ヒョンデ インスター▲ユニークなデザインに、広い室内空間と多彩なシートアレンジを備えたコンパクトSUVタイプのBEV。軽自動車規格より一回り大きいサイズで街中でも扱いやすい

あえて4人乗りとした余裕の室内

ヒョンデは2022年に日本市場へ再参入して以来、FCEVまたはBEVとゼロエミッションビークルのみを国内導入する戦略をとっている。その新生ヒョンデのBEV第4弾がコンパクトSUVの「インスター」だ。

なんといっても全長3830mm、全幅1610mmという小柄なサイズで個性的なデザインが目をひく。ベースは韓国の軽自動車規格に準拠したキャスパーというモデルで、そのBEV版という位置づけ。本国での車名はキャスパーエレクトリック、日本や欧州など仕向地ではインスターとなっている。
 

ヒョンデ インスター▲最上級グレードの「ラウンジ」には17インチアルミホイールを標準装備。「カジュアル」以外にはルーフレールを備える

エクステリアではフロントのウインカーランプやリアのブレーキランプにアイオニック5などと共通のピクセルデザインを採用。丸型のLEDランプが愛らしい雰囲気を演出している。大きく張り出した前後のフェンダーがコンパクトカーらしからぬメリハリを与えており、後席のドアハンドルをウインドウ部に収め、そこにフロントマスクのようなアイコンをあしらうなど遊び心がきいている。

インテリアには、メータークラスターとダッシュボード中央のナビ画面と2つの10.25インチディスプレイを配置。前席はベンチシートで左右への移動もしやすい。またあえて乗車定員を4名とし、後席にはリクライニング機構とスライド調整機能を搭載しており、このサイズとしては広々とした空間を実現している。

シートアレンジの多彩さもこの車のウリのひとつ。5:5分割可倒式の後席だけでなく、運転席/助手席ともにシートバックのフルフォールディングが可能で、長尺モノの搭載はもちろんアレンジを加えれば車中泊もできそうだ。最上位グレードのラウンジ(Lounge)には、シートヒーターだけでなくシートベンチレーションまでも標準装備。さらに、前席だけでなく後席用にもType-CのUSBポートが備わる。ちなみに、車内外で電気機器を使用できる「V2L(Vehicle to Load)」機能は、エントリーモデルを含め全車に標準装備だ。
 

ヒョンデ インスター▲インテリアカラーはブラックとベージュを用意する。ラウンジにはアンビエントランプも採用された

駆動用バッテリーの容量はエントリーグレードのカジュアル(Casual)が42kWhで最高出力97ps、最大トルク147N・mを発揮。ヴォヤージュ(Voyage)とラウンジはバッテリー容量49kWhで最高出力115ps、最大トルク147N・mと同一。一充電走行距離はヴォヤージュとラウンジが458kmとなっている。

最新のADASも満載している。高速道路で前方車両との車間距離を維持する高速道路ドライビングアシスト(HDA)をはじめ、ペダルの踏み間違いによる急加速を抑制する、ペダル踏み間違いセーフティアシスト(PMSA)をヒョンデとして初採用する。とても使い勝手がいいと感じたのがウインカーをオンにするとメーター内に左右後方の映像が映し出される点。右左折時の巻き込み予防に有用だ。
 

足回りとレスポンスは日本に合わせてチューニング

ヒョンデ インスター▲前輪駆動のみをラインナップ。日本の道路事情に合わせ、足回りがソフトにチューニングされている

走行性能に関しては、ジョイント部の突き上げがきつい首都高速などでもテストを行い日本仕様では足回りをソフトに、また急加速しないようアクセルレスポンスに変更を加えるなど日本の開発チームが独自のチューニングを施したという。

コンパクトサイズゆえ乗り心地にはそれほど期待していなかったが、音、振動対策も含めてクラス以上の快適性を実現している。そして加速性能も不足ない。アクセルペダルを踏み込めばBEVらしいスムーズな加速が得られる。また、回生ブレーキの強度は4段階もしくは自動モードの中から選択可能だ。

これだけの充実内容でエントリーのカジュアルが284万9000円、最上位のラウンジが357万5000円というから驚く。さらに2025年度のCEV補助金が56万2000円も出るというのだから……。

小さなボディに最新装備を満載するのは日本の軽自動車の十八番だけれど、それを奪われてしまったと感じる出来栄えだった。日本市場におけるBEV普及の足がかりになるモデルかもしれない。
 

