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「“負けず嫌い”スピリットが感じられる車を作りたい」パリダカドライバー・増岡浩が語る“名車”の遺伝子
2019/03/28
昔から現在の車までを知り尽くすプロの人たちにインタビューし、“名車”というテーマで語ってもらった。すると思想や技術だけではなく、関わる人たちの熱いスピリットが時代を超えて脈々と受け継がれていることが分かった。彼らの言葉や思いを知れば、現在の車に対する見方がガラリと変わるはずだ。

レースに勝っても負けても必ず車は良くなる
「世界一過酷なモータースポーツ」といわれるパリ~ダカール・ラリーで、日本人初の2連覇を果たしたラリードライバー増岡浩(ますおかひろし)さん。長年ラリーに携わる増岡さんが思う、現代の車に宿る“名車のスピリット”について、モーターライフスタイリストとして多方面で活躍中の河西啓介さんが迫ります。


増岡さんといえば、やはり『パジェロ』に乗ってらっしゃるイメージが強いです。ダカール・ラリーで2002年、2003年と連続で総合優勝されたときの印象は鮮烈でした。

僕が三菱自動車に入社した1982年に初代『パジェロ』が登場したんですよね。
三菱はかつて軍用の『ジープ』を作っていたんだけど、パジェロはジープと同じラダーフレーム構造を踏襲しながら、レジャーにも使える乗りやすい車を目指したんです。当時としては画期的でしたね。
他社のクロカン四駆が4L、5Lという大きなエンジンを積んでいた時代にパジェロは2.3Lのディーゼルと2Lのガソリン。「小型軽量」というのが強みでした。

僕らが若い頃、一大ブームになったのは2代目パジェロでした。スキー場の駐車場はパジェロだらけ(笑)。あとデリカもいましたが。

そうそう、いい時代だったね(笑)
初代、2代目、3代目とパジェロの実力を進化させて、人気を高めたのはやっぱりダカール・ラリーだと思うな。
レースでは約1万kmを走破するんだけど、研究所の技術者が言うには、パリダカの1万kmは一般ユーザーが走る30万kmに相当すると。
最初の頃は振動でラジエターが落ちちゃったり、ボディにクラックが入ったりして、ヨレヨレでゴールしていたのが、次の年にはぜんぶ改良されているんだ。
どこをどう走ると、どこがどう壊れるというのがぜんぶ分かるんだから、究極のテストだよ。
それを市販車のパジェロにフィードバックするんだから、いい車にならない訳がないよね!



一方、三菱がラリーで鍛えたといえば、ランサーエボリューションもそうですね。92年の登場から毎年のように進化して、ついに“エボⅩ”までバージョンアップしました。

とくに“エボⅣ”からは電子制御が入って、車づくりが大きく変わったよね。
四駆は乗る人が乗れば、「直結」がいちばん速いんだよ。四輪ぜんぶ回して、コーナーで車を振って、力でねじ伏せて。
マキネン(4年連続WRCチャンピオンになったトミ・マキネン)なんかもそうでしょ。
でも「乗る人が乗れば」じゃいかんと(笑)
初めてスキーに行く若者でも、ハンドルを切ったぶんだけ曲がる車にしなくちゃね!

ランエボに乗ったとき、ホントによく曲がるので驚きました。「あれ? 俺の運転、上手くなった?」と思うぐらい。

うちの車は、どんな条件、速度域でもまず「人間の意思」を尊重するようにしているんです。
ドライバーが何をしたがっているのか? というのを100分の1秒単位でモニターして、100分の2秒後にはフィードバック。それを緻密に、正確にやる。
だからドライバーにとっては“意のまま”に感じられるんです。


車好き、運転好きの人の中には、「電子制御に介入されるとつまらない」という人もいますよね。

僕からすると、「ホントにそこまで攻めてる?」と思うけど。
あるところまで追い込んで攻めていけば、今の車のよさが分かるんじゃないかな。
僕らでも電子制御に助けられることは、結構あるからね。だから安心して楽しめるし、上手くなったら制御をオフにして走ることもできるんだから。


いま三菱は、かつてのようなモータースポーツ活動はしていませんよね。パジェロやランエボのようにレースで鍛え上げられた三菱車の技術や伝統は、これからも受け継がれていくのでしょうか?

「技術の継承」という意味では、現役のテストドライバーに運転を教えています。
車ってやっぱり「人」が作るんですよ。部品はコンピューターで作れるんだけど、最終的な乗り味を決めるのは人間。
だからテストドライバーには高い次元で車を操れることが求められる。人の能力が車の性能を決めるんです。

テストドライバーのスキルアップって、具体的にどんなことをやるんですか?

FFでもFRでも四駆でも、限界を超えれば必ず車は滑るわけだから、限界まで車を追い込んで、自分の意思で滑らせて、自分の意思で立て直す、そういう訓練を繰り返しやるんです。
それを経験することで、どうすれば車を立て直すことができるか分かる。
すると市販車にもこういう制御を入れよう、駆動配分を変えよう、といろいろ考えられるからね。
今後も“飛べる”車を作りたい!


まさに職人技の継承ですね。現代の車もそうやって「人」が作り上げているんだと思うと、なんだか嬉しくなります!

車はやっぱり走らせないと分からない。増岡流でのテストでいえば「飛ぶ」のがイチバンだよ。
だいたい、どんな車でも飛んでみる。飛べない車はダメだね(笑)

飛ぶんですか!(笑)。じゃあ増岡さんがダカール・ラリーで培った三菱のスピリットや“遺伝子”は、そのジャンプ! によって現行モデルにも受け継がれているんですね(笑)

もちろん(笑)
現行の『デリカD:5』や『エクリプスクロス』にも遺伝子は受け継がれてますよ。
エクリプスクロスは自分でも買ったけど、SUVなのに峠道でもぐいぐい曲がっていくから驚いた。
ただし今の車は中身は凄くても見た目は万人向けだからね。
できればルックスでも三菱の“負けず嫌い”スピリットが感じられる車を作りたい。
市販車をベースとしたカスタマイズからでいいから、どんどん提案していきたいね。
「ラリーアート」の復活とか。

ラリーアート!
聞くだけでワクワクする名前です。これからの三菱車に期待してしまいます!


三菱自動車
増岡浩
1960年3月13日生まれ。1987年に初めてパリ~ダカール・ラリーに参戦して以来、2009年まで三菱のワークスドライバーとしてハンドルを握っていた。2002年、2003年とパジェロエボリューションで総合優勝を果たし、世界中にその名を広めた。2010年には同社商品戦略本部上級エキスパートとして採用され、三菱自動車の社員となった。現在は、同社の商品開発にも携わり、若手テストドライバーの育成などに力を入れている

モーターライフスタイリスト
河西啓介
自動車やバイク雑誌の編集長を務めたのち、現在も編集/ライターとして多くの媒体に携わっている。また、「モーターライフスタイリスト」としてラジオやテレビ、イベントなどで活躍。アマチュアコミックバンド「Dynamite Pops」のボーカルとしても20年以上にわたり活動している
photo/尾形和美、三菱自動車
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