SNSだけじゃない影響工作 情報戦日本でも 批判的思考で対抗を

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聞き手・御船紗子
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 7月の参院選で海外勢力の選挙介入が疑われるとの声が広がりました。海外では米大統領選や欧州・モルドバ大統領選などでロシアの選挙介入が強く疑われました。ルーマニアでは選挙をやり直す事態に。情報戦は日本でも起きているのでしょうか。明治大の斎藤孝道教授(情報セキュリティー)に聞きました。

 ――そもそも、情報戦とは何でしょうか

 情報操作や情報を得る手段に対する妨害などにより相手の意思決定に影響を与えつつ、自らの意思決定を保護するために行われる行為全般のことです。SNSで偽情報を拡散させるイメージが強いかもしれませんが、それだけではありません。

 SNSや国営メディアを使ったナラティブ(物語・語り)の流布だけでなく、インフルエンサーを買収して特定のナラティブを拡散させることで偽のブームを作り出し、それが大手メディアに取り上げられれば、あたかも多くの国民がそれを支持しているように見せることもできます。

 ――ネット空間における脅威だということでしょうか

 ネット空間だけ、ではありません。情報戦はネットが生まれる前からあり、戦時中はビラやラジオ、人づてにナラティブを広めていました。情報戦は、現代では形態は多岐にわたり、それ単体で捉えることが難しく、サイバー攻撃からテロ行為まで含めた複合的な「ハイブリッド脅威」として考えるべきです。

製品に細工 暴動の「1人目」も

 例えば国の施策で特定の製品を全国に配備するとき、その製品の生産国が製品に細工をすれば、製品を通じて国内の情報を窃取したり、物理的に壊れるようにして損害を与えたりすることが可能です。それらにより、仕掛ける側は心理的に優位に立つことができます。

 工作員を相手国に潜入させ、街中で破壊活動を起こす「1人目」を演じさせることで、それを見た多くの国民が加わり暴動に発展させるというシナリオ(筋書き)もあります。

 ――米国やルーマニア、モルドバではロシアによる選挙介入が強く推認できる痕跡が確認されています

 米国の複数の政府機関が2017年に共同で公開したリポートには「ロシアのプーチン大統領が16年の米大統領選を対象とした影響工作を指示した」と評価する記述があります。

 この選挙では、ロシア側のサ…

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この記事を書いた人
御船紗子
国際報道部
専門・関心分野
国際問題、サイバー