなく構築されていて読み進めるのが愉しいです。人物設定も無理なく辻褄が合うので、読み進めながら小説の情景が心地よく浮かんできます。
二千二十三年十月に第四巻が発行されましたが、話は未だ半ば程までしか進んでいないので、第七巻位迄は続くように思われます。今迄の発行の間隔からすると、二千二十四年四月には第五巻が発行されると予想しています。待ち遠しいです。其れまでに、もう二回程読み直すかもしれません。
紙本で読むのが好きなので、此の小説は古書店で購入しました。
深山くのえ先生の文章が読みやすくて、内容が頭に綺麗に入ってきます。先生の文章力故に長い小説も苦にならずに読み進められます。
試し読みをして面白そうだと感じたら、取り敢えず第一巻を読んでみてください。次が読みたくなったら第二巻を。続き物はこうして嵌っていくのです。楽しからずや、読書。
それにしても、茜色や真朱色の長髪の男性が実際に居たら、見惚れてしまうでしょう。美しい漢だけに似合う色でしょうから。想像しただけで、鳥肌が立ちそうです。もっとみる▼ -
櫻散る中に佇む男性の表紙に惹かれて2024年3月22日此の小説の作者は、ラジオドラマやゲームシナリオやマンガ原案を書いていたそうです。ゲームや漫画の場合は映像や漫画に起こす前の詳しい筋や場面描写が必要なので、小説単体の作品と然したる違いはないと考えられます。ラジオドラマに関しても、聴く人が理解できるように、場面の情景や登場人物の話し言葉にかなりの説明と工夫は必要ですが、此のどれもが、小説と完全に一線を画す事柄があります。其れは、放送時間や掲載ページ数の設定には限りがあるということです。小説も作者自身には規定のページ数が要求されていますが、読者には制限時間がありません。
此の小説では、各章毎にまるでテレビのドラマを見ているように、登場人物が行動して問題が解決して其々一時間以内に患者の問題点が解決するように感じられるのです。
主人公の長閑春彦や看護師の友近蘭子、久留麻蓮二は未だいいにしても、高校生が活躍し過ぎて白けました。
読み始めて直ぐに、読みにくくて詰まらないと思って、一章だけを読んで一先ず読むのを止めました。気を取り直して、読み続けて最後まで読みましたが、残りの二冊はもう読むつもりはありません。
作者は自分が書いたものなので、自信もあるでしょうし面白いと考えているでしょう。けれども、書き終えた後で一度読者の立場になって読み始めて欲しいと思います。
表紙の絵の構図と音楽という点に釣られましたが、若し、試し読みがあったなら絶対に買わなかったと思うので、此れからは、試し読みできない本は買わないことにしました。
最後に此れは重要なことなので付け加えておきます。何度も懲りずに浮気を繰り返す高校生の田中を重要な役どころ持ってきてはいけません。顔が良くても勉強ができても、人として誠実でない者は付き合うのに値しません。好きだからという気持ちは何時かは醒めます。配役の誤りです。いい加減な役どころを作ってしまってはいけないのです。浮気性の人間が更生することはないので、後々酷い目に遭うのが目に見えています。準主人公をそんな設定にしてはいけないのです。もっとみる▼いいね
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魔除けになり果実は甘い桃、病気虫対策必要ネタバレ2024年3月16日このレビューはネタバレを含みます▼ 私達は桃の木を身近に見ることはありません。庭木に植えられているのを見ることはほぼないと言っていいでしょう。現代では、果樹園に植えられているか、花木として栽培されているのが主でしょう。ですから、梅や桜のように思い描くことは無理かもしれません。
此の小説の舞台は平安時代です。家屋敷や町並みや人々の暮らしについては想像もつかないので、書かれていることから自分なりに情景を思い巡らすしかありません。
主人公の真珠は右大臣の孫娘なので、裕福で屋敷には大勢の傍仕えの者がいます。真珠は母親と叔父等身近な人々が傑物だったので、其の影響もありましたが、元々好奇心が旺盛で胆力のある娘だったのでしょう。其のお蔭で、将来の夫となる瑠璃丸に出会い縁を結ぶことができました。
物の怪や鬼などというものを今の世では感じることができないほど雑多で目まぐるしく、真の闇の暗さや恐怖についても無縁な私達です。
「鬼よりも怖いのは人間」という言葉が本文中に出てきますが、日々の出来事を耳にするにつけ、現代でも其れは変わっていないと言えるでしょう。
そして、物語の中にも悪人は出てきますが、勧善懲悪な場面もあり、愉しんで読み進めることができます。 -
〖人形〗〖死神〗。思いもよらぬ話の筋ネタバレ2024年3月4日このレビューはネタバレを含みます▼ 『一寸の虫にも五分の魂』という言葉がある。総ての生きとし生けるものに魂が、命が宿っていると、私達は日本人は考えてきた。
そして、命を失うということは、其の生体から魂が抜け出ると考えられた。
生きているものは生きるための活力を水や食べ物から得る。しかし、死んだ瞬間から其の活力を得られなくなった生き物は時と共に朽ち果てるのが道理だ。
此の物語では一度死んだ人間が別の人間の魂を奪って生き返る設定になっている。生き返るまでの永い間、生前のような見た目を保つための仕組みが今一つ解らない。そして、生き返ったのちも生前の記憶を残しているという其の盛大な仕組みも尚更解らない。此れについては、腑に落ちないままで読み進めないといけないのだろう。
主人公の人形修理工房【浮世堂】の主、城戸利市は性根が真っすぐで善良な人間である。悲惨な目に遭っても苦境に陥っても何時も最善な道を選んで生きていくことができる、魂の綺麗な人間なのだろう。友人の僧、愚浄は其れを見抜いているから、彼の苦境に駆け付けることができるのだと考えられる。【骸屋】のぬいも邪悪な家業には相応しくない人間である。そして、利市に四度助けられる。其のうちの三度は命だ。因縁の相手に助けられた命は自分からは決して捨ててはいけないことになった。
二話目に出てくる蘇りし者、伊武冬馬は導かれるようにして、愚浄や城戸利市に出会う。また、ぬいにも会う。偶然ではなく必然のようにして、最善の解決法を選ぶようにして物事が進んで往く。此れは、城戸利市の強い意思による功績が大きいと考えられる。
