細胞生物学、分子生物学のバイブル
この分野の方なら誰でも知る"Molecular Biologu of THE CELL Seventh Edition"の日本語訳版が、今年の夏に発行されました。
WEB・デジタル中心の今の時代、日本の・・・しかも「日本語で勉強したい人向け」のニッチ市場のために、1519ページにも及ぶ原書に忠実な翻訳版をつくってくれたのは、奇跡です。その想い・深いお志を尊敬し、心から感謝いたします。この時代、もう、日本語版は生まれないのでは?と心配しておりました。故に歓び一入なのであります!
<この度生まれた日本語訳版>2025年7月30日発行
<こちらが原版>
新型コロナウィルスパンデミックの真っ只中、2022年7月1日発行。
従来版(第6版)と何がちがうのか?愛読者として解説します
これまで頼りにしてきた第6版。いつも読む前には手を洗い、テーブルを拭いてキレイにして大切に扱ってきました。しかし、こうして最新版とならべてみると年季を感じます。逆に、新版第7版の新品書籍が手元にあるのが不思議な気分です。
約8年の時を経て・・・
第6版の日本語版が発行されたのは、2017年10月5日。最終版にあたる、この第4刷が2020年9月5日。それ以降は「古本」でしか入手できませんでした。絶版後は、書き込み等のない上質な古本だと、一時、価格が高騰していて、入手に苦労する時期もありました。
この時代に、なぜ第7版は、実体のある分厚いリアル教科書で生まれたのか?
翻訳版の冒頭「ⅲ」に、原作者の考えが示されているので引用いたします。(以下、引用)
その答えは、教科書が終わりのないインターネットによる検索では得られないもの、すたわち整理された知識と、細胞の美しさと複雑さについての専門的で正確なガイドを提供してくれることにある。本書は、重要な概念、細胞の構成要素、実験を通じて読者が論理的かつ段階的に学べるよう構成されており、読者自身が細胞生物学の覚えやすい概念的枠組みを掴むことができる。こうした枠組みを知っておくことで、刺激的な発見が新たに押し寄せてきても理解し、批判的思考を持って評価することができるだろう。これこそが、Molecular Biology of the Cellの7回に及ぶ各版で私たちが試みてきたことである。
(引用元:細胞の分子生物学 第7版 著者 ブルース アルバーツほか 日本語版監修者 中村桂子 冒頭「ⅲ」原書序文 より一部引用)
書籍にしかナイもの
書籍って、著者のストーリー起承転結丸ごとなんですよね。全体として何を伝えたいのか?を感じながら、自分が今、読んでいる部分の「役割」「パーツの意義」を味わいながら読むことができる。そして関連する記述へとスイスイ引き込まれていく。
何より、この分厚い本の重みをズッシリ感じながらページを開く・・・これは、デジタルではできないことです。
掻い摘んで欲しいところだけ引っ張ってくるWEBサーチとは、本質的に違う。物理的に存在する書籍の重みには、著者の想いが丸ごと入っています。
従来版の第6版と、最新版 第7版で「内容」は何が変わったか?
冒頭の「ⅵ」読者への案内 によれば、「各章は大幅に更新されている」と示されています。比較してみると図や写真も多くが刷新されているので、けっして第6版の二番煎じではありません。最新情報・表現に進化した「アップデート版」です。
特に、原版が刷新されたのは新型コロナパンデミックの真っ只中でしたので、COVOID-19関連の記述が各章に登場すると共に、進むゲノム解析に伴い随所に刷新されているようです。旧版をお持ちの方も、「最新版」にアップデートする価値は充分にあると僕は思います。
この教科書は、「解明されていること」「未解明なこと」も、ハッキリ書かれています。今まさに学ぶのであれば、この期間に解明されたことを盛り込んだ、第7版をオススメします。
なんと第7版は、価格が下がった??
昔ほど書籍が売れないこの世の中、あらたな刊行物は固定費回収のため価格が上がるのが一般的だと思います。しかし・・・なんとこの第7版は価格が下がっているのです。
<第6版の価格>本体22,300
<第7版の価格>本体20,000
この本は、主として医学系の教科書として活用されるが、広く生命科学に携わる人、そして専門外の人にも活用してほしいという旨の記述が、日本語版 翻訳監修の中村桂子先生の「翻訳にあたって」(冒頭 ⅳ)に示されています。
出版社が第6版と第7版で異なっています
第6版は、科学誌でお馴染み「NEWTON PRESS社」
立体感のある、ホログラムにも似た(ホログラムではない、重ね印刷)雰囲気の表紙です。
第7版は、医学書でお馴染み「メディカル・サイエンス・インターナショナル社」
原版に似た、平面的な印刷の表紙です。
僕の雑感
今の時代、このような日本語版書籍を新たに生み出すのはとても難しいと思います。この書籍に携わった皆さんは、試行錯誤しながら協力者を募り、「価格を引き上げることなく」第7版日本語版を誕生させてくれたのだと思います。
それは、「より多くの人に役立てて欲しい」という願いあってのことなのでしょう。
このような貴い書籍を支持する人が増えれば、世の中に届く知見はもっと深く高度になっていきます。逆に、WEBで「無料で」学識を仕入れる人が増えると、経済の仕組みが破綻し、オリジネーターが高度な情報を提供できなくなる。これにより、情報の質はどんどん衰退してしまう気がしてなりません。(受け売りが受け売りを呼ぶ希薄なWEB情報循環)
真剣に学ぶ皆さん、ぜひ、対価を払ってこの素晴らしい最新知見の宝庫、「細胞の分子生物学 原書第7版」を手に入れてください。
「情報の質」は、利用者・消費者がつくっている。どうか志高く、「学びに対価を払う」世の中であって欲しいものです。
今なら、第7版日本語版 第1版第1刷が手に入る
この書籍の存在に敬意と感謝を込めて、ぜひ、お手元に。
また何年か経ち、将来第8版も、原版・日本語版ともに世に贈りだしてくれることを切に願います。
ますますのご発展を!ありがとうございました。
2級芝草管理技術者 プラチナグリーンアドバイザー 土づくりマスター 緑の安全管理士
芝生の雑学 東京40まいる