ロックマン2 Dr.ワイリーの謎(FC)
世界征服を狙うDr.ワイリーの野望を打ち砕いたロックマンだったが、平和は長くは続かなかった。
諦めきれないワイリーは、ロックマンを打ち倒す為に今度は彼自身が8体のロボットを作り上げたのである。
Dr.ライトの支援の下、ロックマンは再び出動する。
シリーズ化が決定したロックマンシリーズの2作目です。
あらゆる面が前作からの正統な進化を遂げており、執筆時点では『ロックマン11』が発売されるまでシリーズ最高売り上げを記録していました。
〜新たに加わった要素〜
今作よりステージ道中でも体力を全回復させるアイテムエネルギー缶、つまり『E缶』が登場しました。
これによって苦手なステージやボスに対して多少はゴリ押しも可能になり、挽回もしやすくなりました。
そしてステージボスのデザインとアイデアを公募する『ボスキャラコンテスト』が開始されます。
これ以降、FC時代では毎年開催され、以後の作品では後に有名になる応募者が選ばれる等、当時も今も話題を集める事態となりました。
何より嬉しいのが、待望のパスワード導入。
前作は存在しなかった為に一気にクリアしなければいけませんでしたが、ようやく少しずつでもクリアに近づくことが可能になりました。
〜確かな進化、静かな変化〜
ゲームを起動して間もなく伝わる、グラフィック・演出面の大幅な進化に驚きました。
オープニングのビル街と共に映し出される夜景、前作のエンディングのイントロから始まるBGM、そしてビル上空への移動に併せて音楽は加速、ビルの屋上で佇むロックマンが登場、そしてタイトルとタイトルBGMが流れ出す……。
前作からたった1年の間にここまでの美麗な演出を見せられたなら、否が応でも期待が高まります。
オープニングタイトル中、ロックマンはヘルメットを被っておらず、ビル風に吹かれて髪がなびいています。
スタートボタンを押すことでヘルメットを装着、そして出動と、プレイする前から細部に拘りを散りばめたこの演出は、シリーズどころかファミコン史上でも印象に残るオープニングではないでしょうか。
また、特定のボスを撃破後には、ライト博士によるアイテムサポートメカ開発に関するデモが差し込まれます。
状況が刻一刻と変化しているのだとプレイヤーに体感させるドラマチックな表現は、ロックマンのシステムを上手く利用した魅せ方です。
〜当たらずとも遠からず?〜
さて、ロックマン2といえば「シリーズ最高の難易度」と語られており、プレイしたことのない人でも聞いたことはあるかもしれません。
これは個人の感覚にも寄りますが、前作は特定のポイントが異常なまでに難しく、且つエネルギー缶に当たるアイテムが無い為に一手一手の判断が重いのに対し、本作は前作から続投の初見殺しの要素やギミックの豊富さ、危険地帯を覚えてからも要求されるアドリブ要素といった違いではないかと思われます。
本作で言うならヒートマンステージの消える足場(しかも長い)、クイックマンステージの一撃死レーザー、ワイリーステージのメガドラゴン戦が該当するでしょうか。
けれど、全体を俯瞰して見るとステージは短め、特殊武器やサポートメカ、エネルギー缶の使い方次第である程度難易度をコントロールすることは可能です。
クイックマンステージ? 知らん。
覚えて準備さえしておけば充分にクリア出来る要素は仕込んであるのですが、恐らくは“死んで覚える”というより“死ななきゃ始まらず、練習しなければ乗り越えようが無い”に近い作りが見受けられる点がロックマン2の難易度をより強いものに決定付けたのかもしれません。
〜挑戦し続けることで分かる、絶妙なゲームバランス〜
上記でステージ道中は短めと記載していますが、ギミックは豊富なのでティウンしやすく体感的にはそこまで短さを感じさせません。
例えばメタルマンステージは歯車が外れて攻撃、歯車の足場を利用して先に進みます。
バブルマンステージは前半は落ちるブロックから飛び移るアスレチック、後半は水中とステージ構成にメリハリがある為です。
1ステージの疲労感は結構大きめで、むしろステージが長かったら難易度が加速度的に上昇したかもしれません。これ位が程よい塩梅ですね。
ロックマンといえば“各ボスには数珠繋ぎで弱点が設定されている”のがお約束ですが、本作は公式で発表されている弱点武器以外にも複数の特殊武器が効果的であるボスも存在します。
例えばクイックマンの公式の弱点は『フラッシュストッパー』ですが、『エアーシューター』『クラッシュボム』『アトミックファイヤー』も効果があります。
特にクラッシュボムはダメージ効率が良い上に素直な起動の為、使い勝手は良好です。
また、一般的にはメタルマンから攻略するのを推奨されていますが、実はバブルマンとフラッシュマンもステージ・ボス自体の難易度共にそこまで高くないので、ここから始めていくのも悪くありません。
上記の弱点武器が複数あること、更にサポートメカ取得のタイミングが合わさることで、ボス攻略の手順は繰り返しプレイするほど多彩であることに気付かされます。
〜特殊武器品評会〜
ロックマンの永遠の課題と言っても過言では無い、特殊武器の格差問題。
前作に比べると鳴りを潜めたようで、やはり特殊武器の使い勝手にはまだまだ差があります。
各特殊武器の解説をワイリーナンバーズ順に行います。