物語の最後に、伊武冬馬は大好きだった友人の後悔と哀しみを拭い去ることができ、彼をあの世へと見送ることになる。
色々と疑問を持ちながら読んだ此の物語であったが、最後は涙なしでは読めなかった。けれども、荒唐無稽で血生臭い物語は余り好みではない。愚浄が緩衝材のような役目を果たしたし、城戸利市の人間味に惹かれたので、読後感がそれ程悪くないのは此の二人故だと思う。いいね
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竜は翼が無くても空を翔、獅子は地を駈けるネタバレ2024年1月19日このレビューはネタバレを含みます▼ 小山田あみ先生のイラストと試し読みに惹かれて読んでみました。
表紙のイザーク・カーレーンもミフル・スーレーンも美しい男たちには見えないような描かれ方ですが、其々が纏う宰相の衣装が美麗なのに目を奪われます。思わず拡大してじっくりと眺めてしまいました。
王国の中で親が相対する地位にあったイザークとミフルですが、知らず知らずのうちに幼少期に行動を共にし、離れがたく思うほどに心が結び付いた二人は、禍の目を摘みたい王の意志によって離されてしまいます。其々が八歳と六歳で離ればなれとなり、二十八歳と二十六歳で再び身近に暮らせるようになるまで、二十年もの長きに亘って陰になり日向になりミフルの動向を見守ってきたイザークでした。
イザークもミフルも忍耐とたゆまぬ鍛錬によって精神と肉体を極限まで極めた漢たちなのでしょう。
王家の策略により追放の憂き目にあったことを深く恨んだミフルの母の侍女によって、魔獣を戒めた獄の鍵が開けられ、多くの魔獣との闘いの最中に過去の重大な事実が顕わになってきます。容貌までもが酷似した嘗ての勇者たちの強い結びつきに、ミフルは此の終わりなき魔獣戦を制する糸口を見出します。首尾よく全てを丸く収めたミフルは多くの人々に称賛され愛される霊獣使になることができました。
イザーク程の漢に長年愛されてきたことに今更ながら気付いて、自分の中にも彼を愛おしく想う心が連綿と続いていたことを知るミフルでした。
一般小説に『天下四国』という七冊に及ぶ壮大な物語があるのですが、其の主人公たちは結ばれない運命だったので、此方の小説では幸せな結末なのが何とも言えず嬉しいのです。興味が有れば読んでみてください。中村ふみ氏の講談社文庫の本です。 -
『慕情』『追憶』と標題を付けたい表紙絵ネタバレ2024年1月18日このレビューはネタバレを含みます▼ 表紙絵では、伊崎律と水嶋聖吾の廻りを白薔薇や黄薔薇や紅茶薔薇が彩っています。二人を花で表現すると薔薇になるのでしょう。水嶋は右手で律の手を取り口づけしていますが、左手に深紅の薔薇を後ろ手に持っています。彼は直ぐにでも律に薔薇を手渡して想いを告げたいのに出来ないでいるのです。飽くまでも律の両親に受けた恩を返しているという立場を崩そうとしません。其の為、律の水嶋に対する思慕は行き場を無くし身の置き所が無くなってしまいます。律の表情や態度を読めば、律の水嶋に対する恋情は手に取る様に判るのに、何故か敏い筈の水嶋は気付かないのです。水嶋は律を雛鳥のように囲い込んで周囲の悪から守りたいのでしょう。律は見た目よりは余程たくましいのに、水嶋の眼には未だ庇って護ってあげなければならないか弱き少年に見えているのです。此れでは、律が水嶋の手から逃げ出したくなるのも無理はありません。律は感受性に富んでいるのでいるので、直ぐに涙を見せますが、水嶋限定の涙だということに水嶋は考えが及びません。見ているほうがじれったくなってきます。現代の話ではないので、此れ位ゆっくりと話が進んで往くのもいいのかもしれません。人物紹介の水嶋と律を思い描きながら読み進めました。此の小説は挿絵が無い方が自分の想像力を駆使して読めるのでいいと感じました。主人公二人の貌が分かればいいのです。他の人達の容貌を知ることは、却って心情を害して読書の妨げにすらなります。
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青薔薇の王子は若き家具職人の愛で佳き人にネタバレ2024年1月17日このレビューはネタバレを含みます▼ 『官能童話シリーズ』はどの作品も簡潔で主題は明瞭です。私たちが原作を読んで疑問に思ったり合点がいかないところを小気味よく裏切って引っ繰り返してくれます。此のような話の展開もあり得るのだと納得します。
今作の『おやゆび王子の初恋』についても其れは言えます。
主人公のミルフェ・ブラネットは孤独ですが、善良で機転が利いて謙虚です。魔法使いの危機に咄嗟に対応して自らの危険も顧みず野犬に自分の食事を与えて彼女を助けます。野犬にも知性と心がありますから、心優しいミルフェの手から食べ物だけを咥えて取ります。決して、彼の手を咬もうとはしないのです。
ミルフェは魔法使いからお礼に妖精を見る目と植物の種を貰います。願いを叶えてくれるというお約束ごとにも彼はすぐには貰おうとはしません。人助けは当たり前と思っているのでしょう。そんな彼だから魔法使いは問題な王子を託してみることにしたのでしょう。そして、彼女の願い通りにミルフェによって王子は本来の善良な姿を取り戻すことができます。自分の為に泣いてくれる人の為に清く正しく美しく生きようと決意した王子は彼と共に生きていく未来を掴んだのでした。めでたしめでたし。 -
紙面を覆いつくすような翼竜を観てみたいネタバレ2023年12月29日このレビューはネタバレを含みます▼ 劉華国の皇帝紫冰は皇太子の頃、自称に「僕」を使っていました。其の様な謙虚で聡明な者は皇帝になれば「私」を使うと考えられるのに、何故か粗野な「俺」を使うような男に成人したような描き方です。そして、一番身近にいる珠月を「お前」呼ばわりさせています。偶に「珠月」と名前を呼ぶものの、大抵は目下の者に対する「お前」を使う様な設定です。紫冰は長年に亘って珠月を慈しんでいる様なので、恐らくは「其方(そなた)」と敬語で珠月を呼ぶもののと推察されるのに、親しみを込めて呼んでいるにせよ「お前」呼ばわりは珠月にとっても、其れを聞かされる周りの者にとっても些か不愉快です。