ヒョンデ インスター▲特徴的なピクセルデザインのリアランプを採用
ヒョンデ インスター▲フロントバンパーに充電口を配置。付属のV2Lアダプターを使えば車外の家電などに給電も可能
ヒョンデ インスター▲メーターパネルは10.25インチディスプレイを採用、メーター表示などを変更できる
ヒョンデ インスター▲アイオニック5同様、先端をひねって操作するコラムシフトを備える
ヒョンデ インスター▲ヴォヤージュとラウンジには合成皮革のシートを標準装備。ラウンジではベンチレーション機能まで備わった
ヒョンデ インスター▲後席には左右独立式シートを採用、リクライニングと前後スライドが可能となっている
ヒョンデ インスター▲前席シートにフルフォールディング機能が備わるなど、多彩なシートアレンジが可能となっている
ヒョンデ インスター▲ラゲージ容量は通常で280Lとなる
文/藤野太一 写真/小林岳夫

ライター&エディター

藤野太一

カーセンサー、カーセンサーネットの編集デスクを経て、カーセンサーエッジの創刊デスクを務める。現在はフリーランスのライター&エディターとして、自動車誌をはじめビジネス誌、ライフスタイル誌などにも寄稿する。

ヒョンデ初の量産BEV、アイオニック5の中古車市場は?

ヒョンデ アイオニック5

2022年に日本市場へ再参入したヒョンデ初のBEV。ピクセルデザインを取り入れた直線基調の個性的なスタイル、3000mmのホイールベースを生かした広い室内空間などを備えたクロスオーバーモデル。ウインカーレバーをステアリング右側に配置するなど、日本市場に合わせた改良も行われている。2024年にはハイパフォーマンスバージョンのNも追加設定された。

2025年5月上旬時点で、中古車市場には20台程度が流通しており、支払総額の価格帯は290万~490万円。上級グレードのラウンジのAWDが半数程度を占めている。
 

▼検索条件

ヒョンデ アイオニック5× 全国
文/編集部、写真/ヒョンデ モビリティ ジャパン

【試乗車 諸元・スペック表】
●ラウンジ

型式 ZAA-B1511 最小回転半径 5.3m
駆動方式 FF 全長×全幅×全高 3.83m×1.61m×1.62m
ドア数 5 ホイールベース 2.58m
ミッション その他AT 前トレッド/後トレッド 1.4m/1.42m
AI-SHIFT - 室内(全長×全幅×全高) 1.83m×1.38m×1.42m
4WS - 車両重量 1400kg
シート列数 2 最大積載量 -kg
乗車定員 4名 車両総重量 1620kg
ミッション位置 不明 最低地上高 0.14m
マニュアルモード -
標準色

アトラスホワイト、トムボーイカーキ

オプション色

アビスブラックパール、バタークリームイエローパール、シエナオレンジメタリック

掲載コメント

※交流電力量消費率(国土交通省審査値)WLTCモード 119Wh/km 市街地モード103Wh/km 郊外モード110Wh/km 高速道路モード132Wh/km
※一充電走行距離(国土交通省審査値)WLTCモード 458km

型式 ZAA-B1511
駆動方式 FF
ドア数 5
ミッション その他AT
AI-SHIFT -
4WS -
標準色 アトラスホワイト、トムボーイカーキ
オプション色 アビスブラックパール、バタークリームイエローパール、シエナオレンジメタリック
シート列数 2
乗車定員 4名
ミッション
位置
不明
マニュアル
モード
-
最小回転半径 5.3m
全長×全幅×
全高
3.83m×1.61m×1.62m
ホイール
ベース
2.58m
前トレッド/
後トレッド
1.4m/1.42m
室内(全長×全幅×全高) 1.83m×1.38m×1.42m
車両重量 1400kg
最大積載量 -kg
車両総重量 1620kg
最低地上高 0.14m
掲載用コメント ※交流電力量消費率(国土交通省審査値)WLTCモード 119Wh/km 市街地モード103Wh/km 郊外モード110Wh/km 高速道路モード132Wh/km
※一充電走行距離(国土交通省審査値)WLTCモード 458km
エンジン型式 EM08 環境対策エンジン -
種類 電気モーター 使用燃料 電気
過給器 - 燃料タンク容量 -リットル
可変気筒装置 - 燃費(10.15モード) -km/L
総排気量 -cc 燃費(WLTCモード) -
燃費基準達成 -
最高出力 115ps 最大トルク/回転数
n・m(kg・m)/rpm
147(15)/5400
エンジン型式 EM08
種類 電気モーター
過給器 -
可変気筒装置 -
総排気量 -cc
最高出力 115ps
最大トルク/
回転数n・m(kg・m)/rpm
147(15)/5400
環境対策エンジン -
使用燃料 電気
燃料タンク容量 -リットル
燃費(10.15モード) -km/L
燃費(WLTCモード) -km/L
燃費基準達成 -