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【功労車のボヤき】なんでやねん!と、今さらツッコミようもないんやけども…… サーブ一族
2021/03/25

――君には“車の声”が聞こえるか? 中古車販売店で次のオーナーをじっと待ち続けている車の声が。
誕生秘話、武勇伝、自慢、愚痴、妬み……。
耳をすませば聞こえてくる中古車たちのボヤきをお届けするカーセンサーEDGE.netのオリジナル企画。
今回は、絶滅危惧種どころかブランドが消滅してしまったサーブ一派の主張聞いてあげてください。
あぁ、華やかりし80年代が懐かしい
なんでやねん!
同じスウェーデン出身で、なんでボルボさんは今でも大人気やのに、わしらは消えてしもうたんや。
カーセンサーnetで検索してみい。ヒットするボルボ一族は全車種合わせて3166台。対するわがサーブ一族は、たったの38台…… ボルボさんのたった1%にすぎへん……。(2021年3月現在)
なんでやねん、とツッコミも入れたくなるやろ。
ま、肝心の会社そのものが消滅してもうたわけやから、今となってはツッコミようもないんやけどな。
華やかりし80年代が懐かしいのぉ。
ベンツだぁ、ビーエムだぁ、と車好きが騒ぐ中で、時代の先端をいくデザイナーやらコピーライターといったセンスのええ連中、いわゆるトレンドリーダーたちは、初代900のコンバーチブルをさっそうと乗り回してたもんですわ。
それだけ、わが一族がオシャレで個性的やった ちゅうわけやな。
あぁ、それやのに…… なんでやねん……
わが一族のルーツはなんと航空機メーカーでっせ!

サーブなんて車、知らんわ!って?
おいおい、そこからかいな。ま、それもしゃぁないか。
わしら一族は、もともとはスウェーデン軍向けの航空機を製造するメーカーやったんや。その自動車部門として1947年に誕生したんが、SAABオートモービルっちゅうわけや。
流れるような美しいボディラインも、独創的なインストゥルメントパネルのデザイン(飛行機を作ってただけに、まさにコックピットやで)も、航空機メーカーというルーツが、めっちゃ影響しとる。
湾曲したフロントウインドウも飛行機の操縦席を覆うキャノピーのイメージや。そのあたりが四角四面やったボルボさんとは違うって意味で、美意識高い系のセンスを刺激したんやな。
まだまだ、あるで。
市販車で初めてターボを装着した車は、1973年に登場したBMW 2002ターボといわれてるんやけど、“量産”市販車として初めてターボエンジンを搭載したのは、77年に発売されたわがサーブ 99ターボなんや。そのターボ技術もまた、航空機メーカーっちゅうバックボーンあってのことやな。
99ターボがモデルチェンジを経て900となると、その個性的なスタイリングとパワフルなターボエンジンの組み合わせがアメリカでウケたんですわ。

80年代に入るとカブリオレも登場して、さっきも言ったとおり、日本でも美意識高い系を中心に人気を集めたってわけや。
今見ても、当時のわが一族のデザインは独創的やと思うわ。世界中のどの車とも似てへん。四角くて武骨なボルボと、流れるようなフォルムで繊細なサーブ。どっちも北欧スウェーデンならではの個性が光っとった。
この時点まではな……。
そして「サーブ」というブランドは消滅……

雲行きが怪しくなり始めたんは、90年代に入ってからや。
まず、1990年からゼネラル・モーターズ(GM)が経営に参画するようになったんよ。せやから1993年に登場した新型の900、その後の9-3も9-5もGM傘下のオペルさんのプラットフォームを流用することになったんや。
そして、2000年にはGMの完全子会社に……。
アメリカの傘の下に入ると数をさばかなあかんようになるから、車のデザインはどうしても普遍的なものになってまう。ようは、フツーの車になっていくってこっちゃ。ほんで、わが一族ならではの独創性が、どんどん薄まっていってしもうたんや。
2000年代半ばになると、なんと親会社であるGMが経営不振になってもうて新車の開発、販売は停滞や。2009年にGMが経営破綻してまうと、なんとわが一族は中国の会社に売却されてしもうたんや。
それから、さらにいろんな会社が絡んで紆余曲折が続き、経営のことやら難しいことはようわからんけれども、結果的には2016年をもって「サーブ」というブランドは消滅してしもたっちゅうわけや。さっぱりやで、ほんまに。
今こそ、美意識高い系の選択

今思えば、GMと組んだのが運命の分かれ道やったように思うわ。
9-3にしても9-5にしてもええ車やったけど、個性が薄まってもうて存在感がなくなったんや。六本木に駐車しとったら、「それってホンダの新型アコードですかぁ?」なんて聞かれたこともあったわ。アコードちゃいまんがな……(泣)
なんでやねん! とツッコミながらも、あのときは涙が出たわ、ホンマ。
バブルの頃、六本木カローラ呼ばれてたビーエムを鼻で笑うてただけに、余計にヘコみましたわ。
サーブが、サーブたるゆえんであった独創性を失っていったこと。そこが、ブランドの価値にこだわり続けたボルボさんとの差になっていったんやろな。
せやけど、や。
そんなサーブやからこそ、ある意味レアでええんちゃうやろか?
ボルボさんの1%しかあらへんからこその価値や。そもそも会社の経営に問題があっただけで、わしら車が悪かったわけやないしな。
部品の供給にしても心配することはあらへん。
欧米では今でも人気が高くて、結構な数のわが一族が元気に走り回っとるから、それだけ海外では中古パーツや新品のAftermarket部品も流通しとるんや。日本に届くまで少し時間がかかる場合もあるかもしれんけども、部品がなくてお手上げやってことはないらしいわ。
今、あえて北欧デザインのサーブに乗る。
美意識高い系のおにーさん、おねーさんの選択としてはアリなんちゃう?

ライター
夢野忠則
自他ともに認める車馬鹿であり、「座右の銘は、夢のタダ乗り」と語る謎のエッセイスト兼自動車ロマン文筆家。 現在の愛車は2008年式トヨタ プロボックスのGT仕様と、数台の国産ヴィンテージバイク(自転車)。
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