差し入れクッキー買えない…拘置所・刑務所も物価高、売店閉鎖の衝撃

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酒本友紀子
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 差し入れ用の売店は、来月で閉鎖します――。

 京都拘置所(京都市伏見区)で、そんな放送が流れたのは、昨年3月のことだ。

 「収容者たちに衝撃が走った」

 詐欺罪で当時勾留中だった男性被告(37)は証言する。自身も母親と弁護人が会いに来るたびに、売店のチョコクッキー(1箱6枚入り)を差し入れてもらっていた。

 無罪主張は譲れず、なかなか保釈が認められなかった。

 3畳ほどの単独室で、2年余りの拘置所生活。運動(1日30~60分)と取り調べの時間以外、コンクリートの壁に寄りかかって座る日々だった。

 もともと甘党ではなかったが、「不自由な生活の中で、ストレス発散できるチョコクッキーは、命くらい大事だった」。力説する。

売店閉鎖 法務省も「好ましくはない」

 勾留中の被告や受刑者には、衣類や日用品、書籍などの差し入れが認められている。面会人に手続きしてもらえば、売店から届いた。

 男性のような被告は、受刑者とは違って無罪か有罪か決まる前の立場。食料品も受け取れた。ただ、面会人がお菓子の箱や飲料パックに違法薬物などを隠す恐れがあるため、渡せるのは売店の食料品に限られていた。

 全国の拘置所・刑務所にあった差し入れ用の売店が、ほとんど閉鎖しました。背景を取材すると、15年前のあの政治判断の影響もありました。

 売店の閉鎖で差し入れが制限されている現状は、「好ましくはない」と法務省の担当者。

 とはいえ、現金を差し入れてもらえば、「自弁」という代替手段があるとする。

 自弁とは、被告や受刑者が手持ちのお金で購入すること。拘置所・刑務所側が購入希望をとりまとめるため、買える回数も個数も制限がある。

 男性は、差し入れ分を自弁分に上乗せしてチョコクッキーを確保していた。1日に食べられる枚数が3分の2になって、「地獄だった」。

 売店があった時は、早ければ面会当日に届いた。自弁は外部業者に発注するためタイムラグが生じ、京都拘置所の場合は3~5日かかる。

一斉閉鎖 背景をたどると、あの政治判断

 勾留中の別の男性(55)は…

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この記事を書いた人
酒本友紀子
大阪本社ネットワーク報道本部
専門・関心分野
人権、共生社会、司法、国策と地方
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    小熊英二
    (歴史社会学者)
    2025年7月14日22時2分 投稿
    【視点】

    日本がいかに安普請の国で、わずかな物価上昇で制度が破綻し、人権が簡単に犠牲にされてしまうかを示す記事。地味だがいろいろ考えさせられる。 「わずかな物価上昇」とか「安普請」というと、反発する人もいるかもしれない。生活の苦しさがわからないのか

    …続きを読む