こんばんは!
アガサ・クリスティーの「茶色の服の男」(中村能三訳、1982/8、ハヤカワ文庫):これはあとがきが面白かったのでそこから入りたいと思います。著者は数藤康雄さん。クリスティーの二大探偵はポアロとミス・マーブルでどちらも老人ですが、「若くて魅力的な女性の登場する冒険小説風メロドラマ的ミステリーも結構多いのである」。その作品例として挙げられているのが、本作と「秘密機関」(「秘密組織」という邦題もある)、「七つの時計」、「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」、「死への旅」だそうです。
私は、「秘密機関」(「秘密組織」という邦題もある)のタペンスの大ファンでして、タペンスのシリーズは大事に積読しつつ読む予定です。
さて、本作のヒロイン、アン・ペディングフェルドも活きのいい若い女性です。お父さんと二人暮らし。父親は考古学者でその手伝いをしてはいますが、あえなく父は肺炎で他界します。学問にしか興味がなかった彼は経済的に十分な資産など残してくれるはずもなく、アンはほぼ無一文。見かねた父親の弁護士の勧めでロンドンの自宅に居候させてもらいますが、事件に遭遇します。地下鉄で男性がホームから転落して感電死したのです。
アンは、感電死した男性のもとに駆け付けて自分は医者だ、と名乗る男性に違和感を覚えます。彼は死者の懐をさぐって何かを持ち出したのでは?その偽医者が落とした紙切れに書かれていた、「17.1 22 キルモーデン・キャッスル」の謎は?一見地名に見える「キルモーデン・キャッスル」は、南アフリカ行の船の名前でした。そのことに気が付いたアンはなんとその船に乗り込みます。へ?南アに行く気ですか?
父親の死後、アンは思っていました。私は「女流冒険家アンナ」になるの。
この事件は南アのダイヤモンドの利権にかかわる陰謀に関わっていました。冒険のレベルを超えた事件に自ら飛び込んでしまったアンは命懸けの事態に直面します。後悔先に立たず。
破天荒なヒロイン、アンの大冒険と、彼女が巻き込まれた陰謀の大きさ、もう危険すぎる!
「秘密機関」(あるいは「秘密組織」)のタペンスも、本作のアンと同様大きな陰謀に足を踏み入れてしまいます。命懸けの事態に陥ってもくじけず、冒険を貫く活きのいい若い女性を堪能していただきたい一作です。
お休みなさい。2025/10/02