紫冰の姉の琳玉は、珠月を丁寧に名前で「珠月」と呼んでいますし、康さえも「珠月」と名前を呼んでいるのに、紫冰の成人してからの人物設定が不可解でなりません。
お互いに好意を抱いている者同士が、お互いの気持ちに気が付かないというのは有り得ないことです。其々が聡明で人の機微に敏い者達なのに、十四年もの永い年月がお互いの気持ちを知るのに掛かるというに至っては、物語の設定の誤りというしかありません。
琳玉の夫の梁岐は、以前にも珠月の抹殺を企てたので、彼が妻の他にも数人の妾を抱えたり怪しい動きをしているのは察せられる筈なのに、何故かまた、珠月が誘い出されて危うくなるまで、誰も気が付かないというお粗末さです。
珠月の危機に颯爽と紫冰が駆け付ける見せ場を創りたかったのでしょうが、何度も危険な目に合う珠月が可哀想です。
珠月の人物設定は一応納得できますが、紫冰に魅力が感じられません。笠井あゆみ先生のイラストが無ければ、最後まで読み進めるのは無理だったでしょう。
笠井あゆみ先生のイラストに相応しい魅力のある中華国物語を読みたかったと思うばかりです。いいね
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丹地陽子先生の表紙を見て期待していたのに2023年12月20日『ダブルファーザーズ』が『トリプルファーザーズ』になって、あれよあれよという間にテレビドラマのような流れになりました。
登場人物がみんないい人ばかりで、少し揉め事が起きたのは中学生たちだけで、其処が唯一人間らしい処でした。役者が演じているような登場人物たちには驚かされました。第三の父親の現在の妻もとても物分かりが良い人でした。しかし、第三の父親はいい加減でご都合主義な人間なのに、何故皆其れに気付かないのか不思議としか言いようがありません。
早坂暁也と秋月裕二は十五年も一緒に暮らしていたのに喧嘩ばかりしているし、主人公の秋月沙織の人物設定にも疑問が残ります。
絵空事のような、生身の人間を少しも感じることができない、白々し過ぎる話です。
此れは、小説であって、他の何ものでもないので、人間というものを内面の暗い醜い部分も含めて描き出して欲しかったと思っています。そうなると、一冊に纏めるのは難しいとは思いますが、其れも含めて人間模様を描くのが小説家だと考えます。
今年読んだ小説の中で一番がっかりさせられた本でした。もっとみる▼いいね
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『呪禁師は~』が卓越していたので、期待2023年12月17日プロローグから(こわがることをおぼえた男)までは興味を持って読みました。しかし、(雪子姫は三度死ぬ)から事件の後処理に納得がいかなくなり、(浅草ハーメルン)も後味が悪い思いをし、(青髭の誤算)に至っては青髭と称される男の愚かさで一体何人の人が不幸になったのかと話の筋を考えた作者の意図がまるで判らなくなりました。
(いばら姫の秘密)とエピローグで少し気分が持ち直しましたが、もう二度と読みたくない本の一冊になってしまったことがとても残念です。話の内容に奇異を衒い(てらい)過ぎると奇妙奇天烈なものが出来上がるということを作者も担当者も分かってほしいものです。支払ったお金と時間を無駄にしたと思っています。もっとみる▼いいね
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『小さな恋のメロディ』という昔の映画に2023年12月2日主人公の深澤由樹の名を表す漢字は『樹』があるので字で見ると男の子の名と分かりますが、読むと『ゆき』で女の子の名と間違えられそうです。制服で男子と分かるけれども声を聞いても人によっては女子と思う人もいるかもしれません。恐らく高校二年生の今迄其の可愛さの為に怖い目に遭ってきたのでしょう。其れで極端なあがり症になったのかもしれません。好きな人ができても陰でそっと見ているだけの子なのでしょう。同級生の三吉竜平は由樹の秘めた恋心を知って陰ながら或いは堂々と応援しているようです。
由樹が恋する同級生の境浩之は偶然か将又必然か『声フェティシズム』なので、もう、一組の恋人たちが誕生しそうなのですが、由樹が極端な恥ずかしがり屋なので、二人の間には会話が成立しません。いっそ筆談でもすればと思ってしまうのですが、由樹の声が聴きたい境にとってはそれではつまらないでしょう。同じクラスに居て今迄聴いたことが無いのは何故なのでしょう?由樹と三吉は多分教室でも話していた筈なのに、聴こうと思って聴かないと耳に入ってこないのでしょうね。
此の初々しい恋人たちは此のままでいて欲しいのですが、矢張りBLなので、読者の望む方向性を目指さないといけないのでしょう。高校生なので、それなりの欲は人に知られない処では持っているはずです。
由樹と境は最初の出会いこそ少しずれて居ますが、お互いに相思相愛なので、長続きする恋人たちでしょう。
大槻ミゥ先生の表紙絵やイラストが恋人たちを可愛らしく描いてくれています。
『小さな恋のメロディ』という映画は五十年位前の映画ですが、マーク・レスターが俳優として金髪の可愛い男の子を演じています。相手の女の子の役はトレーシー・ハイドだったと記憶しています。懐かしくなるような素的なお話です。もっとみる▼いいね
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南異郷で謎解きする飛牙と裏雲の番外編追加ネタバレ2023年11月23日このレビューはネタバレを含みます▼ 講談社文庫から刊行された天下四国の六冊の物語に新たに番外編として書き下ろされた『異邦の使者、南天の神々』が追加されました。
徐の第十六代王寿白が庚に迫害されて唯独り南羽山脈を越えて辿り着いた異郷の国マニ帝国での日々が寿白改め飛牙となった者の命を繋いで、咄嗟の時に臨機応変に対応できる逞しい漢に育ててくれたのは確かなのです。飛牙の宿した朱雀玉は異郷の地に於いても少なからず彼を助けてくれる大きな力になっていたことが、此の番外編から推察されます。
今回の飛牙と裏雲の異郷への道行は、世話になった村の恩人の苦境に駆け付けて、人生で一番の絶望を抱えてしまっていた時に受けた恩を返す意味合いもあります。
