
Z世代向けSNS「BeReal.」のマーケティング支援をZ世代が担う。 エグゼキューションオフィス・PEAKが取り組むプラットフォームとの共創
2022年に博報堂グループにジョインした、エグゼキューション力を強みとするPEAKは、BeReal.、博報堂とともに、BeReal.での包括的なコミュニケーション施策を展開するサービス「BeReal.Speak」を提供。2024年にPEAKに新卒入社した、まさにZ世代が中心となりプロジェクトを進行しています。本記事ではBeReal.のマーケティング活用について掘り下げました。
公私を分ける、Z世代のSNSの使い方
- 横山
- 今回は、PEAK代表のソ・ヨンボンさん、そして2024年にPEAKに入社した山部彩さんと、Z世代に広がっているSNSアプリ「BeReal.」についてお話しします。
山部さんは今、BeReal.の企業アカウント運用を担当しているんですよね。
- 山部
- はい。入社1年目で任せてもらえたことには驚きましたが、学生時代から使っているアプリでもあったので、“私だから”できることもあるのではないかとやる気になったのを覚えています。
- 横山
- 山部さんは、まさにど真ん中のユーザーですよね! 後ほど、実例としてECモール「Qoo10」のアカウント運用についても聞いていきますが、まずは私からZ世代のSNS利用の現状を紹介したいと思います。
ここ数年、ショート動画が流行したことで投稿した動画が意図せずバズり、多くの人の目に触れるという事象が起きやすくなりました。
インフルエンサーになりたい人にとってはまたとないチャンスですが、そうでない人からしたらそれはリスクになります。また、SNSの投稿が、将来のキャリアや活動に大きく影響するということもわかっています。
そういった背景から、公私でSNSアカウントを分ける人たちはさらに増えたように感じます。
“公”のアカウントでは誰に見られてもいいように、ポジティブな投稿や、バズることを狙った投稿を。一方で“私”のアカウントでは、ネガティブな部分も含めて飾らないありのままの自分を発信しています。
「自分を理解している身近な人のみと、クローズドなコミュニケーションを取りたい」というモチベーションの現れです。
そこに、BeReal.が持つ投稿にゲーミフィケーションの要素を取り入れたユニークさが合致して世界中に広がり、特に日本ではユーザーが増え続けているそうです。
Z世代に広がるSNS「BeReal.」のユーザー価値
- 横山
- BeReal.の月間アクティブユーザーは約450万人(2025年3月時点)、うち83%が27歳以下というアプリです。ブランドは新しいファンとのコミュニケーションの場にBeReal.を選ぶことも増えているそうです。
山部さんはBeReal.のどんなところに魅力を感じますか?
- 山部
- 他のSNSといちばん異なるのは、ユーザーが自分のタイミングで投稿するのではなく、1日1回、BeReal.サイドから通知が来たタイミングで写真を撮って投稿することです。
私はアプリからの通知はオフにしていることが多いのですが、BeReal.は通知を逃しません(笑)。
通知に合わせて開く割合は、一般的には低いと思いますが、BeReal.では6割以上がアクションにつながっているというから驚きです。
アプリの撮影ボタンを押すと、スマートフォンのフロントカメラとバックカメラが同時に作動し、自分の目の前にあるものと、それに向き合う自分の顔が映し出されます。
これが盛れないんです!(笑)
- 横山
- そう(笑)。仕組み上、“映え”を狙えないんですよね。
- 山部
- はい。撮った写真は加工ができず、投稿も基本的には通知が来て2分以内に行うルールになっています。撮り直しの回数や、2分を超えた時間がフォロワーに表示されるので、その数字が多いとダサい。皆がありのままの自分を投稿しているのに、よく見せようと必死さが伝わるのはNGです。
- 横山
- 毎回、自撮りを、それも素の自分を投稿するのって少し抵抗あるんじゃないかと思うのですが、山部さんはどうでしたか?
