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【海外試乗】新型 フェラーリ 296 スペチアーレ|こだわったのはドライビングファン! エレガントさを残したハイブリッドスーパースポーツの高性能モデル
カテゴリー: フェラーリの試乗レポート
2025/04/29

ファンが待ち望んでいた“スペチアーレ”
スタンダードモデルを発表しある程度デリバリーが落ち着いた頃、その高性能版をリリースして、その開発で得た知見をマイナーチェンジもしくは次世代に生かす。マラネッロに限らず高性能スーパーカーブランドの常套手段である。
だからカスタマーも新しいモデルが出るたび“数年後の高性能版”登場を確信する。中にはそれを狙うためにスタンダードモデルを何台か買う猛者もいるほどだ。
フェラーリ 296GTBのデビューは2021年半ば、スパイダーの296GTSは2022年春だった。つまり296シリーズが揃ってからはや3年が経つ。デビュー当初から高性能グレード登場への期待は高かった。なぜなら296GTB、GTSが非常に良くできたリアルスポーツカーだったから。実際、筆者はつい最近、フィオラノ・サーキットで296GTBとSF90ストラダーレを同日に試す機会を得たが、速さではSF90に劣る296も、ドライビングファンという点では圧倒的に上回っていた。
そんなわけでハナから296の高性能版を狙ってGTB、GTSと立て続けにオーダーした好きものも多い。そして彼らはまだ見ぬ高性能版のことをシンプルにVS(バージョン・スペチアーレ)もしくはスペチアーレと呼んでいた。
今回、マラネッロが発表した296高性能版の正式名称は296スペチアーレと296スペチアーレA(アペルタ)である。以前に使ったことのある名前(458スペチアーレ)だったし、あまりに捻りがなさすぎてかえって驚いた。マラネッロは名前でもいつも我々の想像を“裏切って”くれていたのに。それじゃ芸がないと思っていた名前で出てくるなんて!
ネーミングの理由を首脳陣に聞けば、「カスタマーにとって予想どおりの車が登場するうえ、ちまたですでに296スペチアーレと呼ばれていたからその期待に応えてみただけ。驚かせる理由がなかった」と、なんとも人を食った答えが返ってきた。ここまでくるとまさに王者の振る舞いである。


すべてにおいて軽量化が優先された
とはいえ、筆者は実際に296スペチアーレを見て“驚いた”。ベルリネッタは最近のフェラーリアッセンブリーラインでも目に見えて多くなったグリーン系の新色ヴェルデ・ニュルブルクリンク、スパイダーは懐かしくも鮮やかなロッソ・ディーノというやや朱色がかった赤だったが、驚いたのは色じゃない。
スタイルだ。大方の予想に反して、そのいでたちは296スタンダードモデルのエレガントさを存分に残していたからだ。これみよがしで禍々しいリアウイングなどなく、目立つといえば下半身のボディまわりとフロントセクションのダクト類程度。296チャレンジやGT3のイメージで出てくるかも、と期待していた向きには少々物足りないかもしれない。逆に、ポルシェ 911GT3でいうならRSではなくツーリングを積極的に選ぶというような向きには嬉しいオトナのスポーツカーデザインである。
だからといってチェントロスティーレが空力向上を惜しんだわけでもなければ、カーボンウイング代をケチったわけでもない。フロントのエアロダンパーは従来からのSダクトに代わる装備で、荷室容量を確保しつつ、ダウンフォースを生み出すのではなくスタビリティを高めることでハンドリング性能を向上させるという(ダウンフォースはバンパースポイラーのサイドで稼ぐ)、実にロードカーらしい工夫だ。
リアを見れば大きなリアウイングではなく、ボディ横まで回り込んだサイドウイングが特徴的である。これとスタンダードモデルにも存在したリアアクティブスポイラー(3段階となり反応速度も速くなった)を組み合わせる。ダウンフォース総量はスタンダードモデルに比べて2割増し(250km/hで435kg)とした。ちなみにリアセンター出しのエグゾーストシステムはF80風である。
インテリアはどうか。これまた288GTOやF40から続くマラネッロ製スペシャルモデルの伝統にのっとり、一見してシンプルな仕立てだ。センターコンソールなどはほぼ直線で仕上げられ、ドアインナートリムも簡素である。マテリアルではカーボンやアルカンターラの使用量が増え、アルミニウムも多用される。足元には恒例の滑り止め付きパネルが敷かれていた。
最後に最も気になるパワートレインについて。端的にいうとチャレンジ用エンジンのハイブリッド化、だろう。296用に新規で開発された120度3L V6ツインターボエンジンは単体で最高出力700cv/8000rpm、最大トルク755N・m/6000rpmまで引き上げられたうえ、電気モーターも出力アップが図られており、システム総合ではなんと最高出力880cvとなった。これはもちろん、フェラーリのリアミッドシップ・リア駆動のロードカー史上、最高のスペックである。組み合わされるのは8速デュアルクラッチで、専用セッティング。いずれにしてもF1や499SP、GT3、チャレンジといったモータースポーツ活動の結晶というべきパワートレインであることは間違いない。

まだまだ語ることは山ほどあるが、まずは要点の報告にとめよう。マラネッロが最もこだわったのはドライビングファンのさらなる追求だ。そのためにはまず軽量化がすべてにおいて優先されると考えた。エンジンをはじめ、グラム単位のダイエットは多岐に及んでいる。
そしてドライビングファンといえばハンドリングや加減速とともにサウンドも重要だ。296スペチアーレとスペチアーレAではサウンド造りも手の込んだ仕掛けを導入している。
早く生音を聞いてドライブしてみたいものだ。








自動車評論家
西川淳
大学で機械工学を学んだ後、リクルートに入社。カーセンサー関東版副編集長を経てフリーランスへ。現在は京都を本拠に、車趣味を追求し続ける自動車評論家。カーセンサーEDGEにも多くの寄稿がある。
ベースとなるフェラーリ 296GTBの中古車市場は?

フェラーリ市販ハイブリッドの“主役”として2022年に登場した2シーターミッドシップスーパースポーツ。プラグインハイブリッドシステムは、フェラーリの市販モデル初となる120度のバンク角をもつ新開発V6ツインターボに、モーター1基を組み合わせている。
2025年4月下旬時点で、中古車市場には60台程度が流通しており、支払総額の価格帯は3650万~5500万円。サーキット走行のため軽量化や空力を向上させた、アセット フィオラノ パッケージ装着車も15台ほどが流通している。
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