以前にも世話になった不思議人物パールシの手助けもあり、飛牙の推理も冴えて、無事ではないけれども事件も解決します。裏雲の虫の知らせか勘の冴えにより、飛牙は助け出されるのですが、飛牙は危機管理能力が少し落ちてしまったのかと思われました。一歩間違えれば死んでいたのだから用心は肝要です。もしかすると、話を面白くするためにこういう設定にしたのなら其れは止めて欲しいです。王族の夫がある女性が宮殿の地下に呼びつけるというのは、普通に考えても変で何者かに誘い出されているのが分かるので、敏い飛牙が其れに気が付かないはずはないからです。しかし、考えなしの飛牙なので、其れもあり得るかもしれないと思ったりもします。帰国早々に虎に食われそうになったのも、太府の妻と知らずに誘われて身売りしようとしたからでした。飛牙の本質は変わっていないのかもしれません。
パールシも気が付いていますが、裏雲の飛牙に対する想いと、飛牙の裏雲に対する想いは種類が違うものらしく、飛牙は態とはぐらかしているのか、気が付いていないのか、読んでいる此方がじれったくなってきます。裏雲にしてみれば、泥団子の玉を宝物にして持ってくれていたのに、と恨めしい思いになるでしょう。あれは、竹馬の友のような親愛の情でしかなかったのかと。報われない裏雲の愛です。けれども報われてしまうと絶対に甜湘に感づかれてしまいます。いいね
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飛牙と那兪、甜湘、裏雲、裏雲と飛牙の表紙2023年11月23日講談社X文庫ホワイトハートで完結していた『天下四国』に講談社文庫から新たな物語が書き下ろされるのに伴って、イラストを担当された六七質先生が美しい夢見るような表紙を仕上げてくださいました。ホワイトハートの表紙を飾った飛牙と那兪の旅する絵達は第四巻までの其々の口絵として残されています。この絵を観て物語の世界を思い描きながら読み進めた人も多いのではないでしょうか。
新しく書かれた『永遠の旅人 天地の理』では、飛牙の念願だった堕天してしまった天令の那兪を救い、黒翼仙の裏雲を天の懲罰の火で焼かせないという願いは受け入れられ、願ってもない結末を迎えることができます。
『大地の宝玉 黒翼の夢』では、越の女性史家、藩朱可が裏雲と出会いお互いを認め合う得難い友人となるまでを描いています。朱可は庚から徐へと国が大きく動く場面を目の当たりにします。
此の『天下四国』の物語には破天荒な女傑が出てきます。燕の国の姫、甜湘。越の正王后、瑞英。越の史家、藩朱可。何れも胆の座った並みの男にも負けない女性たちです。彼女達の物語も併せて愉しんでください。もっとみる▼ -
第十六代徐王寿白の帰還と天下四国の変遷2023年11月23日講談社X文庫ホワイトハートとして刊行された天下四国の物語は第四巻をもって完結しています。各巻を単品で購入するより安価で手に入るので、其々の巻を試し読みしたり、レヴューを参考にして全巻を通して読んでみたいと思われた方は此方を購入したらよいのではないでしょうか。しかし、人によって何を面白いと思うかは其々なので、第一巻を読んでみないことには分からないと考える人は分冊版を購入してみればいいでしょう。
中国系の物語は名前が難しいので、登場人物の名前が全て頭に入るまでは物語に入り込めないと思っているかもしれません。けれども、試し読みをして分かるように、第一巻目の最初こそ徐の国の危機から始まるので読みにくいと思うでしょうが、物語が進んで行くに連れて飛牙と那兪の絡みが主になってくるので、楽しみながら読み進めていくことが出来ると思います。何よりも作者の語り口が上手なので、私達読者は其れに乗せられて泣いたり笑ったりと物語の世界観に嵌ってしまうことになります。何はともあれ、自分の眼と想像力を発揮して此の物語を読み始めてみてください。もっとみる▼いいね
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氷の世界の救世主飛牙は光の剣を持ちネタバレ2023年11月22日このレビューはネタバレを含みます▼ 講談社X文庫ホワイトハート天下四国のシリーズは駕の国の四巻目を持って完結を迎えました。各巻の表紙を彩った飛牙と那兪の絵に多くの人が心惹かれて此の小説を手にしたことでしょう。講談社文庫として再刊行された表紙にはホワイトハートと同じ六七質先生が華麗な絵を描いてくださっています。新たな読者の心をもとらえて離さない素的なイラストの数々を描いてくださった六七質先生に感謝致します。
駕の国の現状を飛牙と那兪と裏雲はどの様に打開していくのかと興味津々で読み進みました。一度目に読んだ際には終わり方に納得がいかなかったのですが、二度目にじっくりと読んでみて、此の駕の国からは丁海鳴が居なくなって天に彼の進退を任せるのが一番綺麗な結末だと思えてきました。
全ては寿白が天令那兪に朱雀玉を迎玉された時から始まっていたの考えられます。天は人がましい天令の那兪が長じて飛牙となった寿白と共に四国天下を天にも人にも望ましい形にするように切磋琢磨する道標を付けたのでしょう。飛牙は魂を磨いて天の一員になるに相応しい人になってゆきます。裏雲も恐らくはそうなるべく運命づけられているのかもしれません。
一応天下四国の物語は完結しましたが、外伝等三冊が出版されていますので、物足りない方は其方も併せて愉しんでみてはいかがでしょうか。いいね
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暗魅屍蛾は月に曳かれ越の王都を飛び海へとネタバレ2023年11月22日このレビューはネタバレを含みます▼ 講談社x文庫ホワイトハートでは表紙を飾った月と飛牙と那兪は、講談社文庫では口絵となって此の小説を読む人を天下四国の国の一つである越での二人の活躍の物語に誘います。代わりに表紙となった麗しい裏雲と宇春が鴉の濡れ羽色のような趣で此の三巻を飾ってくれます。
一巻でも二巻でも、まるで天に導かれるように次々と物語の主要人物に出会ってきた飛牙と那兪ですが、三巻でも、早速越の三の宮余暉に出会って彼を助けて係わりを持ってしまいます。
