昼間の用事を済ませて帰宅したら、まだ15時前だというのになんだか一日が終わったような開放感に包まれて、急に眠くなり、リビングの床に寝そべってうとうとしていた。こうやってなんとなく一日が過ぎてしまって夜になって後悔する、なんて過ごし方を、もう何年も続けている。本を読んで日々成長を、なんて唱えて仕事をしているにもかかわらず、いつまでたっても成長しない自分にうんざりする。
このままではすぐに夜になってしまう。そう思って起き上がり、お湯を沸かし、丁寧にコーヒー豆をドリップし、読みかけの本を本棚から引っ張り出した。コーヒーを飲みながら本を読んで寛ぐ。そんな時間が自分にとって何よりも大事であり、その時間の快適さを他人に伝えることを、自営業の根源的な目的としているのではなかったか。他人には「コーヒーを飲みながら寛ぐ時間のお供にぜひ本を」なんて言いながら、自分自身がその快適な時間をつくることを怠っていたと気づいた。コーヒーを飲みながら、読書。休日ならではののんびりとした時間が、平日の仕事で疲れた身体を確実に癒し、明日からの活力を生むのだということを、自身の行動でもって証明しないかぎり、説得力のある言葉で他人に本を紹介することはできないだろう。そんな使命感に襲われた午後だった。
本を紹介する仕事の中で、他人に発する言葉が大きな力をもつのは、それを自分自身が実行し、確かであると検証し終えたときである。そうでない言葉は「口からでまかせ」であり、説得力がないと言われても反論できない。ただでさえ言葉の集合体である本を商う身。実行したことで得た経験に裏打ちされた言葉だけがもつ力を、あなどっていてはいけない、と自らを叱咤する。