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【試乗】新型 マクラーレン アルトゥーラ スパイダー|驚くべきはその乗り心地! ドライビングフェチが選ぶべきベスト・オブ・スポーツカー
カテゴリー: マクラーレンの試乗レポート
タグ: マクラーレン / オープンカー / MR / アルトゥーラスパイダー / EDGEが効いている / 西川淳
2024/12/09

スパイダー登場に合わせてクオリティがさらに向上
2022年にブランドの中核モデルとしてデビューしたアルトゥーラ。V6ツインターボ+電気モーターという新開発のプラグインハイブリッドシステムを引っ提げての登場だった。
ご存じのように、マクラーレンは今や2シーターミッドシップカーのみを生産する唯一の独立系ブランドである。ごく少量生産ならともかく、物量作戦がものをいう量販自動車の製造においてその意味するところは“過酷”でしかない。特に電気系マネージメントの成熟がその基本となった昨今、独立独歩の進化に要するハード&ソフトのパワーは並大抵ではなかった。
F1、インディ、ル・マンを制した経験のある世界一と言っていいレーシングチームであっても、かかるプレッシャーは相当なものであったようだ。中核となるモデルシリーズを電動化するにあたってすべてを刷新したわけだが、本格デビューに手間取った。市場投入後もクオリティが安定するまでに多少の時間を要したようだ。もっとも、車の設計そのものは“マクラーレンらしく”軽量かつ剛健に仕上がっており、スーパーカーの核心を担うモデルとしてアルトゥーラの存在感には格別のものがあった。
マクラーレン・オートモーティブは革新的なモデル、MP4-12Cの誕生で始まったわけだが、アルトゥーラでは肝心要のカーボンファイバーモノコックボディを自社工場で生産するなど、第2の創業といっても過言ではないフェーズを迎えている。それゆえ、多少のいばらの道も覚悟の上だったのかもしれない。
Frontきが長くなったが、何が言いたかったかというと、スパイダーモデルの登場を機にアルトゥーラのクオリティが随分と引き上げられたということ。パワートレインの性能底上げも図られて、ようやくブランド中核モデルとしての地歩を固めることに成功したのだ。

スパイダー化の手法はこれまでの720Sや750Sと変わらない。カーボンボディのモデルゆえにルーフまわりのデザイン自由度が高いから、透明のリアバットレスを採用するなど見た目にも個性的に仕上がった。スーパーカーのドライバーにとって、周りがよく見えることほど嬉しいことはない。
ルーフの開閉に要する時間はわずかに11秒。車速50km/h以下であれば走行中も可能、という便利さもこれまでどおり。透明度を変更できるエレクトロクロミックガラスルーフをオプションで選ぶこともできる。
交通量の多い幹線道路に入ってからドライブモードをストラーダに。そこまでがあまりに静かだったせいか、新開発V6エンジンの走りながらの目覚めは劇的だ。暖機運転も走りながら、である。
電気系統のマネージメントもすっかり板についたようだ。ギクシャクとする場面もめっきりと減って、全体的にスムーズ、流れるような制御で電動化を楽しませてくれる。満充電における電動走行距離が1割ほど延びた(カタログ値で33km)ことからも、制御の改良の跡が見て取れた。


その乗り心地はスーパースポーツの新たなブックマークとなる
驚くべきはその乗り心地だ。12Cでスーパーカー界に乗り心地革命をもたらしたマクラーレン。その後もライドコンフォートネスにおいて他ブランドを凌駕していたが、最新のアルトゥーラは新たなブックマークとなったといえそうだ。バッテリーを含む電動システムの重量増をマイナス2気筒とさらなるダイエットでカバーし、PHEVのミッドシップカーとして異例に軽量級の仕上がりとなったアルトゥーラは、その出だしからして軽やかで、すべてのショックを車両全体でいなすかのような所作がいきなりドライバーの感心を促した。
中でもハンドルに伝わる前輪の明快な動きが頼もしい。軸をつまむようにして回しても、その動きがまさに手に取るようにわかる。前輪のマスを感じさせず、それでいて動きが正確だ。この繊細なステアリングフィールを手に入れるため、マクラーレンはハンドルにスイッチやボタンの類を一切置かない。徹底している。
速度を上げていくに従って、車体が路面に吸い付いて離れがたく思っているかのようになった。乗り心地のよさは変わらず、それでいてドライバーとのエンゲージメントは一層高くなっていく。人も車も、「これだよ、これ」と互いに喜び合って高みに達していく感覚は、軽量で機敏なマクラーレン製スーパーカーならではであった。
それにしても、このボディサイズは捨てがたい。ご多分に洩れずスーパーカー界も大型化の波を被って久しいけれども、アルトゥーラのサイズが実はドライバーとして安心できる正味の限界という気がしてならない。これ以上のサイズになっても制御の工夫によって一体感を覚えることはできるけれど、たいそうなものを運転しているという感覚も一方では拭いきれないものだ。
ベスト・オブ・スポーツカー。重いバッテリーを積んでもその領域にとどまることに成功したアルトゥーラスパイダーは、ドライビングフェチの選ぶべき最右翼のスーパーカーだと言っていい。





自動車評論家
西川淳
大学で機械工学を学んだ後、リクルートに入社。カーセンサー関東版副編集長を経てフリーランスへ。現在は京都を本拠に、車趣味を追求し続ける自動車評論家。カーセンサーEDGEにも多くの寄稿がある。
ライバルとなるフェラーリ 296GTSの中古車市場は?

2022年に発表されたフェラーリのプラグインハイブリッドスポーツのオープンモデル。14秒で開閉するリトラクタブルハードルーフを採用し、時速45km/h以下なら走行中でも開閉できる。120度のバンク角をもつ2.9L V6ターボエンジンは、最高出力663ps/最大トルク740N・mを発生し、167psのモーターを組み合わせることでシステム総合出力を830psとした。約25kmのEV走行も可能。
2024年12月前半時点の中古車市場には15台程度が流通。支払総額の価格帯は5100万~6300万円となる。ハイパフォーマンス仕様のアセットフィオラノパッケージ装着モデルも数台流通している。
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