徐の国から越に嫁いだ王后瑞英や一の宮、二の宮、三の宮や裏雲、那兪も総勢で飛牙と共に十四年周期で王都に災いをもたらす暗魅屍蛾の驚異と戦います。ところが、屍蛾の襲来が去ってまた一難、翼竜の群れが襲ってきて王城に少なからぬ被害を与えます。悲しい被害者が出てしまったのですが、此れをいい機会と捉えて三十三年に亘る王の跡目争いに終止符を打つことになります。しかし、翼竜との戦いに干渉してしまった那兪は、天に回収されてしまいました。
次なる四巻目は天下四国の国で最も内情が分からない駕の国に往くつもりの飛牙ですが、気安い従者の那兪が居ない彼は独りでの道行になりそうです。いいね
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砂で造られた幻の城の如き飾りの女王と姫はネタバレ2023年11月21日このレビューはネタバレを含みます▼ 講談社X文庫ホワイトハートとして刊行された表紙を飾った飛牙と那兪は、講談社文庫では口絵に収められました。六七質先生が燕の名跡姫、甜湘と白鴉、雪蘭を華麗に天女のように舞う姿で新しい表紙絵を描いています。此の甜湘に惹かれて読もうと思った人も多かったと思います。
飛牙は自分の為に天に戻れなくなった天令の那兪と黒翼仙の裏雲を助ける手立てを知る者を探して隣国、燕までの旅をしています。そして、天令の那兪は天に戻れなくなったものの、天下四国の現状を確かめ報告出来るなら、何時か天に還れるかもしれないと考え飛牙に付き従って旅をしています。那兪は天令としての永い命の内に何度か人間に心を掛けて助けてしまったことがあり、その為に何度か天の獄に繋がれました。天令としては出来損ないと言われますが、それ故に助かった者があり、また、飛牙は大いに助けられたのです。那兪がいなければ、飛牙はこの世には生きていられなかったでしょう。飛牙は那兪をおまえ呼ばわりしますが、感謝をし信頼し親愛の情を覚えているのだと思います。
燕の国には白虎玉があるそうですが、其の玉を見に宿した女王は初代の灰歌の他はいなかったようですが、甜湘は燕の国の天令によって迎玉を果たしそうな優れた姫です。甜湘は飛牙と婚姻しましたが、飛牙を燕の国に留めて置かずに自由にさせてくれます。飛牙には天令の那兪を天に戻すことと黒翼仙になった裏雲を死なせない方法を探るという目的があるからです。
第二巻も飛牙と那兪の遣り取りが面白いので愉しんで読み進められます。いいね
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翼を持つ裏雲、朱雀玉を持つ飛牙、天令ネタバレ2023年11月20日このレビューはネタバレを含みます▼ 講談社X文庫ホワイトハート版では表紙だった飛牙と那兪の精密美麗な六七質先生の絵は、2020年に発行された講談社文庫では口絵となって此の小説を今から読もうとする読者を此の小説の世界へと誘ってくれます。新しく六七質先生が描き上げて下さった天女かと見紛う様な美しい飛牙と天令万華の那兪がより多くの人を中村ふみ先生の胸躍るような中華世界の天と人の物語へと導きます。
飛牙は天令の那兪を「おまえ」呼ばわりし、天令の那兪は飛牙を「そなた」と終始敬意を込めた言葉を使っています。那兪は飛牙の従者のように、此の小説の始まりから終わりまで付き従い、何かと反論しながらも飛牙を助け続けます。其の所為で堕天の憂き目に遭うのですが、其れすらも受け入れて飛牙と行動を共にします。
飛牙と裏雲の十年ぶりの再会等涙する場面が多い一巻目です。何度読み返しても笑ったり泣いたりと愉しめる小説です。
それにしても、中村ふみ先生の名付けの巧みさには毎回唸らされます。『寿白』から『飛牙』、『悧諒』から『裏雲』。『那兪』。もう、此れ以外の相応しい名前は無いかと思われるのです。物語の主人公達が自分の名を教えてくれたかのように想像してしまうのです。いいね
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善き王子のための裏切りのフーガ【イラストあり・電子限定ショートストーリーつき】
みずかねりょう先生の表紙は芸術作品ネタバレ2023年11月19日このレビューはネタバレを含みます▼ 試し読みとレヴューに釣られて読んでみました。一度目はどうしても先が気になるので読み飛ばして最後まで読みました。途中気分が悪くなりながらも読み終えました。
今二度目を読み始めていますが、シセとルカが話す言葉で、其々自分を表す一人称に「俺」を使っているのが気になりました。シセは「私」で話す人物でしょう。また、ルカも従僕として働いているのですから「私」を使う必要があります。其れが気になりだすと、もう、先を読み進めることができなくなりました。
シセとルカの容貌と人物像がかけ離れてしまって、主人公に興味を失ってしまったら此の小説がすっかり色褪せてしまいました。
ルカは同士を裏切ったかもしれませんが、シセにしてみればルカに裏切られたのです。終わり良ければ総て良しではないでしょう。「第五王子の愛と哀しみ」と題を替えてもいいぐらいです。牢獄で失意の内に過ごしたシセの悲しみがルカの救出で癒えるとは思えないのです。ルカの考えの甘さが招いた結果で、死を免れたからそれで良しとはならないのです。一度心の内に芽生えてしまった相手に対する失望と絶望は並大抵のことで取り消してしまえるものではありません。人の心の機微についての配慮に欠けてしまうと色々と納得のいかない物語になってしまいます。残念でなりません。
表紙絵のルカはシセに背を向けて顔を見せていないことに気が付きました。つまり、ルカはシセに顔向けできないことをしているということを暗示しているのです。此れを幸せな結末に持って往くのは無理があり過ぎます。 -
橘先生の平安時代絵巻の面白さネタバレ2023年11月17日このレビューはネタバレを含みます▼ 橘かおる先生の中華風時代小説は何作か面白く読ませて頂きました。私は好きなイラストレーターのものでないと読みません。それでは、面白い作品を読み逃してしまうと考えて、気に入っている作家の作品を選び出して読み始めました。試し読みをして購入して読んでみました。
