NHK ONE移行トラブル
2025年10月1日、NHKのインターネット配信サービスが「NHKプラス」から「NHK ONE」へ移行した。改正放送法により、NHKのネット配信が「必須業務」に格上げされ、同時配信、見逃し配信、ニュース、防災情報を統合した新プラットフォームとしてスタートしたのである。
しかし、移行初日0時から大規模な不具合が発生。ユーザーのアカウント登録や移行手続きが滞り、視聴不能に陥るケースが続出した。
主な問題は、認証コードメールの不着(特にGmail、docomo、auメール)と登録時のタイムアウトエラーである。
NHKは公式サイトで「原因調査中」と謝罪したが、復旧見込みは未定である。
影響はNHKプラス登録者(推定数百万人)に及び、Xでは「NHK ONE」「Gmail」がトレンド入り。「ドジャース戦が見られない」「お年寄りが困る」といった実害の声が殺到した。
報道によれば、ITmediaは「移行期間なしが混乱の原因」と指摘し、読売新聞は「受信契約との紐付け必須が影響を拡大」と報じた。ユーザーの怒りは、NHKの事前PR「スムーズな移行」との乖離に集中している。
なぜこんなわかり切ったことが起きたのか
このトラブルは、計画段階でのリスク見積もりの甘さが主因である。まず、NHKは移行期間を設けず、10月1日0時に一斉切り替えを実施した。過去の公共サービス(マイナンバーや神奈川県入試のシステム障害)では、一斉アクセスによるサーバー負荷や認証エラーが頻発しており、多数のX利用者からも「移行期間なしは危ない」と事前に警告していた。
報道では、日本経済新聞が「放送法改正の期限に合わせた強行スケジュール」と分析した。
認証コード不着問題は、メールプロバイダのスパム判定やNHKサーバーの送信制限が原因とされるが、ITmediaは、Gmail等のフィルターがNHKの大量メールをブロックした可能性を指摘している。技術背景は「メールプロバイダのレピュテーション低下」であろう。類似トラブルは他サービス(銀行やECサイト)で既知であり、NHKの負荷テスト不足が露呈した。
さらに、移行手続きの複雑さ(Webとアプリの2ステップ)が利用者に負担を強いた。ようするに「お年寄りに極めて使いづらい」。
NHKプラスの過去の不具合(2024年の地域配信エラー)も教訓とならず、計画はユーザー規模や多様性を軽視し、予見可能なリスクを放置した結果である。
NHKそれ自体の問題
このトラブルは、NHKの組織的体質を浮き彫りにする。
ユーザー視点の欠如が顕著である。投公式サイト(https://www.nhk.or.jp/nhkone/)の謝罪文は復旧見込みを示さず、ユーザー待機を求めるのみである。
SNSでは「受信料返せ」の声が上がり、受信料制度への信頼失墜が顕著である。11月以降の契約確認強化がさらなる混乱を招く懸念もあり、NHKのデジタルシフトは大きな試練に直面している。実際、NHKは受信料契約者の利便性を二の次にしたのである。
放送法改正でネット配信を必須業務化する中、拙速なスケジュール優先が混乱を招いたともいえるが、公共機関のITプロジェクトの失敗パターンでもある。
NHKの技術的無理解も問題である。上層部が放送と通信の違いを分かっていないのだろう。報道では、AV Watchが「Fire TV Stickなどデバイス対応も不十分」と報じ、アプリ版のエラー多発を指摘した。
過去のNHKプラス不具合(地域配信エラー)から学習せず、同じ過ちを繰り返した。加えて、NHKの対応の遅さも批判の的である。
さて、NHKは放送で謝罪するのだろう。え? 誰が謝罪するの?
| 固定リンク