ノーベル賞でひもとく近代医学 診断・治療に貢献、感染症や脳研究も

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聞き手・後藤一也
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 ノーベル賞の発表が近づいてきました。初日の10月6日は生理学・医学賞。細胞の基本的な仕組みから、現代医療に欠かせない薬や技術まで、様々な発見に贈られてきました。解剖学者で医史学に詳しい順天堂大学の坂井建雄(たつお)客員教授に、近代医学の発展とノーベル賞について聞きました。

 Q 最初のノーベル賞は1901年。そのころの医療の特徴は。

 A 近代医学が発展してきた19世紀中ごろ、遺体への病理解剖で病気の原因を突き止める「診断」は、ある程度できるようになりました。ですが、生きている人への「治療」はなかなかできませんでした。そこに、エーテルという薬品を麻酔として使った消毒法が開発され、安全に外科手術ができるようになりました。

 ただ、多くの人は感染症で亡くなっていました。19世紀後半に医学の流れを大きく変えたのは、感染症の原因となる病原菌の発見だったのです。

 1882年にロベルト・コッホ(1905年受賞)が結核菌を発見しました。破傷風の血清療法を確立した北里柴三郎はノーベル賞は受賞できませんでしたが、ドイツに留学中にコッホに師事し、感染症分野で大きな貢献をしました。

 Q ほかにも感染症の治療に関する業績に多くのノーベル賞が出されています。

 A 病原菌がわかってもなかなか治療薬が見つからない時代が続くなか、ブレークスルーとなったのが、抗生物質の発見です。アレクサンダー・フレミングら(1945年受賞)が1928年に世界初の抗生物質「ペニシリン」を発見しました。

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 当時、日本国内の死者の大半…

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この記事を書いた人
後藤一也
くらし科学医療部|医療担当
専門・関心分野
科学、医療
ノーベル賞

ノーベル賞

ダイナマイトを発明したスウェーデン人化学者アルフレッド・ノーベル(1833~96)の遺言を元に、1901年に始まりました。現在は生理学・医学、物理学、化学、文学、平和、経済学の全6分野で贈られます。毎年10月に受賞者の発表、12月に授賞式が開催されます。[もっと見る]