- 山部
- 私も、周囲の友達が使い始めて使ってみたものの、最初は抵抗がありました。でも皆が載せているし、そもそもフォローが申請制でお互いフォローしないと見られないので、だんだん慣れていきました。寝起きでも通勤中や食事中でも、今は自分の日常を切り取る、記録のような感覚で使っています。
企業発信の新しい形を支援するサービス「BeReal.Speak」
- 横山
- 2024年11月に日本法人が立ち上がったタイミングで、いち早くBeReal.、博報堂、そしてPEAKで「BeReal.Speak」というサービスを準備し、翌月にリリースしました。
ただ新しいプラットフォームだからという考え方で動いたのではなく、BeReal.がショート動画プラットフォーム同様に、生活者起点(特にZ世代)だったことと、クローズドアカウントが増えたことにより、アクセスしにくくなっている彼らとコミュニケーションの機会を作れること。また、ゲーミフィケーションを用いた投稿スタイルが従来のクリエイティブのカタチと一線を画すものだったという3点から可能性を感じたのです。
通知と同時にユーザーの多くが同じ方向を向いて発信をするサービスなんてなかなか無い!
- ソ
- 「BeReal.Speak」は、国内初のBeReal.マーケティング支援サービスになります。このリリースをきっかけにPEAKへの問い合わせも増えました。うまく業界をリードできたんじゃないかと思います。
- 横山
- 私は以前、TikTokが日本に参入した際もマーケティング支援チーム「TiQuick」を立ち上げました。やはり、支援体制づくりが速いと圧倒的な優位性があり、多くの企業から興味を持っていただけるだけではなく、新たな市場にチャレンジする広告主様を自信を持って後押しすることができます。
その経験を活かし、今回も企業の期待に応えられるよう、これからのZ世代向けアプローチのカギとなるBeReal.といち早く協力関係を築いて牽引していきます。
博報堂DYグループはこれまでも、プラットフォーマーとパートナーになって、クリエイティブ視点でビジネス市場を拡大してきた経験があります。
BeReal.では、メディバイイングの部分ではHakuhodo DY ONEとも協業して、グループのシナジーを生かしていきます。
- ソ
- エグゼキューションにこだわるPEAKは「BeReal.Speak」立ち上げにあたり何を強みにしようか横山さんと山部さんと一緒に考えました。そこで、以前ご紹介をした「ユーチュー部」などの運営を通して培ってきたコミュニティ視点を提供価値にしようと決めたのです。
- 山部
- 実行を任されているPEAKには大きく、「BeReal.研究所」「コミュニティSpeakZ」「BeReal.プラン」という3つの機能を作りました。
まず「BeReal.研究所」は、クローズドな環境であるフィードを日々リサーチし広告事例やZ世代が実際にどういった撮り方をしているのか、今のトレンドを提供します。
次に「コミュニティSpeakZ」は、実際にZ世代のメンバーが定期的に集うコミュニティ組織です。企業投稿ならこういうのが見たい、こういう広告はスキップしてしまう、などの実際の声を捉えるだけでなく、どうしたら“ブランドラブ”が育つかという点も一緒に考えながら、広告に生かしています。先ほど話をしましたが、ユーザーがありのままの投稿をしているのに、企業が他SNSと同様に作り込んだ発信をしていると、イメージダウンに繋がりかねません。そういったギャップを埋める機能です。
また、参加する学生メンバーにとっても、こうした活動が就活や今後に役立てば、と思っています。
そして「BeReal.プラン」は、具体的なプラニングと運用、ロードマップを引く機能です。企業アカウントの運用と、広告出稿のノウハウを蓄積して、次に生かしています。一般的には営業がクライアントとやり取りしますが、BeReal.Speakでは私がフロントに立ってやり取りさせていただき、PEAK社内のプロデューサーと密に連携しながら進めています。
「Qoo10の社員さんはおしゃれなはず」の期待に応える
- ソ
- 数年には、相当大きいモールになっているだろう兆しのあるQoo10が、BeReal.Speakを活用していただいたことは光栄でした。山部さんがBeRealサイドと協力しながら並走して公式アカウントを運用していますが、これまで得た知見などはありますか?
