スズキ アルト 「車重の軽さが走りの楽しさを誘う」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

車重の軽さが走りの楽しさを誘う

2025.3.27

年式

2023年12月〜モデル

総評

アルトのラインアップでもっともベーシックなグレードが「A」。FFは106万4800とリーズナブルだが、必要にして十分な装備を持つ。パワーユニットも吸排気VVTを備えたマイルドハイブリッドではないけれども、軽量ボディを生かした走りは小気味よく、経済性も優秀。ビジネスユースが主体の設定ながら、買い物など普段の足としても納得の出来る乗り味が確かめられた。

満足している点

2ボックスのボディでありながら着座位置が高めのおかげで死角が少なく、取りまわし性も抜群。最小回転半径4.4m（！）と小回りも利き、数ある軽の中でも特に運転のしやすいモデルと言える。見た目ではキャビンが小さく感じられるものの、実際に乗り込んでみると開放感があり、後席は足元や頭上まわりにも十分な広さがある。内装にはそれなりの割り切りがあるが、ファブリックのシートトリムや色使いはベーシックモデルとしては悪くない出来映えだ。

不満な点

試乗しているうちに体が馴染んでしまったが、Aタイプにはシートのハイトアジャスター、ステアリングのチルト＆テレスコピック機能は未設定。スタートスイッチがないのでいちいちキーを差し込む必要があり、サイドミラーは手動で調整し、格納機能も省かれている。また、リヤドアのウインドウははめ殺しで、開閉することは出来ない。安全装備は他のモデルと多少の違いがある程度だが、FFでもリヤワイパーは標準装備にしてもらいたい。ボディカラーはツートーンカラーを含めて全12色を設定するが、Aタイプについてはモノトーンの3色しか選べない。

デザイン

3

2021年12月のデビューから3年半が経過しているが、内外装デザインに変更はなく、ボディカラーの設定が一部変わった程度。いわゆるベーシックな軽でありながら上級グレードに設定される2トーン塗装モデルはカジュアルな仕上がりを見せている。今回試乗したAタイプはホイールカバーの付かないスチールホイールを装着するが、アルトにはこれがよく似合う。

走行性能

5

Aタイプの車重は680kgと軽い。搭載されるエンジンは最高出力46馬力、最大トルク55Nmとスペックは控えめだが、走りは驚くほどの軽やかさ。ターボがなくても伸びやかな加速が得られ、高速での100km/hクルージングもそつなくこなす実力がある。それ以上の速域となると重さを感じるようになるが、普段の足としてはこれで十分。操縦安定性も実用域ではこれといった不満を感じさせない。

乗り心地

3

しっかりとしたボディ、スタビライザーの装着されない足まわりは乗り心地の面でも有効で、路面のギャップを通過しても不快な乗り味とならない。ハイバックシートの座り心地も意外なほど良好で、長距離を走っても不快な印象を受けなかった。

積載性

3

荷室の造りは他のグレードと共通。4人乗車時の奥行きは425mm、後席シートバックを倒すと1225mmとなる。さすがに広くはないが、普段の買い物には十分な容量が確保されている。

燃費

5

東京から軽井沢までの一般道を190km走行して21.8km/Lをマーク。妙義松井田から三郷南までの高速走行では26.5km/L（いずれも燃費計）を実現するなど、ちょっとしたハイブリッド並みの経済性が得られる。

価格

5

デビュー当初よりも値上がりしており、いまや100を超えるモデルとなった。しかし、ライバルよりも安全装備は充実しており、メーカーオプションのバックアイカメラ付きディスプレイオーディオ（5万5000）を装着すると、スマートフォンと連携して地図アプリなどの表示も可能。必要十分な装備と軽快な走りが100少々で購入出来る。さらに装備の充実した上級グレードもあるが、シンプルに徹したAタイプもなかなか魅力的な存在だ。