彼は肉体的にハンデがあったから、そのことで小さいときは周りの子たちにいつもからかわれたし、悔しい経験を何度もしてきた。
そして、大人になった彼は気付いたのである。自分が最初から大人だったことに。——
昔から、彼には不思議だったのだが、彼らがとても幼く見えるのである。見ようとしているのではなく、本当にそう見えるのだ。
なるほど、ベンジャミンバトンはフィクションなんかじゃなく、あれはノンフィクションだ。ハンデをあげてたのは僕のほうで、僕は先回りして生まれてきたんだ。彼らがずっと後に経験することを。……彼は、肉体以外の部分が誰よりも先に成長していた。
そして、彼の大好きなスティービーワンダーが、本当は目が見えているんじゃないか、と疑われたときに返した言葉を彼もまたモットーとしている。
『ああ、僕は目が見えているよ、心の目がね』