ドイツ統一35年で式典 旧東独で極右が台頭、首相「新たな統一を」

ベルリン=寺西和男
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 第2次世界大戦後の冷戦下で東西に二分されていたドイツの統一から35年となる3日、独西部ザールブリュッケンで記念式典が開かれた。排外的な主張を訴える極右の台頭などで社会の分断が課題となる中、メルツ首相は演説で「新たな統一を形作る機会をつかもう」と呼びかけた。

 1949年に建国された旧西独と旧東独は東西冷戦の最前線となったが、民主化運動が高まる中、89年11月に冷戦の象徴「ベルリンの壁」が崩壊。翌年10月には旧西独が旧東独を吸収する形で統一し、欧州の政治や経済を主導する地位を築いた。

 ただ、今も残る東西格差や移民の流入への不満などを背景に、旧東独地域では排外主義的な主張を掲げる極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が支持を集め、2月の総選挙で初の第2党になった。

 メルツ氏は式典での演説で「我々の自由な生活様式は、外部からだけでなく内部からも攻撃を受けている」と指摘。「統一から35年を経た今日、我が国が困難な時期にある中、我々は改めて結束し、自信と活力を持って未来を見据えるべきだ」と訴えた。

 シュタインマイヤー大統領も式典に先立つ、1日の統一関連の行事で「(統一の)あの時の熱狂的なムードは遠く感じられる」と述べ、今の政治状況に懸念を示した。AfDを念頭に「民主主義をおとしめ、人間嫌いを広める政治勢力が選挙で成功を収めている。民主主義にさらなる損害を与えることを許してはならない」などと語った。

 一方、旧東独側の人々の間には「取り残されている」との思いも根強い。旧東独地域政策担当相にあたるエリザベート・カイザー東独担当官は朝日新聞の取材に「人々は多かれ少なかれ『二級市民』のように感じている」と述べた。不平等感の解消に向け、政府機関で旧東独出身者の管理職への登用を積極的に進めていく考えを示した。

 政府機関の管理職の旧東独出身者の割合は2022年の13.9%から今年6月時点で15.5%に上昇したが、カイザー氏は、全人口に占める旧東独出身者の割合とされる約20%まで引き上げるとした。

 一方、大手企業の本社が旧西独側に偏っているとも指摘。「旧東独地域で企業への投資を増やし、地元でキャリアを築ける環境を整えることが不可欠だ」と述べた。

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この記事を書いた人
寺西和男
ベルリン支局長
専門・関心分野
欧州の政治経済、金融、格差、ポピュリズム