主人公の蘇芳芳顕は九歳で母を亡くして、郎党の秦真渕と共に父兵部卿宮の屋敷に往くことになった折、幼くて母の死が理解できずに周囲の哀れを誘ったとあるが、九歳で「おたあさま」と舌足らずに言うのは可笑しすぎます。せめて三歳位の設定でないとそれでは頭の螺子が緩んだ知能の遅れた子どもになってしまいます。芳顕の可愛らしさを表したいにしても其れは誤った設定だと言えます。
また、藤原雅俊は近衛中将の身で芳顕を脅して女装させて弘徽殿や麗景殿に潜入させるということができたとは思えません。まだよく知らない芳顕の人となりを把握していなければ目論見が露見して芳顕諸共窮地に陥ることになるのは目に見えています。
今回は話の流れで全てが都合よく行ったのですが、そうならないことも充分に在り得たのです。雅俊の怪我だけで済んだようですが。
そして、怪我しているにも拘わらず盛ってしまうのも考えものでしょう。まだ、全てが解決したわけではないのです。少しご都合主義なところが多いですが、読後感を善くするためには、悪人は少ない方がいいのはもっともなことなのです。いいね
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汽車よゆけ、恋の路 ~明治鉄道浪漫抄~【電子特典イラスト付】
夏珂先生のイラストが眼福でございました2023年11月17日『獣の牢番~』に比べたら、此方の方が愉しめる小説でした。何よりも、夏珂先生のイラストが素的で、先生のイラストが見たいがために此の本を購入しました。先生のイラストは素的なのですが、手元に持って置きたい程の本は中々見つかりません。其の意味で言うと此の本も今では所持していません。
久我先生の小説は面白いのですが、今一つ魅力がないのです。此のお話も淡々として進んで終わってしまいました。肩透かしを受けてしまった感がしているのです。始まりは面白いので期待感で胸を膨らませて読むのですが、段々と尻すぼみになったように思ってしまうのです。若友俊次もタカオ様も魅力的なのに、何かが物足りないのです。此れは私の我儘な思いでしょうか?もっとみる▼いいね
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笠井あゆみ先生の絶妙な絵と活字の配置と色ネタバレ2023年11月7日このレビューはネタバレを含みます▼ 随分以前は病院で出産した際の乳児の取り違えが時々発生していたようです。其れを防ぐために出産時に直ぐ母親の手首と乳児の足首に退院時まで外れないようなプラスチックバンドを付けるようになりました。それには母親の氏名が記入されています。それで、今ではほぼ百パーセントの確率で乳児の取り違えは起こっていないようです。
要斗の兄總一郎はそういう経緯があって、別の家族の長男と取り違えられて津向家に暮らしています。其の事実が判った時には、既に相手の家族は全員死去していました。元の形に収めようにも無理な状態でしたし、相手の家族が余りにも悲惨で気の毒な死に方をしたのが推察されて、總一郎の育ての親である要斗の父と母は自分達の息子として変わらず生活していくことを選びます。
其の事実を偶々知ってしまった要斗は自分の兄總一郎に対する想いが何故異質で兄弟愛ではないのかを理解します。
要斗がスタントマンの仕事で知り合った俳優の式見槐は、人を観察して其の人の人物像を的確に把握する能力に優れています。特に自分が興味を持った対象者に対して其れは遺憾なく発揮されます。それで、要斗の思い人が兄の總一郎であることを察します。恋愛対象が両性である式見槐は要斗を気に入って手に入れたいと思うものの、要斗が總一郎を想っている限りは絶対に手に入らないのに気が付いています。そういうわけで、式見槐は要斗の恋情の成就を後押しするのです。
要斗と總一郎に血の繋がりは無くても、兄弟で暮らした年月と実績があるので、二人が恋人関係になるには何回かの段階と心の切り替えが必要なのです。試行錯誤の末にやっと乗り越えて恋人関係を結ぶことができました。今作は恋のキューピット役の式見槐でした。 -
彩先生の表紙絵が小説の世界観を巧みに表現ネタバレ2023年11月7日このレビューはネタバレを含みます▼ 松岡なつき先生の小説は『H・Kドラグネット』を既に読んでいます。主人公二人の活躍が面白かったのですが、余りにも多くの人が死んでいくのが辛くて、乃一ミクロ先生の表紙絵が気に入っていたのですが、今は持っていません。
その点、この小説では人は生き様を見せますが、左程残酷な場面はないので、安心して物語の世界観に浸ることができます。
先生がかなり前に書かれた小説のようで、この時代は煙草を吸うのが当たり前だったのか主人公が煙草を吸うことと、自分を指す一人称に「俺」を使っているのがどうも気になりました。私は「俺」を使う人に余り良い印象を持てないのです。
しかし、アレンは語学の習得に才能があり、聖刻文字やアッカド文字や古代エジプト文字を読むことができます。それが彼の時空移動の際に可成役に立っています。しかし、書き言葉は習得できても、実際に話されていた言語とはまた別物で、意志の疎通に最初は支障がありましたが、そこは得意分野の彼は瞬く間に彼等の話す言葉を覚えます。
古代のエジプト人は金髪だったようですので、アクナーテン王の義弟のネフィルが金髪なのは正しいのです。彩先生の描くネフィルは古代でも現代でも美しくて眼福でした。ネフィルは現代にタイムスリップした後途轍もない苦労をしますが、何時か再びアレンに巡り逢えることを心の支えに生き抜いていたのでしょう。
それは、アレンについても言えることなのですが、アレンはアクナーテン王の遺跡発掘という目指す目的があるだけでもネフィルが味わった絶望と悲壮感には到底及ばないでしょう。しかし、アマルナで発掘調査をしていれば必ずネフィルに遭うことができると僅かながらでも確信を持てたのは幸いでした。
渋い色男になっていたネフィル。この世には常識では考えられない不可思議なことがあるのだと想像するだけでも愉しいひと時でした。松岡なつき先生、素的な小説を世に出してくださって有難うございました。 -
