本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、BIPROGY 代表取締役社長 CEOの齊藤昇氏と、日本オラクル 執行役員 クラウド事業統括 クラウド・パートナー・エンジニアリング統括の吉川顕太郎氏の「明言」を紹介する。
「当社は開発受託者から内製化の伴走者、そして価値共創パートナーへと進化する」
(BIPROGY 代表取締役社長 CEOの齊藤昇氏)

BIPROGY 代表取締役社長 CEOの齊藤昇氏
BIPROGY 代表取締役社長 最高経営責任者(CEO)の齊藤昇氏は、同社が先頃開いた2025年度(2026年3月期)決算の発表会見で、AI時代の同社の方向性について上記のように述べた。「開発受託者」とはシステム開発を請け負う従来のシステムインテグレーター(以下、SIer)のことだ。デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展とともに内製化に力を入れるユーザー企業が増えつつある中、その「伴走者」になるというのは、SIerとして覚悟を持った発言だと感じたので、明言として取り上げた。
「AI技術の進化は、ビジネスモデルの構造変化をもたらすとともに、社会やお客さまへ提供するソリューションやサービスの価値を高める新たな成長機会となる」
齊藤氏はAI技術の進化に対する基本認識としてこう述べ、AIを取り巻く事業環境をどう捉えているか、そしてその認識による同社の方向性について、次のように話した。
まず、AIを取り巻く事業環境については、「従来型のシステムの開発や運用の在り方に構造変化をもたらす大きな転換点であり、AIによる自動化の進展を背景に、工数依存型(人月型)開発の在り方が変化している。中長期的にはお客さまにおいてのIT内製化が進展していく。そうした環境下では、お客さまが求める価値の重心は業界知見に基づく、業務およびシステム全体の設計とAIガバナンスの両立へシフトしていく」との見方を示した。
また、その認識による同社の方向性については、「ソリューションやサービスの高度化に加え、インフラや運用などの提供価値を向上させるとともに、当社グループの強みである業務理解に基づくシステム構築力とAIの融合により、開発受託者から内製化の伴走者、そして価値共創パートナーへと進化することを目指している」と述べた。
その上で、齊藤氏は同社グループのAI活用に向けた取り組みと推進体制について、次のように説明した。
「当社グループではAI活用を全社的に推進するため、2026年度より組成した“AI CoE”(Center of Excellence:CoE)を中核に、事業、開発、業務変革における取り組みを横断的に統合し、持続的な成長を支えている。それぞれの取り組みにおいて、事業は『AIソリューション/サービスの拡大』、開発は『開発生産性の向上』、業務変革は『業務プロセスの効率化および高度化』を掲げ、図1に示すような取り組みを進めている」

(図1)AI活用に向けた取り組みと推進体制(出典:BIPROGYの会見資料)
齊藤氏はこうしたそれぞれの取り組みにおいて、AIを活用することによって目指す姿と中長期目標についても明示した。その内容は、図2の通りである。

(図2)AI活用によって目指す姿と中長期目標(出典:BIPROGYの会見資料)
今回の明言は冒頭でも述べたように、従来のSIerには声高に言いづらいところがある。なぜならば、ユーザー企業においてシステムの内製化が進めば、SIerは要らなくなると見られてきたからだ。そうした流れを大きく変えつつあるのが、AI活用がスピーディーに広がっていることだ。
最近では、「ユーザー企業において内製化が進んでも、そこにAIをどう活用していくかという課題に一緒になって対処していく、AIに精通した伴走者のニーズはむしろ高まりつつある」との声を耳にするようにもなった。その意味では、齊藤氏が語った同社の方向性は、そうした動きを先取りしているのかもしれない。