☆メタルブレード
ロックマン2どころかシリーズ通しても圧倒的使い勝手の良さを誇る国宝級特殊武器。
8方向への打ち分け、高い威力、3連射可能、そして4回発射してようやく1メモリ消費という狂気の性能。
バスターよりも判定が大きい上に3回使用してから武器セレクト画面を開けば使用回数がリセットされる仕様を追い風にステージを駆け回れる正に特殊武器界の風雲児。
唯一の欠点は効かない雑魚敵がいることだが、スナイパーアーマー以外は避けて進むことが可能なのでもはや嫌味にしか聞こえない。
☆エアーシューター
斜め上に3つの竜巻を発射する。
上部の敵を狙えるのは良いが、それならメタルブレードで事足りるのが最大の障害。
だがスナイパーアーマーに効くという事実が存在する為、産廃では無い。
発射してから上部に行けば行くほど3つの竜巻の間隔が空くのも使いにくさの遠因か。
☆バブルリード
発射時に少しだけ浮いた後、地形に沿って進むパワーウェーブ特殊武器。
メタルブレード程では無いが燃費が良く、癖がないので扱いやすい。
何より最終局面で必須の武器なので、それだけで存在意義は保たれている。
☆クイックブーメラン
射程距離は短いが連射が効き、燃費も優れた武器。
効く相手なら近距離で瞬殺出来るので、メタルマンステージやメカドラゴン相手なら頼もしい。
だが、後者はともかくステージ・ボス共に高難易度のクイックマンから挑んでメタルマンステージへ足を踏み入れる道理は絶無である。
☆クラッシュボム
燃費は悪いが高威力、壁にぶつかると一定時間後に爆発(この爆発にも判定有り)し、特定の壁を破壊出来る。
メタルブレードとの差別化として壁破壊はコレしか行えず、特定のボスに必須。
そして皆一度はワイリーステージ4で涙を流す。
☆フラッシュストッパー
時間を止める特殊武器。
使用中は敵もギミックも止めてしまうが、一度発動すると使い切るまで発動(武器変更不可)し続けるという開発スタッフの底意地が垣間見える初見殺し。
難敵のクイックマンに効果的だが、体力を半分程度しか減らせないことで後は完全な実力勝負になる。
この時はクラッシュボムの株が少し上がる。
☆アトミックファイヤー
真っ直ぐに炎を飛ばし、溜めることで判定と威力が大きくなる元祖溜め撃ち武器。
3段階まで溜められるが、最大まで溜めると消費量が10メモリまで持っていかれるので使い所が難しい。しかし溜めないと使いにくい。
ウッドマンを倒すならこの武器が一番早いが、メタルブレード乱射の方が安定することも。
☆リーフシールド
ロックマンの周囲に木の葉のバリアを作る。
ちなみに十字キーとボタンの組み合わせで木の葉を飛ばすことも可能。
敵の弾を防ぐことは出来ないが、威力が高く、アスレチックステージでは頼りになる。
恐らく今作品唯一メタルブレードと競合せずに持ち場を死守した特殊武器。
☆アイテム1号
ヒートマンを倒すと入手。
上昇する足場を設置する。
最大で3個まで設置出来るので使い勝手は良い。
☆アイテム2号
エアーマンを倒すと入手。
空を飛んで直進する足場を召喚する。
乗り続ける限りエネルギーを消費するが、ヒートマンステージの消える足場では拝み倒すレベルで頼りになる。
☆アイテム3号
フラッシュマンを倒すと入手。
壁にぶつかることで登る足場を作る。
意外と元気に動くので初見ではビビる。
こうして書くと良く分かりますが、メタルブレードが世界を救う勢いで活躍するので、他の特殊武器が霞んで見えてしまいます。
もちろんワイリーステージの様な長丁場では様々な武器を使い分けた方が楽になりますが、バランスという意味では悪いんですよね……。
〜語り継がれる理由がある〜
難易度だけが一人歩きして広まった感もある本作ですが、決して理不尽な要素で構成されている訳ではありません。
何度も練習することで知識と準備が身に付けば、ステージの短さとパスワードの存在もあり、厳しい難易度だけれどリトライしやすい環境とも言え、少しずつでも前に進める要素を残してくれています。
もちろん(特殊あの頃で茶化したとはいえ)今でもワイリーステージの武器エネルギー管理は全編通してカツカツになる位のシビアさであり、アクションに自信のある方でも油断ならない要素が詰まっています。
演出面でも、スピーディーでドラマチックなオープニングから期待させ、ロックマンシリーズでは珍しいメロウなラストも印象的です。
前作から全ての部分で総じてパワーアップした本作は、シビアだけれども理不尽ではないという絶妙なバランスで保たれた、アクションゲーム続編のお手本と言っても差し支え無いでしょう。
難易度が高いのは事実ですが、有名になったのはそれだけでは決してありませんので、憶せずプレイして欲しいです。
もし途中で諦めたとしても、光る部分を見つけてくれたならとても嬉しく思います。


↑こっちは見栄えが良いのでサムネ用。
〜余談スペース〜
・本作の説明書にはロックマンのことをスーパーロボットと記載してあります。
お手伝いロボットでは……?
・執筆の為に久しぶりにプレイしたのですが、バブルマンステージに出てくるアンコウ、倒さなくても強引に抜けられるんですね!
こうやって新しい発見があるのは嬉しいです。
・ヒートマンってかわいいですよね。
もしロックマンのグッズを買いに行けるならヒートマンのぬいぐるみが欲しいです。