小山田あみ先生の表紙とイラストが至福ネタバレ2023年11月7日このレビューはネタバレを含みます▼ 毎日のようにXで小山田あみ先生の此の小説の美麗なイラストを拝見していて、新刊も10%引きに釣られて購入してしまいました。作者名の確認を怠った自分がいけないのですが、今迄に読んだ『運命のつがい~』も『彼と彼氏の~』も『陥落の~』も『甘い絶望の~』も楽しめないどころか支払ったお金と費やした時間を悔やむものでした。
内容を掻い摘んでみると、主人公のアイルを養父母と男爵で悲惨な目に遭わせた後、絶望の淵でやっと救出させて、まるでジェットコースターに乗っているかのように不幸と幸福を交互に味わせています。そして、男爵を醜悪な男にしておまけに青髭のように何人もの妻を凄惨な目に合わせているというのを読む読者の身にもなって欲しいものです。実際に悪人がいるのは承知していても、物語の中にそこまで徹底して書く意味はあるのでしょうか。
アイルの夢魔にはリシャールに似た男性が何度も現れます。まだ、アイルがリシャールの存在すら知らないうちから見せて、番の絆を印象付ける意図が見えて不自然な思いで読みました。また、アイルは落馬までさせられて、可哀想すぎます。一度骨が折れると何か月も治るまで苦労しなければいけないのに、リシャールはアイルを労わるどころか早速手を出しています。リシャールの人物設定も一貫していなくて、首をかしげるような処が多いのです。養父母の家に帰されたアイルを直ぐにも迎えに行くと思われるのに、何故男爵の屋敷に何日も閉じ込められているのを放っておくのか不思議でなりません。幽霊や悪夢を見続けるアイルが哀れです。
ハッピーエンドに向かって話を作り上げた感があって、白けてしまって少しも感情移入することができません。担当者がゴーサインを出した訳を知りたいものです。
小山田あみ先生の表紙とイラストが必死で話を盛り上げようとしてくださっているけれども、無理でした。 -
古澤エノ先生の表紙絵が素的でした2023年11月5日実は定価で購入すると高額なこの本が古書店で安価で手に入ったので読んでみました。
ところが、前の持ち主の保管の仕方の所為かとんでもなく不快な臭いが本に染み付いていて、落ち着いて読むことができませんでした。
出だしは面白いと思って読み始めたのに、青砥エリヤが自分のことを「俺」と言った途端に醒めてしまいました。何故、作家は男の人に「俺」と言わせるのでしょう?日本語では、「僕」、「俺」、「私」があります。「俺」という言葉は品位を感じません。安易に使うのを止めて、人物設定にあった言葉遣いをさせてほしいと思います。
また、表紙は素的でしたが、中のイラストはクオリティが表紙とは全然違うもので、別人を描いているのかと思ってしまいました。
此の本とは縁がなかったのだと諦めました。残念です。もっとみる▼いいね
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高峰顕先生の表紙絵に一目惚れ2023年11月5日BL小説というものがあることを知って、書店で初めて購入したのが此の本でした。暫くは何度も読み返すほど気に入っていたのですが、今は手元にありません。
何故だろうと思いましたが、他の人もレビューで指摘していた通りで、市井史佳の自分を表す自称が「俺」であることに違和感を感じました。自分に自信がない青年が「俺」を使うのは非常に不自然です。「僕」か「私」を私用と公用で分けて話すような人物だと思われます。彼の人物設定に相応しくないので、非常に違和感を感じてしまって、朝比奈が何故史佳を気に入ってしまうのか不思議でなりません。
恐らくそういう違和感が次々と積み重なって他の工夫して考えただろう全体を毀してしまうのだろうと思います。ちょっとした亀裂や綻びを甘く考えていると取り返しがつかなくなるといういい見本です。
此の小説家の本は此の本以外に読んでいないのは、無意識のうちに避けていたのだと今になって分かりました。高峰顕先生のイラストは素的でしたので、とても残念でなりません。もっとみる▼いいね
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慈しみの氷の王子慈雨と炎の退魔王子ルカネタバレ2023年11月5日このレビューはネタバレを含みます▼ 慈雨は副寮監のルカのことを愛想が良すぎるとか怪しいとか胡散臭いとか思っていたけれど、彼と日常的に接するに連れて、彼が微笑みの陰に隠している想いを知り、彼に惹かれていることに気が付きます。そして、夢うつつに見た自分の指の傷跡を確認するルカの姿は夢だったと思い込もうとします。そんな風に懐いたり信じたりする慈雨を感じて、ルカは伯父夫婦の手から慈雨を守ることを決めたのだと考えられます。つまり、ルカは慈雨の信頼に値する自分であろうとして、慈雨の為に凶弾を受けたのでしょう。其の痛みは慈雨を利用しようとした伯父達の言いなりとなって慈雨を酷い目に遭わせてしまったことに対する罰と償いの意味もあるのだと思います。また、其の傷があることで、可畏の怒りはある程度抑えられたのだと言えるでしょう。
学校のプールでの悪霊退魔案件と此の慈雨誘拐未遂事件で二人の心の結びつきは強くなったと思います。
倖に対して持っていた気持ちは双子の弟に対する慕わしい思いに戻ることになって、慈雨もどんなにか喜んだことでしょう。半年前までの思いに落ち着いたので、思春期の気の迷いと片づけたい不安な恋心だったのでした。今は慈雨の恋心はルカに向かっているけれど、ルカが大学生になるまでは封印しておかなければなりません。これからも親しくしたいのであれば大事に育んでいきたい恋心です。
2⃣刊では、親睦の為の簡易カラオケで、『アイノウタ』と『恋曜日』をお互いに贈り合った慈雨とルカ。二人が相思相愛なのは身近にいる人には知れてきます。
慈雨の母親の誕生日会に、倖が慈雨の真意を汲んでルカを招いていました。その時にルカは可畏に憑いている恐竜や人間の悪霊を除霊します。
二十年前の卒業生によって埋められたタイムカプセルを当の卒業生が掘り起こしたのに連れて様々なことが起こります。其の解決を求めて旅した大阪で、常軌を逸した研究者等によってルカをむざむざ人質にされてしまったことを大いに反省した慈雨です。けれども、一連の出来事によって、慈雨とルカの仲は深まる兆しを見せ始めます。此れで、一先ず、慈雨とルカの物語は置いておくのでしょうか。次は?倖?
