万博足止め、押された女性骨折 見舞金払う意向の協会「責任はない」

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丹治翔
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 地下鉄が止まり、大阪・関西万博の会場で3万人超が帰宅困難になった8月13日の夜、横浜市の女性(49)が出口付近の混乱の中で転倒し、右足の骨が折れる重傷を負った。

 万博を主催する日本国際博覧会協会はこれまで、来場客の滞留によって「結果として大きな事故は起きていない」としている。女性の骨折については、取材に「個別事案の回答は控える」とコメントした。

 朝日新聞の取材に応じた女性によると、女性は万博会場の東ゲートから退場し、最寄りの夢洲駅に向かっていたが、密集状態で身動きが取れなくなった。午後10時過ぎ、体調を崩したため、列を離れて救護を求めていた際、混乱状態の中、他の客に体を押されて転倒した。

 一緒にいた息子(14)が119番通報し、救急搬送された大阪市内の病院でX線撮影をすると、右足首の複雑骨折が判明。1週間後に手術を行った横浜市内の病院で「右足関節骨折」による全治3カ月の重傷と診断されたという。

 女性が後日、万博協会に当時の状況を説明すると、協会の会場運営局から9月上旬、事故原因が他の来場者に押されたことに加え、現場が駅への移動ルート外だったとして「協会に責任が生じるものではない」とメールで返信があった。協会は賠償には応じられないとの姿勢を示す一方で、けがに対する見舞金5に加え、「今回の状況を鑑みて」大阪でかかった治療費約3の支払いは可能と説明しているという。

 協会は運転見合わせ後に生じた救急搬送は36件あったと公表している。女性側に対し、このうちの1件が女性の搬送だったとメールで伝えたという。

 停電による運転見合わせは8月13日午後9時28分、大阪メトロ中央線で発生した。中央線は人工島にある万博会場への唯一の鉄道路線で、大阪メトロは停電発生時、中央線を利用して会場から帰ろうとしていた来場者は約3万8千人にのぼったと推計している。帰宅できず、会場内で一夜を過ごした人もおり、すべての来場者が会場を出たのは翌14日午前6時55分だった。

すし詰めになった東ゲート前

 大阪・関西万博の会場周辺に帰宅困難者があふれたあの日の夜、現場では何が起きていたのか。右足首に複雑骨折を負った女性(49)の証言からたどる。

 女性と息子(14)は8月13日午後9時15分ごろ、東ゲートから会場の外へ出た。ゲート前の広場には、夢洲駅への列が幾重にもできていた。

 異変が起きたのは、15分ほ…

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この記事を書いた人
丹治翔
ネットワーク報道本部|双方向企画担当
専門・関心分野
メディア・SNS、スタートアップ、人口減社会
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