トヨタ GRカローラ 「骨格はカローラスポーツだが中身は別物」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

骨格はカローラスポーツだが中身は別物

2023.12.20

年式

2022年10月〜モデル

総評

最後の適正価格ICE（内燃機関）スポーツモデルか？　1000以上の高額車としてなら可能性は続くが、500クラスでは排出ガス、騒音規制などの問題からも実現が難しい。その意味で、カローラスポーツをベースにしたGRカローラは注目の一台。走行性能で定評のあったモデルに直列3気筒1.6ターボ＋6速MTをドッキングした。

満足している点

ヤリスをベースにしたド迫力モデルにGRヤリスがあるが、GRカローラはオーバーフェンダーで迫力満点ながら、やんちゃな雰囲気はなく、メイン訴求カラーのプレシャスメタルの品格とも相まって大人のスポーツモデルに仕上がった。スポーツの名門GR生まれだが、市街地走行から多人数乗車もこなす世界でも稀なスポーツモデルだ。

不満な点

欲しいとするユーザーが世界中にいるのに、供給がまったく追いついていないところが不満だ。トヨタの元町工場でかなりの部分を手作業で組み立てているのがその要因。それだけに手にした人の満足度は桁違いに高いが、同時に目立つ存在でもあり、盗難の危険にされられる。出先での駐車環境にはひときわ気を使う。

デザイン

4

好きな人にはタマラナイ、車体前後のブリスターフェンダー。これがメーカー、そして真面目なトヨタが正規モデルとして販売しているのだから驚きだ。一方、辛口にならざるを得ないのがインテリア。カローラスポーツとの違いが少なく、所有欲が満たされにくい。12.3インチモニターを選択すると運転席から左前が見えづらいのもNGだ。

走行性能

5

直列3気筒1.6Lガソリンターボエンジンは、高い過給圧によって304PS／37.7kgf・m（2名乗車モデルの特別限定車“MORIZO Edition”は40.8kgf・mでギヤ比も異なる）を発揮する。エンジンは1500回転まではトルク感に乏しいが、そこから上回転領域は3気筒特有の台形トルクカーブで頼もしい。排気音も良い。

乗り心地

4

はっきりいってバネレートは高く、ダンパーの減衰力も伸び／縮みとも高め。しかし構造用接着剤を多用し、各部に補強を行った専用ボディによって、たとえ大きな凹みに遭遇しても揺れは一発で収まる。身体を面で支えるスポーツシートとの相性もよく、スポーツモデルを好んで乗る向きなら「乗り心地がいいね」と感じられるはず。

積載性

4

標準のGRカローラは5人乗りで全長は4410mmだから、後席を利用した際の積載能力は高くない。6:4の分割可倒式のリヤシートを倒せばなんとか170cm程度のスキー板を積みこむことができる。とはいえカップホルダーやセンターコンソールは使い勝手に優れ、グローブボックスも完備する。スポーツモデルながら実用性あり。

燃費

5

190PS／Lのいかにもスポーツエンジンでカリカリチューン。しかし、同時に高効率エンジンなので丁寧に乗ると17〜18km/Lの実用燃費数値が引き出せる。筆者による実測値では、一般道路を流れに沿って走らせて13〜14km/L程度だった。ちなみに、サーキットでの全開走行では3〜4km/L程度の値に落ち込む。

価格

4

標準仕様のGRカローラで525。購入はできないがMORIZO Editionは715。単体で見れば高価なことに変わりはないが、内容からすれば標準仕様は適正価格に近いと思われる。問題は転売され中古車価格が異常に高騰している点。トヨタも販売時に一定の制限を設けるなど対策を施している。