処で、一つ気になるのは、ルカが自称に「俺」を使うことです。終始違和感がありました。美しい青年には「僕」か「私」を使って貰いたいものです。言葉遣いはとても大事なものです。遣う人の印象まで左右してしまうからです。 -
口絵の馬に乗った二人が麗しいネタバレ2023年11月4日このレビューはネタバレを含みます▼ キリルの兄は思慮深い王子だったはずなのに、何故無謀な計画を立てたのかが解らない。ダウラート国王ロランは余りにも王に有るまじき行いをキリルにし過ぎる。
此の小説の作者は何を主題として読者に語りたいのかわからなくなってきた。ロランやキリルの兄をこんな人物設定にする意味は何なのかを知りたい。読み進めるのが辛くてしょうがない。何処に救いがあるというのだろう。私たちは現実の世の中が悲惨なことが多いので、逃避する意味合いもあって、物語に救いを求める。しかし、此の物語の何処に救いがあるというのだろう。とても残念な思いで一杯だ。 -
小山田あみ先生の表紙絵に惹かれて読んだがネタバレ2023年11月4日このレビューはネタバレを含みます▼ オメガを劣等種、珍獣と言う同じタスクフォースの捜査員仲間に寒気を覚えてしまった。警察官がこういう考えなら、一般の人は更に酷い考えを持っているのが判ってしまった。オメガを誘い出して残虐なやり方で命を奪い、それを動画にとって流す手口に怖気がした。如何にか最後まで読んだが、こんな内容の小説を書く意味は何かと考えてしまう。瓜生と司波の絡みを創りたいなら、もっと違う話を考えるべきだ。現実の世の中では人はいとも簡単に人の命を奪う。仮想の世界はもっと明るく幸せな世界を目指して欲しい。小説を書く意義を改めて考えて貰いたいと痛切に願っている。
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夜光花先生×笠井あゆみ先生=鬼より最強ネタバレ2023年11月4日このレビューはネタバレを含みます▼ 以前は鬼を悪しきものとして読もうとはしませんでした。ある時、鬼を毛嫌いするのではなく、鬼を知るためにも読もうと考えて、表紙の絵が気になっていた夜光花先生の此の三巻に渡る小説を読むことにしました。読み始めて直ぐに其の面白さに貪るようにして全巻を読んでしまいました。
各巻の表紙絵が美麗なので、暫く全体や櫂と羅刹の関係性や周りの細かい描写などを眺めて楽しみます。此れだけの絵に各巻の内容を封じ込めるためにも、笠井あゆみ先生は全巻を読破されたのだろうと推察致します。
氷室櫂は何かと足りない抜けている処もある人間ですが、完璧な人間よりも其の方が人にも鬼にも物の怪にも好かれます。土井伊織も高校の時に櫂ともっと親しくなっていたらこんな酷いことを櫂に仕掛けては来なかったでしょう。つくづく残念な人だったと思うばかりです。実際櫂は伊織に好意を持っていたのだから、強引にでも近づけば良かったのにと、今更ながら思ってしまうのです。けれども、櫂には羅刹が似合うし、櫂の弱点を補える者でなければ終生を伴にはできないのだろうと思います。
羅刹や草太や安倍那津巳に助けてもらって今の自分があるということを重々承知している櫂は此れからは人を信頼して頼れるようになるでしょう。しかし、あの広い屋敷を切り盛りする者は必要なので、式神を誰かに似せて創るのでしょうか。
埼玉の山の何処かにに彼等は住んでいるのだと思ってみるのもまた、楽しいものです。 -
『笑う門には福来る』笑いは世界を救う?2023年11月4日水上来人は姓名からして水に関係しています。如何やら伊勢迄呼ばれたみたいですね。
相手は神様ですから、大抵のことが可能です。遠隔操作等お手のものでしょう。
金の斧、銀の斧の件では笑ってしまいました。終始楽しく読めて笑BLでした。
如何にしてBLにまで持って往くのかと興味津々でした。
偶には此のような話もいいのかもしれません。
小山田あみ先生も笑いながら描いてくださったのでしょうか。もっとみる▼いいね
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表紙絵に表された世界観が美しいネタバレ2023年11月4日このレビューはネタバレを含みます▼ 笠井あゆみ先生がイラストを担当しているというだけで読んでみたくなってしまいます。紙本を買って読んでみました。先生のイラストが物語を美しく説明してくれて読みやすいと感じました。
物語の題名が内容を表してくれているので、予想がつくのですが、金色の目のイシュクが皇帝になり、白銀の髪のニルファが皇妃になる其の詳細と全貌が段々と明らかになるにつれ、成程と思わされました。
しかし、純愛のままでは後継ぎが望めないからこその皇妃化という訳で、もう純愛の段階を通り過ぎるのですね。そして、新たな命を身に孕み、子としてこの世に産まれてきます。数奇な運命を辿ることになったニルファですが、望み通りイシュクと身も心も結ばれて、其の愛の証の子にも恵まれ、幸せの絶頂にあります。
人の運命というものは分からないものだと思います。仕組まれたものであったにしろ、そうなるには理由があるはずだからです。いいね
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