Hewlett Packard Enterprise(HPE)は、1年半にわたるプロセスを経て、Juniper Networksの買収を完了した。今後、Juniperは「HPE Juniper Networking」として、「HPE Aruba Networking」とともに、同社のネットワーキング事業を構成することになる。
ネットワーキング強化を進めてきた社長 兼 最高経営責任者(CEO)のAntonio Neri氏の狙いは何か。本稿では、Juniper買収完了前に開催された「HPE Discover」での同氏への独占インタビューと、買収完了後のメール取材をもとに、HPE誕生からの10年の軌跡と、AI時代に向けた戦略の全体像をまとめる。
--Juniperの買収が完了しました。現時点での計画を教えてください。
HPEはここ数年、自社の変革を進めてきた。その過程で、顧客の差し迫ったニーズに応えるため、主要な業界トレンドにポートフォリオを合わせてきた。現在、われわれはネットワーキング、ハイブリッドクラウド、AIが前例のない形で融合する新たな時代の分岐点に立っている。HPEはこの変化にただ適応しているのではなく、自らがその変化を推進している。
AIはあらゆるものを変革するが、その成果はデータとインフラの質に左右される。優れたデータとインフラがなければ、AIも優れた成果を生み出すことはできない。そして、その基盤となるのがネットワークである。
Juniperの統合により、HPEは飛躍的に強化され、モダンなネットワーキングスタックを含むクラウドネイティブかつAI駆動のポートフォリオを提供できるようになる。
具体的には、JuniperとArubaの組み合わせにより、「ネットワークのためのAI」と「AIのためのネットワーク」の両面から顧客を支援する。前者では、AIOpsの高度化と柔軟な展開を実現し、HPEならではの方法でネットワーキングとセキュリティを融合させる。後者では、ネットワーキングのシリコン、システム、ソフトウェアといった技術の全層において革新を進め、ルーター、スイッチ、ファイアウォール、コンピューティング、ストレージ、運用を含むデータセンター向けの完全なソリューションを提供する。
Juniperの買収によるネットワーキングの強化は、業界に破壊的な変化と大胆なイノベーションをもたらす絶好の機会だ。私は両組織の成果を誇りに思っており、顧客や世界に永続的な影響を与える技術を構築することに大きな期待を抱いている。
--Hewlett Packardが分社化してHPEが誕生してから10年が経ちます。分社化を実行した当時のCEO、Meg Whitman氏のブレーンとして、分社後のHPEの戦略を立案してきた立場から、この10年をどのように振り返っていますか?
Megの下で、私はエンタープライズ事業部を率いていた。この事業部門は、今後10年間に訪れるITの技術革新や市場の転換点に対して、適切なポジションにあると考えていた。しかし、そのビジョンを実現するには、これらの転換点に適していないと判断した資産を整理する必要があった。そこで、エンタープライズサービス事業やITアウトソーシング事業、そしてレガシーソフトウェア事業をスピンオフした。
Megが変革を完了し、エンタープライズ事業の指揮を執る間、私はHPEが勝負できる領域を定義し、戦略を練り、基盤を築くことに集中した。描いたのは、エッジ中心、クラウド、データ駆動型のエンタープライズである。そして2018年に、メグからバトンを引き継いだ。
分社化と同時期に進めていたもう1つの取り組みが、ネットワークの強化だった。われわれは2015年、分社化の年にAruba Networksを買収した。Arubaは当時、企業向け無線アクセスポイントで知られており、これはエッジへの投資でもあった。しかし、われわれはエッジだけでなく、より広い視点でネットワークがデジタル化のステップにおいて重要な役割を果たすと考えていた。
Arubaの買収によって、キャンパスやブランチ、IoT領域でのポジションを確立した。その後、プライベート5Gやソフトウェア定義WAN(SD-WAN)へと拡大し、AIOpsも取り込んだ。今回のHPE Discoverでは、AI Meshを発表し、今後はエージェント的なアプローチも可能になる見通しだ。
その下にあるインフラレベルでのイノベーションも継続して進めている。「HPE ProLiant Compute Gen12」や「Silicon Root of Trust」(シリコンレベルの信頼性)、クラウドネイティブの運用管理、液体冷却などの持続可能なサーバーなどがその例だ。
さらに、データ領域ではストレージ、特に「HPE Alletra Storage」が重要な位置を占めている。これは構造化データと非構造化データの両方に対応する新しいアーキテクチャーで、同一インフラ上で複数のデータプロトコルをサポートする。最新モデルの「HPE Alletra Storage MP X10000」では、ストレージアレイ上にインテリジェントなデータレイヤーを構築し、Model Context Protocol(MCP)もサポートしている。これにより、顧客はデータファブリックを通じて意味のあるデータを活用できるだけでなく、AIデータパイプラインを高速に構築することが可能になる。