- 山部
- 前提として、友達のリアルな姿が流れてくるアプリなので、あまり浮いた投稿をしてしまうと“ノイズ”として悪目立ちしてしまうんですね。なので、その点は気を付けています。友達ではない人の日常を見てもそうおもしろくはないので、企業ブランドとつながる動機は、「役に立つ」か「期待に応えてくれる」か、だと分析しています。
具体的にQoo10のアカウントだと、Z世代に人気のECモールで韓国コスメなども多く扱っているので、「きっと社員さんもおしゃれだろう」という期待があります。リアルが受け入れられているSNSでも、企業アカウントはやはり捉えられ方が違います。実際に、あまりにリアルすぎる投稿よりも、例えば社員さんの素敵なヘアスタイルが写っているような投稿に、反響がありますね。
イメージとの乖離が少ないブランドが、“ブランドラブ”が育ちやすい、愛されるブランドになると考えています。
- 横山
- こうした新しいメディアに、等身大の若い担当者を置いていることも、注目していただきたいポイントですね。
- ソ
- そうですね。僕や横山さんだと、気を付けないとつい現代に合わない考え方や働き方をしてしまいます。でも、そうしたマインドではZ世代向けのメディアなんて絶対に運用できません。
等身大の担当者がメディアを担う意義
- ソ
- でも、山部さんやほかのPEAKの若手に、僕らが20代だったときのような熱量がないかというと、絶対に違います。ごくナチュラルに、今の時代を生きる“マイジェネレーション”のメディアやサービスに強い興味とやる気を持っているのは、接していればわかります。
僕らのときの熱量と質は違っても、十分に任せるに足る熱い思いがあるんです。
- 横山
- それは、私も感じますね、熱量の方向を間違えてはいけないと気付かされます。
- ソ
- 僕自身、若いころ、勢いのある大手クライアントを担当させてもらって自分の大きな糧になりました。今でも思い出す仕事がたくさんあります。だから今、平均年齢が若いPEAKの代表として、若手を抜擢して裁量を任せる意思決定を大事にしています。
若手に、若いメディアやサービスをマッチングして、成長の機会にしていく。メディアやサービスと一緒に人材も育っていくような環境は、クライアントにも、僕らPEAKにとっても意義があります。マーケティングはやってみないとわからないところもあるので、プレッシャーに押しつぶされないように、チャレンジを後押しできるようにいつも考えています。
同時に、もちろん30代や40代の経験や知見が生きるシーンが数多くあるのも事実です。新しいメディアをハブに、互いに学び合って成果を出していきたいと思いますね。
- 横山
- 同感です。社会人歴は違っても、例えば私と山部さんも上下じゃなく、横並びの感覚です。
- ソ
- それが本当の若返りだと思いますね、単に若者メディアをおっさんが若作りして担当するんじゃなくて。また、若手と横並びという意識や言動が、リスペクトを得られる働き方なんじゃないかな、とも思います。
今後のBeReal.クリエイティブと広告枠の開発
- 横山
- 現状では、Z世代に支持されているBeReal.ですが、ユーザー層が拡大する可能性はあると思いますか?
- ソ
- 僕は意外と、30-40代男性には広がるんじゃないかと思いますね。ぶっちゃけ、不意に自撮りすると、すごく変な写りになる、けれどそれがかえっていいんじゃないかなと。
ルッキズムからの開放という文脈で、加工できない良さは、若年層以外にも通じるのではないでしょうか。
- 横山
- なるほど。PEAKは既存メディア運用の知見も厚いので、それをBeReal.に生かす余地も大きいですよね。
- ソ
- そう思いますね。とにかく、大前提として制作段階から「それぞれのメディアに合わせてメッセージもクリエイティブも変えなければだめ」なんです。テレビCMをリサイズしてWebに、といった対応はあまり意味が無いと思っています。ただの微調整では絶対に効果は出ないので、的確に“翻訳”しないといけない。
だから、僕らは最初から各メディアに最適化したサービスを志向しています。プラットフォーマーとの協業を強化しているのも、その一環です。
- 横山
- ではお二人から、今後についてひとこといただけますか?
- 山部
- BeReal.はほかに例のないユニークなメディアで、個人的にもとても興味深いです。自分がターゲットユーザーだからこそ、やりがいがあります。どうしたら役に立ったりワクワクしたりする投稿になるか、まだまだ試行錯誤ですが、周囲の方々と連携して、自分も成長しながらビジネスを成長させていきたいと思います。
- ソ
- PEAKとしては、今後も新しいメディアに積極的に関与して、事業にも若手のキャリアにもプラスになる機会をつくりたいと思います。圧倒的なエグゼキューション力を強みに、絵に描いた餅ではない確実な実績をどんどん積み重ねていきます。
この記事はいかがでしたか?
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株式会社PEAK 代表取締役社長
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株式会社PEAK プランナー
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株式会社博報堂 共創プロデューサー
株式会社PEAK 客員CBDO(Chief Business Development Officer)