87歳が伝えたい「80年前のコト」 収集した戦時中の出版物を展示

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斎藤徹
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 山形県村山市の山あいの民家で、戦時中の本や掛け軸などを集めた企画展「80年前の コト」が開かれている。80年前に国民学校1年生だった大沼与右エ門さん(87)が、戦後に捨てられそうになったものをこつこつと集めた。原点は「戦前の日本を戦争の道に進ませたものは、何なのか」という疑問だ。

 旧日本軍の中国などへの侵攻の様子を華々しく伝える「満州事変紀念 大写真帖」や「画報 躍進之日本」、戦争遂行のため国民に国債購入をすすめる「隣組読本 戦費と国債」……。

 自宅敷地内の離れの倉庫を改装したギャラリーで開いている企画展では、戦時中に発刊された雑誌や写真集、1941年発足の国民学校で使われた教科書など、約80点の書物が展示されている。壁には、朝鮮半島や台湾などの植民地が入った大日本帝国の地図。国家への忠誠を国民に諭す「教育勅語」、兵士の行動規範を示した「戦陣訓」の文章と昭和天皇の肖像を描いた掛け軸も掲げている。

 これらの多くは、近くの家から集めたものだ。60年代以降、空き家を壊したり土蔵の整理をしたりしている家の人が「焼くか捨てる」と言うものを引き取った。東京・神田の古本屋で買ったものもある。

何が日本を戦争に突き動かしたのか

 大沼さんは戦争末期の45年4月、岩野国民学校初等科に入学した。当時どんな授業をしたかは記憶にないが、バケツリレーで消火訓練をしたことや、わら人形を竹やりで突く訓練をしたことを覚えている。

 旧日本軍の飛行場が近くにあり、米軍機が集落上空に飛んできたこともある。空襲警報が鳴ると防空壕(ごう)に逃げ込んだ。

 8月15日の玉音放送後、周…

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この記事を書いた人
斎藤徹
山形総局|総局キャップ・県政担当
専門・関心分野
人口が減っても持続可能な地域づくり
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