掌編

こんにちは〜、よひらです〜！ 九月に入り、通勤時の電車やバスも学生達の姿が戻ってきて夏休み前の朝の風景が戻ってきた感があります。残暑はまだ続いていますが、いかがお過ごしでしょうか。 さて、表題のモチーフで俳句と散文を綴ってみましたので、お時間のある時にでもご覧頂ければ幸いです。（下記をクリックいただけると読むことができます。） kakuyomu.jp kakuyomu.jp kakuyomu.jp ご覧頂きありがとうございました〜！ ランキング参加中Think<書くことは考えること> ランキング参加中言葉を紡ぐ人たち ランキング参加中KADOKAWA × はてな小説投稿サイト「カクヨム」 ラン…

半袖では肌寒くなって、長袖を着る。カーディガンを羽織るかどうか迷い始めた頃、小雨が続く。台風が秋を連れ去って、吐いた息が白くなった頃、冬のにおいを感じる。いまだに、十五歳のときに遺書を書いた季節がきたと思う。わたしの首を絞め続けた希死念慮は、もうとっくのとうに消えて行ったのに木々に電飾を括りつけ、街がぎらつくと、あの切実だった日々のわたしが、わたしを見つめる。書いた内容はもう覚えていないのに。 一時の気の迷いですよね、思春期の頃ってよくありますよね、わたしもそうでしたよと遺書の話をすると異口同音に語られたことばに首を縦に振り、右から左に流し続けた。生きていればいいことあるよと、あのとき、どこか…

きょうのタスクをすべて終え、愉悦に浸っていた。 達成感を積み重ねることは気持ちがいい。読書をしながら寝落ちることができたら、このうえない幸せだろう。 ベッドに横たわり、Kindleで最近お気に入りの作家の小説を読む。 Kindleの向こう側、何かが動くのが見えた。 一人暮らしのわたしの家でわたし以外の生物が動くことはないのだ。 最近視力が落ち始めているし、気のせいかもしれない。 気にせず読書を続けると、わたしはふたつの瞳でしっかりとその物体を捉えてしまった。 嘘だろう——。 わたしは潔癖症だ。アイツが部屋にいるこころあたりがないのだ。 きっとどこからか侵入してきたのだろう。 数年前に一度部屋で…

携帯電話の画面に灯った光は弱く、ここまでの夜道を照らすことさえできなかった。きっと、表示されているメッセージが「さよなら」だけだからだろう。残りの充電が十パーセントになったという通知が来てから、すでに一時間は経っている。 制服の上に着ている黒いジャケットのファスナーを閉め、空気を一口分だけ吸い込んだ。この時間は時も止まる。吸い込んだ空気には排ガスも自然すらも感じさせない。 信号は赤く光っている。ボタンを押されたことにも気がつかず、いない歩行者が来ない自動車に轢かれることを憂いている。やけに長い待ち時間が終わるまでの間、これ以上体温が奪われないように歩き回ることにした。 がりっ 疲れ切った両足が…

畳の目をつるつると滑るように小さなクモが明るい陽射しの方へ歩いていく。その庭先で雪冠の椿が、ぽたり、と一輪落ちた。雪がやっと止んで春が近づき、なのにまた雪が降りと繰り返し、もうさすがにいよいよ、と思った矢先にまた降った。この雪が最後になればいいと、晴れた午後に積もる白へ眩しく思った。まるでぼくのこれまでを辿るかの このふた月ほどの季節の行き戻りを、このまま晴れていて欲しいと願わずにはいられなかった。途中、畳のヘリに脚が引っかかってうまく進めないでいるクモを指に掬い、縁側の明るく光が射す場所にそっと降ろしてやった。クモは慌てて逃げるように、ぴょんっ、ぴょんっ、と何度か跳ね、そのまま緩い風にひゅっ…

シャクヤクが咲いた。昨日スーパーの一画で売られているのを見かけ、蕾が大きく膨らんだものをふたつ買った。団地の自室に帰り、夜のうちに活けてしまえばよかったのに、疲れていたので、「明日でいいか、休みだし」と、水を張ったボールに買って来たそのままを浸け、シンクに放置していた。甘い匂いに目を覚ますと、夜になっていた。疲れたと言いつつ、昨夜はなかなか眠る気分になれず、横になればすぐに深く落ちるだろうに、その眠気に逆らい、だらだらとテレビを見て結局明け方に力尽きて眠った。疲れているときほど、こういう矛盾したことをしてしまうことがある。キッチンへ行くと昨日のシャクヤクが、立てかけたシンクの仕切りにもたれ、薄…

昨年末、 『文芸思潮 第17回銀華文学賞』 の発表があり、お陰様で「入選」の栄誉をいただきました。ありがとうございます。副賞として、すばらしい本も頂戴し、しっかりと勉強させていただきたいと存じます。 さて、この銀華賞は40歳以上が応募条件で、それゆえ「シルバー世代＝銀」なのか？？ などと不謹慎なことを思いながら応募したのが、昨年2024年の4月のことでした。三次選考通過を知ったのが、昨年の9月頃？ だったでしょうか。そして2024年12月の結果発表、となりました。祝勝会が今年2025年の2月2日に行われたようなのですが、お誘いの連絡を頂いたのが、その2週間くらい前のことでしたので、さすがに既に…