SNSでたびたび共働きvs専業主婦のバトルを見受けて悲しい気持ちになる。女同士くらい手を取り合って生きましょうよ。
この闘争自体は実は昭和からずっと続いている。変わったのは優位性だ。昔は専業主婦こそ良き女の進む道で、働く女は良い男をゲットできできなかった不幸な女か家事育児の苦手なダメ女のレッテルを貼られていた。
それに対し現在では共働き優位で、結婚後も働き続けるのは自立した大人の女の証であり、専業主婦は人権もないペット・男に人生を委ねる幼稚な女・無能の証のように言われる。
共働き→専業主婦と両方を経験をしている身から言わせてもらうと、ほんの数十年で女の価値観が真逆に変化したことに驚いているし、それでも結局共働きvs専業主婦という対立構造が変わらないのがなんともおかしい。
いつの時代も女が女をひとつの価値観に縛っているのがおかしいのだ。
いつになったら「仕事を持っていても専業でもどちらでもいい、好きな生き方を選んでいい」と言えるのだろう。
昭和〜平成にかけて育った私は専業主婦になるべく家庭教育を受け、学校を卒業する頃には結婚しても働くのが当たり前の時代になり(とはいえ3〜5年以内に寿退職することが望まれ、結婚後働くのであれば夫の承諾が必要で家事に支障のない範囲という制限がつくダブルスタンダードの時代)、長年の共働き期を経て40代で専業主婦になった。
私がまだ若かった頃、周囲はどちらかといえば専業主婦が多かった。25〜6歳でさっさと寿退職し、アラサーで子供を2人産んで子育てがひと段落する40歳くらいからパートで仕事復帰するような人が中央値だった。高収入夫をゲットできた人はお家でピアノやお菓子作りのお教室を運営してることも多い。
働きながらずっと彼女たちの生活を見聞きしていたが、優雅だなと羨ましく思うことはあっても彼女たちが楽をしているようには全然見えなかった。私は会社に時間を奪われる社畜だったが、専業主婦たちは家族の行動に全て合わせて生きている家政婦のようだったからだ。
私がリアルに知っていた専業主婦の友達たちの日常は、掃除や食事作りや洗濯など普通の家事は当然やっている前提でさらに【下の子の幼稚園〜スイミング教室へ送迎→2時間付き添い→上の子に夕食を食べさせて塾まで送迎→その間に下の子の遊び相手→雨が降ってきたから上の子を車でお迎え→上の子の勉強を見ていたら今度は夫から駅までお迎え要請→夫の食事の支度と後片付け】...みたいなスケジューリングで毎日動いていた。
他にも【週2で姑の入院先に顔を出して義実家の舅の洗濯と掃除をしに行く、自営業の夫の代わりに信用金庫で用事をすませお得意先に送るお中元の手配をしホムセンに寄って子供が壊したドアの修理に使うパーツを探し家に戻って修理を試みる、玄関外と駐車場の電球を取り替え外壁の外へ飛び出た庭の木の枝を切って家の周囲の落ち葉拾いと側溝の掃除をする】といったような業務を定期的にこなしていた。
専業主婦とは専門職なのである。
夕ご飯やお弁当を作って掃除機かけてゴミ捨てといったわかりやすい家事だけじゃない、家族のための家に関する運営管理をすべて一手に引き受けている、それが専業主婦なのだ。
”自分も一人暮らしだから家事やってるけど実際チョロい母親の苦労は大したことない”みたいなことを呟いた人がいたり、”友達の中でも専業主婦はうちのママだけで無能すぎて恥ずかしい”みたいな書き込みを読むと悲しくなる。
”母親なのに働きたいなんて子供や夫を蔑ろにしている”とか一方向の価値観を押し付けていた昭和の頃と同じじゃないか。今の時代はこういう考えだからそれに反していたらおかしい、みたいな主張ってほんと嫌い。昭和の古い考えから何も変わってなくて嫌い、みんな一緒・同一って方向に進めようとするムーブまじで気持ち悪い。
時代の価値観に流されることなく、その人が好きに生きられることが尊いのでじゃないか。そういう世の中をつくっていきましょうよってことじゃないか。
結婚しなくてもいいし子供産まなくてもいいし産休育休時短勤務でもいいしフルタイムで働きまくってもいいししばらく家庭優先してから復帰してもいいしずっと家庭にいてもいいじゃない。
時代が女の生き方を一方向に向かせるのっておかしい、時代に流されて女同士で叩き合ってるのもおかしいよ!好きに生きればいいじゃない。どっちも別の苦労があるよって話でした。
ーーー以下 雑記
上記の”一人暮らし家事チョロいわオカンの苦労なんか嘘w”の投稿に対しては世の中のお母さんたちから「自分のためだけの道とでもできる家事と家族のための義務と愛情の家事は全然違うわボケェ!」というものすごいバッシングが沸き起こった(笑)そりゃそうだわ。
私個人的には働くお母さんがいちばんしんどいと思っている。リスペクトしかない。
でもこれと同じように言えると思う、家庭管理の専門職である専業主婦の家事育児は求められるレベルが違うと(経済力に関わらず)。
共働き妻の働いていて時間制限がある中でできる家事と、専業なんだから時間いっぱいあるんだからもっと完璧にっていう家事はやっぱり責任とか家族の期待値も上がる。
また、自分が稼いだお金である程度アウトソーシングできるのと、夫から預かっている生活費で支出をチェックされながら家庭の運営を任されるのも結構高い能力を必要とされると思う。
私も働いている時は忙しいからできる範囲のことしかできなかったし、残業続きでお惣菜を並べるだけの夕食もしょっちゅうだったし、年末の大掃除はお金を払ってダスキンさんにお願いしていた。専業の友達はそれらを全て自力でやっていたのだ。
家にいるからできるだろと、炎天下に庭の草むしりや雨の日の車での送迎や子供のサッカーの試合に持っていくチーム分の割り当てのおかずづくりや町内会の役員仕事の公演の防犯見回りや夫の親のご機嫌伺いを。
できてあたりまえで文句は言われても感謝はされずお金も稼げない。ぶっちゃけ夫の稼ぎもいいとは言えない。それでも「家にいる」ことを選んだ専業主婦の生き方を私は尊重する。友達の中にはコミュ障や引きこもりっぽい性格の子もいる。家庭の中でなら輝ける子がいる。その子達が息苦しい時代にはならないでほしいと思う。収入がないので古い毛玉のついた服を着てたって家であじの南蛮漬けを作ってるのが幸せだという価値観を私は尊重する!