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12.7Lエンジン搭載というブガッティならではの威厳と壮大さを物語る1台【INDUSTRY EDGE】
カテゴリー: クルマ
タグ: ブガッティ / EDGEが効いている / 古賀貴司 / c!
2021/05/11

感性を震わす多くのスーパーカーを作る会社も、もちろん山あり谷ありのドラマチックな道を歩んできた。買収、経営者交代、資金不足、リコール問題。そして、現在も絶え間なく状況は変わり続けている。まさに、波乱万丈なスーパーカーメーカーを自動車ライター古賀貴司が分析。
今回は歴史を100年ほどさかのぼった1927年。時代の波にのまれながらも最高級を再定義させたブガッティについて、名車であるタイプ41とともに解説する。
何から何までビッグスケールの大物
ブガッティ・タイプ41、通称ロワイヤルは1927年から1933年まで製造された超大型高級車で、全長は6.4m、ホイールベースは4.3mというビッグサイズを誇った。車両重量は3.2t弱と心配になるくらいの巨漢ぶりだったが、それに見合うだけの大排気量エンジンを搭載していた。
なんでも当時、とあるイギリス人女性にロールスロイス車とブガッティ車を比較され低評価を受けたことが、エットーレ・ブガッティによるタイプ41開発のキッカケだった、といわれている。つまりはタイプ41で「世界一」を目指した、と言っても過言ではない。
当時の普通乗用車として尋常じゃないボディサイズには、なんと航空機エンジンがベースの12.7L(!)直8エンジンが搭載された。組み合わせられたのは3速MTだが、最高出力は300psがうたわれており、最高速度は200㎞/hに達したそうだ。なお、エンジンオイルは23L、クーラントは43Lを要し、ガソリンタンクは容量200Lだというからすさまじい。
94年前に誰がこんな車に乗るのやら、とお思いかもしれないが通称の「ロワイヤル」とあるように王族がターゲットだった。限定25台と富裕層の心をくすぐるマーケティングだったが結局、生産されたのはわずか7台。そのうち1台は大破したが、6台は現存している。1台はエットーレ・ブガッティの愛車として、3台はかろうじて売れ、2台は売れ残りブガッティ家が保管していた。
1929年の世界大恐慌、1939年の第二次世界大戦の勃発などもあり、タイプ41は商売的には失敗であった。初めて納車されたのが生産開始より約5年後の1932年のことだった、と聞くだけでいかに苦戦したかが想像できる。また、戦争による略奪行為からタイプ41を守るため、ブガッティ家にあった在庫車両2台を含む3台は“隠し壁”の中で保管された他、現在VWグループが所有する1台は過去に下水道に隠された、という面白い歴史をもつ。

クラシックカー相場の高騰といえば、真っ先に思浮かべるのがフェラーリ 250GTOかもしれないが、実はこのタイプ41は第二次世界大戦終了以前の車両としては最高金額を樹立しているそうだ。Classic.com Journalによると、アメリカの自動車博物館「ブラックホーク・コレクション」が所有していたタイプ41が、最近売却されたという話題を取り上げている。具体的な金額は明らかにされていないが、2018年にアメリカ・ペブルビーチで落札された2200万ドルのデューセンバーグSSJロードスターを“はるかに上回る”金額で個人間売買されたそうだ。
同博物館の共同オーナーであるドン・ウィリアムズ氏は、クラシックカーの所有について面白いことを同誌に打ち明けている。それは、実は「所有」しているというよりも、一時的に“面倒を見る”機会を得ているのだ、と。そして、たまにクラシックカーを自らの運転で楽しむという褒美に恵まれ、新たな友情が芽生えることもある、とも語っていた。
クラシックカーは取引価格の上昇ぶりがハイライトされがちだが、一時的な管理人という視点は面白い。オーナー自らの手で走らせることができる、という点においては展示するだけの美術品よりもご褒美の度合いが高いかも?
なお、タイプ41が商売的には失敗であった旨、記載したが・・・、ブガッティ社としては実はそうでもなかった。というのも、残ったエンジンを改造(2000rpmで200psという出力)して、フランス国鉄(、現在はSNCF)のために汽車を製造。1933年、初期のテスト段階で最高時速172㎞/hに達し、フランスにおける高速鉄道の幕開けとなった。
動力車両は路線に応じてスペックが異なり、タイプ41ベースの巨大エンジンを2基、もしくは4基搭載。1935年から1958年にかけて79両の動力車が作られたというので、その分のエンジンが販売された、というわけだ。
この大排気量エンジンによる圧倒的なスピードはブガッティの真骨頂とも言える。現在のモデルにも共通する速さと上質さの追求は、他ブランドでは感じることのできない魅力を生み出しているのだ。

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